君は無自覚

鈴木なお

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内側

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身支度を終えた私は街に出た。

場所は表参道、オシャレな人が多い。

すれ違う人たちを観察してみるとどの人も綺麗で可愛くて仕方がない。

きっと芸能人の卵なのだろうということは想像に難くなかった。

美容に詳しい知人が過去、私にこう言ったのをよく覚えている。

「表参道を歩いている人たちはレベルが違う。」

正直な話、その人が言っていたことは本当だったなと思わされる。

ぶっちゃけこの歳になると、20歳くらいの若い子を見ると遠い昔のことのように思ってしまう。

それに20歳の美しさとか可愛さというのは一生ものだなと思った。

成人式の写真のCMでだって20歳は一生ものだと教えてくれるのだからきっとそういうものなのだろう。

すれ違う大学生くらいの子たちを見て私はそう思った。

きっともう、20歳の頃の美しさとか可愛さは戻ってこないのだろう。

いくら私が何層もの皮を重ねても20歳の輝きを取り戻すことはとても難しいことだ。

そういうことはとても明確によくわかる。

自分のことなのだからそれはとてもよくわかるのだ。

遠くなった20歳の子たちを見て私は懐かしい記憶を少し思い出しては、少し噛みしめたりもした。

もう二度と戻って来ない20歳の頃の美しさを自分が鮮明に覚えていればいい。

だけど20歳の頃の美しさに執着することはよそうと思った。

だってそういうのって客観的に見て綺麗じゃないなって思うから。

「…お腹空いたな。」

私は近くにクレープ屋さんがあるのを発見し、そこでツナとサラダがサンドされているクレープを買った。

買ったクレープを口に含むと当たり前だけどツナと野菜の味がする。

とても美味しかった。

しょっぱくてシャキシャキしていてとても美味しい。

クレープ屋さんからは甘い匂いがずっとしているけれど、私はこのしょっぱいクレープを選んだ。

なぜなのかというと、私は子供の頃から甘いものが苦手なのだ。

物心ついた時から誕生日のケーキが苦手でおやつのクッキーも苦手だった。

いわゆる子供らしくない子供だったと言えばよくわかるかもしれない。

家族からはこの体質をとても不思議がられ、大人っぽいねと何度も言われた。

そして大人になった今でも私は甘いものが苦手でこのようにしょっぱいものが大好きなのだ。

いくら見た目の皮を重ねようと、内側に刻まれたこの体質だけは一向に変わる気配がない。

歳を重ねれば変わると思っていたのに私は未だに甘いものが苦手なのだ。

くしゃくしゃになったクレープを包む紙のなかにあと1口のクレープが残っていた。

どうにもこうにも私はしょっぱいものが好きらしい。
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