期待外れの愛 完

鈴木なお

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彼氏はハイスぺ

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カズキの部屋から出た私は数分後、自分の部屋にいた。

「どうしよう?」

洋服が並んだクローゼットの前で私は悩んでいた。

なぜなら今日はスグルとデートの日だからだ。

デートの服装は気合を入れていきたい。

様々な服を身体に合わせ、全身鏡を見ながら私はまたさらに悩む。

いっぱい悩んでいるように見えると思うが、案外こういう瞬間が好きだったりもする。

それは大好きなスグルのことを考えている時間でもあるからだ。

こういう時はタバコの1本すら吸おうだなんて思いもしない。

きっとスグルのことを考えている時はタバコ以上の快感が私の身体を駆け巡るのだろう。

「(…スグルは清楚系な服装が好きだよね。)」

スグルはいわゆる女子アナ御用達ファッションが好きだ。

見るからに育ちの良い清楚系な服装を愛しているのはスグルの育ちが良いのも関係しているのかもしれない。

正直、カズキの部屋にいる時の私をスグルの前で見せることは難しいだろう。

ボサボサの髪でタバコをガンガン吸ってテーブルの上には空き缶が散乱している私。

それのどこに清楚だのお育ちが良いだのの痕跡があるだろうか。

いいや、ないに等しいに違いない。

もちろんスグルだって酒やタバコはする。

だけど飲まれるくらい飲酒したり、煙まみれになるくらいタバコに依存することはないだろう。

スグルは賢いから理性やブレーキがよくきくタイプなのだ。

きっとスグルのなかではここからこれ以上するとよくないという感覚がしっかりと刻み込まれているのだろう。

それくらいのブレーキがなければ高学歴高収入のブランドを得ることだって難しかったに違いない。

「カッコいいよ、スグル。」

ふいに言葉が口から出た。

いいや、漏れ出したと言った方が的確かもしれない。

きっとスグルだったら口から言葉が漏れ出すなんてミスはしないだろう。

「…。」

服装が決まったので今度はシューズクローゼットへ向かった。

そこには低いヒールと高いヒールの靴があり、私に選択を急がせる。

もちろん、スグルとのデートだ、高いヒールを履くに決まっていた。

「よいしょっと。」

スルッと足を入れるとハイヒールは驚くべき速さで足に馴染む。

ハイヒールとはいえ、履き慣れるくらいこの靴を愛用している。

玄関にある全身鏡を見るとそこにはすっかり清楚な服装に身を包む私がいた。

「…。」

高い高いハイヒール、それはまるで私とスグルの差をうめるかのように高い。

私にとってのファッションは応援団だ。

高いヒールに女子アナファッション、スグルが好きな私になれた。

私はドアを開き、デートへと走り出す。
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