期待外れの愛 完

鈴木なお

文字の大きさ
5 / 8

私にはないもの

しおりを挟む
「…。」

きっと、スグルの浮気を知らなければ今日のデートはもっと楽しかったはずなんだ。

帰り道、スグルの話を笑顔で聞きながら心の中ではずっとそう考えていた。

そして今は帰りの電車の中だ。

「(…。やっぱりね。)」

電車の中にいる人々を黙々と観察してみたものの、スグルを超えるようなハイスぺイケメンはいなかった。

そう、前からわかってはいたのだ。

身近にいる人のなかには、スグルがつけている高そうな腕時計を使ってるリーマンはいる。

だけどその人にはスグルほどの顔面偏差値がない。

そう、わかっていたことだ。

つまりスグルは完璧なのだ。

顔よし、高学歴、高収入、それがスグルというハイスペックイケメン。

正直、スグルレベルの男がそこらを歩いているわけがない。

それにどうしたらスグルレベルの男と巡り会えるのかもわからなかった。

もちろん私はスグルのことを尊敬しているし好きだ。

スグルは頭が良くて仕事もできて、育ちも良いから品がある。

私にないものを全て持っているのがスグルなのだ。

だから私はスグルを尊敬できるんだと思う。

「…。」

ただ、スグルとデートをしないでカズキの部屋に行っている時に思うことがある。

「…この満たされなさはなに?」

私はスグルが好きだ。

だけど私はカズキの部屋でダラダラしていると突然、虚しくなる時がある。

それは数年先のことを考えてしまうからだ。

「(数年後、スグルと私とカズキの関係が続いているとは限らないんだよな…。)」

ふと、数年先のことを考えて虚しさに浸ってしまうのが私の悪い癖だ。

正直、変わらないものなんてない。

ただ、今あるものに感謝して今を楽しみ、楽しい思い出を作るのがより良い選択なのはわかっていた。

その考えでいくと、お互い悲しくなったり虚しくなることが1番、無意味な気がしてしまう。

「…。」

私はカズキの部屋でふと虚しさを感じる度に酒を飲んでごまかす。

きっとそれは、他に解決策が見つからないからだ。

一時的に虚しさを感じ、それから数日後に振り返ってみたことがあった。

その度に思ったことは虚しさなんて気にしないで楽しく過ごせば問題なかったじゃんということだ。

だから私はカズキの部屋で虚しくなると酒をよく飲む。

空いた隙間をうめるように酒を飲み、虚しさからの逃避、それ1択だった。

スグルにはそういうところは見せられない。

なぜならスグルは酒で虚しさをごまかすようなタイプのことを低能と言うに違いなかったからだ。

私はスグルに嫌われたくない。

スグルは私にはないものを全て持っている。

きっとスグルなら虚しさを感じた時すらも生産的なことをして虚しさを遠ざけるに違いない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

離れて後悔するのは、あなたの方

翠月るるな
恋愛
順風満帆だったはずの凛子の人生。それがいつしか狂い始める──緩やかに、転がるように。 岡本財閥が経営する会社グループのひとつに、 医療に長けた会社があった。その中の遺伝子調査部門でコウノトリプロジェクトが始まる。 財閥の跡取り息子である岡本省吾は、いち早くそのプロジェクトを利用し、もっとも遺伝的に相性の良いとされた日和凛子を妻とした。 だが、その結婚は彼女にとって良い選択ではなかった。 結婚してから粗雑な扱いを受ける凛子。夫の省吾に見え隠れする女の気配……相手が分かっていながら、我慢する日々。 しかしそれは、一つの計画の為だった。 そう。彼女が残した最後の贈り物(プレゼント)、それを知った省吾の後悔とは──とあるプロジェクトに翻弄された人々のストーリー。

友達婚~5年もあいつに片想い~

日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は 同僚の大樹に5年も片想いしている 5年前にした 「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」 梨衣は今30歳 その約束を大樹は覚えているのか

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

貴方を愛することできますか?

詩織
恋愛
中学生の時にある出来事がおき、そのことで心に傷がある結乃。 大人になっても、そのことが忘れられず今も考えてしまいながら、日々生活を送る

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

処理中です...