【完結】魔王の腹心と厄介な男!

花より団子よりもお茶が好き。(応募用)

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【特別編】魔王とカインの紙ひこうき!~少年と物語の始まり~

◇第十一章:それでは桜の木の下で

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 驚くカインの横で、カボチャが間髪を容れず問いかけた。

「カイン、この方々は?」 
「あ、えっと……カボチャには話したかもだけど、俺のバイト先の先輩達」

 シュケルが「やはり、そうでしたか」と呟く。
 カボチャは眉間に手を当ててため息をつくと、「いいですか」と言ってカインへ向き直った。

「この方々はですね──南の国の魔族の王、サファメイ様と」

 名を告げた瞬間、亜麻色の髪の女性が「なんじゃ、もうバラすのか」とつまらなそうに言いながら、くるりと一回転した。

 次の瞬間。
 まるで炎が爆ぜたように、亜麻色だった髪は、頭の両端で丸く結い上げられた、燃え盛る炎のような真っ赤なおだんご頭へ。
 服もまた、お腹を大胆に露出した真っ赤な衣装へと姿を変える。
 好戦的な緑の瞳が、まっすぐカインを射抜く。

「そして──」

 続けたのはカボチャではなく、褐色の男だった。

 もともと黒と白のメッシュだった髪に、じわじわと白が浸食するように広がっていく。
 褐色の肌には、花が咲き広がるように術式めいた刺青がうかび、必要以上に肌を晒す、雪のように白い衣服。
 紫色の瞳がゆっくりとこちらを見た。

「僕が、西の魔族の王、クローズです」

 長いおさげ髪を肩から払う仕草には、あからさまな挑発めいた色があった。

「とても面白い〝見世物〟を有り難う、人間」

 カインは思わずキョロキョロと二人を見比べ、「え、ええ……?」と声を漏らした。

 するとカボチャが一歩前へ出て、二人に指を突きつけた。

「カインに話を聞いた時からおかしいと思ってたんです──この僕が気配を掴めないなんて、ただの人間や魔族じゃあり得ません。つまり僕以上の力を持つ〝何か〟ですから」 
「ほう。この僕を〝何か〟扱いとは。北の魔王殿、少し躾がなっていないようだ」

 クローズが薄く笑い、魔王へ視線を向ける。
 魔王の瞳がすっと冷えた。

「つまり……こいつカインに、あんな碌でもないことをそそのかしたのは……貴──」

 言い終わる前に、カボチャが慌てて飛びつき、魔王の口を塞いだ。

「落ち着いて下さい魔王さま! お気持ちは分かりますけど、ここで余計な火種を撒いたら大変です!」
「カボチャ、見逃せ」
「見逃せませんよ。シュケル、シュケルなんとかしろ!」

 呼ばれたシュケルは、いつものように穏やかに微笑む。

「魔王さま。西の魔王と貴方が本気で争えば──百年は終わりませんよ」 
「……」 
「魔王さま」

 諭され、魔王は深くため息をついた。

「……すまないカボチャ。余が悪かった」

 そしてカボチャの手をどけた。

「全く、会議中に紙飛行機を飛ばして寄越す不届き者に、少し興味を示しただけでこの有り様とは。北の坊主もまだまだ青いのう」
「そうですよねぇ。ちょっと暇潰ししただけだと言うのに……まあ、大事な大事なお子に手を出そうとしたのは謝りましょう」

 謝る気のない謝罪に、魔王とカボチャが同時に剣呑な眼差しを向けた時。

 ――足音が、風を割った。

「いやぁ、いったいどうなる事かと思ったが、丸く収まったようで良かった」

 カインが振り返ると、涼しい風がさらりと流れ込むように、新たな姿が現れた。

「……東の魔王殿? どうしてここに」

 魔王の驚きと同時に、カインは(また増えた!?)と驚く。

 その傍らには、どこか疲れた様子のくすんだ黄金色こがねいろの髪の人間と控えめに佇む灰色の髪の青年。
 東の魔王はいやぁまいったと言うように髪をかきあげる。

「実はその、貴殿の城に私のところの娘、〝リーベ〟が迷い混んでしまってな」

 すると彼の後ろから、人間の少女が現れた。
 亜麻色の髪と亜麻色の瞳を見て、カインは「あっ」と声をあげる。
 カボチャに知り合いか聞かれて「うんちょっと」と頬をかいた。

 リーベと呼ばれた少女は人間の男に促され、勝手に侵入したことについて申し訳ないと頭を下げる。
 そんなリーベに東の魔王が問う。

「ブローチに込めた魔力を追って来たが、いったいどうしてここへ――」

「揃いも揃って、ここで何をしていらっしゃるんですか」

 訳が分からぬ状況の中、急にはっとするような冷たい美声が辺りに響いた。

「っ!……この声は」
「ママ!」

 真っ先に反応したのは東の魔王とその娘の面々だ。

「野暮用を終えて戻ってみれば、中心となる四大国の魔王さま方が行方を眩ましているわ、その部下や各国の要人が騒いでるわで、あちらは大混乱ですよ」

 その言葉と共に現れたのは類いまれなる美貌を持つ白の魔族。
 真っ白なローブを翻し、冬の粉雪のように煌めく真っ白な長い髪。
 ステンドグラスのアーチ状の窓から射し込む陽射しを受けて、より一層神秘的に見える。
 しかしその瞳は氷に冷たい――誰が見ても分かる。彼は物凄く怒っている。

 リーベが駆け寄って「ママ!」と、ハクイの腰にしがみついた。

「探していたのよママ!」

 東の魔王の顔色が青くなり、小声で「やめておけ」と言っている。

「リーベ、貴女もいい加減大きくなったのだからその呼び方はやめなさい。そもそもママというのは」
「それよりもエルが大変なのよ! ママが何も言わずに城を空けたから怒っちゃって!」
「リーベ、わたくしの話を聞いてましたか?」
「お父様と一緒に行ったって知ったら更に怒っちゃって!」

 リーベが東の魔王へ指を差しながら言うので、おそらくお父様とは、彼なのだろう。

「エルがそんなだから悪魔の子達も好き勝手してクーの住みかを荒らしちゃうし」

 するとその会話を聞いて東の魔王が人間の男にそうなのかと耳打ちする。
 人間の男はそうだとばかりに肩をすくめた。

「あーもういいです。それについては先程片付けて来ましたから、あと先程、クーも回収しましたよ」
「え?」

 リーベはキョトンとした。

「えぇですから貴女はもう城へ帰りなさい。クーもいいですね」
「はい」

 ハクイの後ろからポニーテールを赤いリボンで結んだ少年が出てきた。
 ようやく混乱の元が一つが解決しそうなのに、今度は南の国の魔王、サファメイが口を開く。

「なんじゃせっかく来たのにもう帰すのか? 人間にしては愛らしい愛娘ではないか。ワシはもう今日は会議などとかたっくるしいことなぞする気はないぞ」
「サファメイ殿の言う通り。いっそ親睦会と称して宴でもどうですか? ねぇ北の魔王殿」

 西の魔王であるクローズがサファメイの話しにのっかり北の魔王を見る。
 魔王はいささかバツの悪そうな顔をした。

「あ、あぁそうですな。それも良いかと」

 もはや収拾がつかない状況に、ハクイの怒りの声が木霊する。

「つべこべ言わず全員アケドラル城へ戻りなさい。話はそれからです!」

 ――もう、なにがなんだか、カインは分からなかった。

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