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第一章 出会い編
11、私は妄想します
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そんなことを話している間に一時間程度が過ぎていたようで、学校の鐘が完全下校時刻を私達に知らせました。正直ここまで話が長引くとは思っていなかったので、今から家に戻っても二人くらいからお小言を食らうことになりますわね、これは。ただ、今の私の立場的にそのお小言は聞く必要が無いのではないでしょうか。
私はシユウ様を信じることにしたので、教えられた未来は確定したものとして語りますが、私が将来的に第一王子に婚約破棄されるのであれば、もはや王妃教育などまともに受ける必要がないのですわ。仮にシユウ様に嫁ぐとしても、今までのような姿勢で教育を受けるのは精神的に不可能になってしまいましたし。
諦念に近い感情でしょうかね。無駄になるのが分かっている努力をすることは誰にも出来ないのですわ。いつか報われると信じて、誰しも努力しているわけですから。それが無いと早期の段階で知ることができたのは、私の人生で数少ない幸運でしたわ。
「とりあえず、俺と話してたって事情さえあれば、理不尽に怒られることは無いと思うけど、その辺どう?」
「理由によるでしょうね。何の話をしていたのか、というのは、まず間違いなく聞かれるでしょう。私からプライベートを完全に無くしたい、という考えを持っているようですから」
「ふざけてんな。……ロデウロとシーツァリアの交易についての意見を求められた、って言えば、さすがに何も言えないだろ。具体的な内容については、俺の方から漏らさないように言われた、で多分どうにかなる、はず」
「……いくら愚かとはいえ、他国の王子に口止めされていることを強引に聞き出すはずはない、と思います、いえ、思いたいですが……。断言は出来ませんわ。聡明さには上限がありますが、愚劣には限界がありませんもの」
人間は馬鹿になろうと思えばどこまでも馬鹿になれる生き物なのです。そんなことをすれば生きていけないからしないというだけですわ。私の周りにいる愚か者のなかには、そんなことも分かっていない、知ることが不可能だった環境で育ってきた者達もいます。
他国の王子に口止めまでされている、交易に関する密会の内容を詮索すれば、国の関係に摩擦が生じるかも知れないということすら理解できない者がいても、不思議ではありませんわ。シーツァリアの貴族など、お飾り以外の何者でもなく、その肩書きが他国でも通用するなんて、思い上がりでしかないというのに。
「……じゃあ、強引に聞き出そうとしてきたら、話すとロデウロの法律で罰せられる、とか言ってくれ。国を跨いだ犯罪は、適用される法律側の国で裁かれることになってる。今の段階で次期王妃を国の外部に出すのは、シーツァリアにとって不利益しかないはずだ。露見しなきゃ大丈夫は、さすがに思わないだろ」
「七か国の取り決め、ですか。確かにその取り決めは、各国の法律よりも上位で適用されますものね。情報の漏洩は上から四番目の重罪でしたか」
「通常時の取り決めの殺人、背反、宗教に次ぐ四番目の罪だな。バレれば当人が死罪どころの話じゃない。文字通り、一族郎党、だ」
七か国の取り決めには、たとえ王族だろうと逆らえない強制力がありますわ。そういった全てに対しての刑罰執行権限を持ち合わせている中間組織が存在しているのです。勿論、存在が周知されているので、実際にその組織が動くような事態になることは少ないですが。
シーツァリア、ロデウロ、ユリーシク、ディレッタ、セルム、プレント、ハージセッテの七か国。序列で言うならシーツァリアは最下位と言ってもいいのですが、表面上は全ての国は平等ということになっています。実際は完全に序列は決まっているのですが、言わぬが花ということなのでしょう。
「当然、私の無罪は貴方が証明してくださるのですわよね?」
「任せとけ。交易についての話をしたのは間違いないんだ。そん時はその段階で、お前をロデウロに迎え入れるさ」
「ふふ、その言葉が得られたのなら、私は安心して家に帰れますわね。こんなことになってしまった以上、今更誰に何を言われても気にしなくなっているでしょうし、七年後をゆるりと待つことにしますわ」
「ああ、教育も適当に流して待っててくれ。ただ、重ねて言うけど能力のことは徹底的に伏せてくれよ。それがバレたら庇いようがなくなる。どれだけ無罪の証拠を用意しても、この国の法律は第一王子にとって優位な形に改変されるだろうからな」
自分の都合のためならば国の規律だってねじ曲げる、なんて、物語の中の暴君だけの話ではないのですわ。愚かの度合いは少々過ぎますが、どんな王だって多かれ少なかれ自分に都合の良いように何かを作り替えています。それが、誰かのためなのか、自分のためなのかで、賢王と愚王は分かれるのです。
私がもう少し王子に対し丁寧に接していれば、もう少し何かを変えることが出来たのでしょうか。愚か者を、少しでも救うことは出来たのでしょうか。これは情から来る考えではなく、ただの妄想ですわ。シユウ様が私を救ったように、私も、どこかで誰かを救うことが可能だったのではないかという妄想。
「よし、帰るか。これ以上長居すると外の従者に邪推されそうだし。また話がある時は声かけるから、今日みたいに露骨に警戒すんなよ?」
「ええ、未来の婚約者のお誘いを、無下には致しませんわ」
あ、赤くなりましたわ。ここまで色恋に不慣れなのに、よく私に告白できましたわね。不思議ですわ。
私はシユウ様を信じることにしたので、教えられた未来は確定したものとして語りますが、私が将来的に第一王子に婚約破棄されるのであれば、もはや王妃教育などまともに受ける必要がないのですわ。仮にシユウ様に嫁ぐとしても、今までのような姿勢で教育を受けるのは精神的に不可能になってしまいましたし。
諦念に近い感情でしょうかね。無駄になるのが分かっている努力をすることは誰にも出来ないのですわ。いつか報われると信じて、誰しも努力しているわけですから。それが無いと早期の段階で知ることができたのは、私の人生で数少ない幸運でしたわ。
「とりあえず、俺と話してたって事情さえあれば、理不尽に怒られることは無いと思うけど、その辺どう?」
「理由によるでしょうね。何の話をしていたのか、というのは、まず間違いなく聞かれるでしょう。私からプライベートを完全に無くしたい、という考えを持っているようですから」
「ふざけてんな。……ロデウロとシーツァリアの交易についての意見を求められた、って言えば、さすがに何も言えないだろ。具体的な内容については、俺の方から漏らさないように言われた、で多分どうにかなる、はず」
「……いくら愚かとはいえ、他国の王子に口止めされていることを強引に聞き出すはずはない、と思います、いえ、思いたいですが……。断言は出来ませんわ。聡明さには上限がありますが、愚劣には限界がありませんもの」
人間は馬鹿になろうと思えばどこまでも馬鹿になれる生き物なのです。そんなことをすれば生きていけないからしないというだけですわ。私の周りにいる愚か者のなかには、そんなことも分かっていない、知ることが不可能だった環境で育ってきた者達もいます。
他国の王子に口止めまでされている、交易に関する密会の内容を詮索すれば、国の関係に摩擦が生じるかも知れないということすら理解できない者がいても、不思議ではありませんわ。シーツァリアの貴族など、お飾り以外の何者でもなく、その肩書きが他国でも通用するなんて、思い上がりでしかないというのに。
「……じゃあ、強引に聞き出そうとしてきたら、話すとロデウロの法律で罰せられる、とか言ってくれ。国を跨いだ犯罪は、適用される法律側の国で裁かれることになってる。今の段階で次期王妃を国の外部に出すのは、シーツァリアにとって不利益しかないはずだ。露見しなきゃ大丈夫は、さすがに思わないだろ」
「七か国の取り決め、ですか。確かにその取り決めは、各国の法律よりも上位で適用されますものね。情報の漏洩は上から四番目の重罪でしたか」
「通常時の取り決めの殺人、背反、宗教に次ぐ四番目の罪だな。バレれば当人が死罪どころの話じゃない。文字通り、一族郎党、だ」
七か国の取り決めには、たとえ王族だろうと逆らえない強制力がありますわ。そういった全てに対しての刑罰執行権限を持ち合わせている中間組織が存在しているのです。勿論、存在が周知されているので、実際にその組織が動くような事態になることは少ないですが。
シーツァリア、ロデウロ、ユリーシク、ディレッタ、セルム、プレント、ハージセッテの七か国。序列で言うならシーツァリアは最下位と言ってもいいのですが、表面上は全ての国は平等ということになっています。実際は完全に序列は決まっているのですが、言わぬが花ということなのでしょう。
「当然、私の無罪は貴方が証明してくださるのですわよね?」
「任せとけ。交易についての話をしたのは間違いないんだ。そん時はその段階で、お前をロデウロに迎え入れるさ」
「ふふ、その言葉が得られたのなら、私は安心して家に帰れますわね。こんなことになってしまった以上、今更誰に何を言われても気にしなくなっているでしょうし、七年後をゆるりと待つことにしますわ」
「ああ、教育も適当に流して待っててくれ。ただ、重ねて言うけど能力のことは徹底的に伏せてくれよ。それがバレたら庇いようがなくなる。どれだけ無罪の証拠を用意しても、この国の法律は第一王子にとって優位な形に改変されるだろうからな」
自分の都合のためならば国の規律だってねじ曲げる、なんて、物語の中の暴君だけの話ではないのですわ。愚かの度合いは少々過ぎますが、どんな王だって多かれ少なかれ自分に都合の良いように何かを作り替えています。それが、誰かのためなのか、自分のためなのかで、賢王と愚王は分かれるのです。
私がもう少し王子に対し丁寧に接していれば、もう少し何かを変えることが出来たのでしょうか。愚か者を、少しでも救うことは出来たのでしょうか。これは情から来る考えではなく、ただの妄想ですわ。シユウ様が私を救ったように、私も、どこかで誰かを救うことが可能だったのではないかという妄想。
「よし、帰るか。これ以上長居すると外の従者に邪推されそうだし。また話がある時は声かけるから、今日みたいに露骨に警戒すんなよ?」
「ええ、未来の婚約者のお誘いを、無下には致しませんわ」
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