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第一章 出会い編
12、私は浮かれます
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「ああ、そういえば、外に待たせてる従者のオーラ。あいつ当たり前みたいに情報横流しするから、信用しない方がいいぞ」
「分かっていますわ。隠そうともしないのですから、信用しろという方が無理な話です。ある日突然私付きの従者になったはいいものの、私を見る目に感情が無いんですもの。正直、一緒にいるのも疲れますわ」
人の目を見て感情を察することができるというのは、私の数少ない特技の一つです。まあこれも誰にも言っていないのですが。完全にというわけではなく、なんとなく程度の精度しかないのが悲しいところですが、敵と味方の見極めにあたって、これほど便利な特技はありません。
どれほど便利でも、味方を一人も見付けられないのでは持っていないのと変わらず、誰も信用していないのと変わらないのですが、そういう意味では、私の今までの人生で初めてこの特技が役立ったと言えるのでしょうね。
そもそもオーラに関して言うならば、気が付いたらいつの間にか従者になっていた置き物みたいなものなので、情報を漏らすどころか会話する気さえ無いのです。まともな返答の無い会話など独り言と変わりませんわ。よく分からない重圧をかけてくるので、先程言った通り、近くにいるだけで疲れますし。
シユウ様が扉を開くと、向かい側の壁に寄りかかっているオーラが目に入りました。私を見た瞬間に姿勢を正しましたが、別に期待も理解も信頼もするつもりはないので反応に困りますわ。
「済まなかったな、アンナ嬢と一時間近く話し込んでしまった。議論の内容が有意義なもので、ついつい時間を忘れてしまったんだ」
「いえ、私のことは気にしないでください。主の行動に干渉する権利もありませんので。……なるほど、わざわざ私にロデウロの王子が声を掛け、室内での会話内容を伝えたということは、私にそれを報告しておけ、ということですね?」
「その辺は受け取り方次第、とだけ言っておこう。お前の思うようにすればいいさ」
話してるうちに少し忘れていましたが、やはりこの方も王族なのですわね。人格の使い分けをしているところを間近に見ると、否応なしに考えさせられますわ。逆に言えば、部屋の中で私に見せていたのは素の性格、と自惚れてもいいものでしょうか。今更疑うわけではありませんが、こうも変わり身を見せられると疑心が芽生えますね。
それにしても、オーラはあんなに察しが良かったでしょうか。私に付けられたというところから優秀だというのはなんとなく分かっていましたが、私との会話には意味も感情も含まれていないので彼女のことはなにも知らないのですよね。
私のところに来る前に何をしていたかとか、そもそも誰の差し金なのかなど、知らないことばかりですわね。知りたいとも思いませんし、また今度シユウ様に聞けば教えてくれるでしょうか。情報を漏らすということも知識として知っていたようですし。
「かしこまりました、ロデウロ第二王子、シユウ・ヒストル・フルランダム様。私の判断で動きます」
「ああ、頼む。主を国の外に連れていかれるのは困るだろ? じゃあそういうことで、また来るよ、アンナ嬢」
「ええ、本日は有意義なお時間をありがとうございました、シユウ様」
軽く手を振って、シユウ様は廊下の向こうに歩いていきました。そういえば、私に話しかけてきたときも一人だったけれど、従者を一人も連れていないのは王族として少々問題なのでは。防犯意識が低いといいますか。どうせ学園の近くに待機してはいるのでしょうが、よく単独行動の許可が下りますわね。まさか独断ということは無いと信じたいですが。
さて、オーラと二人きりになってしまったわけですが、気まずいですわね。今までそんな風に感じたことなどなかったのですが、シユウ様との会話が楽しかったので、物足りなさがどうしても生じてしまいます。私はこれから、今までのような愛想笑いをすることができるのでしょうか。
生まれて初めて楽しい会話というものをしてしまったので、きっとこれからの空虚な会話をやり過ごすことが下手になりましたわね。一度上げた生活水準を再び下げることは難しい、みたいな話ですわ。楽しい会話を知った私は、きっと楽しくない会話が下手になってしまったことでしょう。
しかし、下手でもどうにか取り繕わなければなりませんわ。どうせ婚約が破棄されるとはいえ、その後のシユウ様との生活を考えれば私自身にそれなりの水準が求められることは必至であり、今までのような仮面をこれからも被り続けなければならないのは当たり前の話です。
思考がどうも浮かれていますわね。プロポーズされたとはいえシユウ様とは今日が初対面。私はここまでの楽観主義者ではなかったはずなのですが、想定外の出来事に混乱しているのかもしれませんわね。幸せというものに恵まれたことが無い人間が、突然そういったものに遭遇するとそうなるのかもしれません。
「……帰りますわ。先生方への理由報告、協力してくださいますわよね?」
「貴女が命じられれば、私は何でも致します」
盛り上がりませんわね。七年後と言わず、今すぐにでもロデウロに移住できないものでしょうか。
「分かっていますわ。隠そうともしないのですから、信用しろという方が無理な話です。ある日突然私付きの従者になったはいいものの、私を見る目に感情が無いんですもの。正直、一緒にいるのも疲れますわ」
人の目を見て感情を察することができるというのは、私の数少ない特技の一つです。まあこれも誰にも言っていないのですが。完全にというわけではなく、なんとなく程度の精度しかないのが悲しいところですが、敵と味方の見極めにあたって、これほど便利な特技はありません。
どれほど便利でも、味方を一人も見付けられないのでは持っていないのと変わらず、誰も信用していないのと変わらないのですが、そういう意味では、私の今までの人生で初めてこの特技が役立ったと言えるのでしょうね。
そもそもオーラに関して言うならば、気が付いたらいつの間にか従者になっていた置き物みたいなものなので、情報を漏らすどころか会話する気さえ無いのです。まともな返答の無い会話など独り言と変わりませんわ。よく分からない重圧をかけてくるので、先程言った通り、近くにいるだけで疲れますし。
シユウ様が扉を開くと、向かい側の壁に寄りかかっているオーラが目に入りました。私を見た瞬間に姿勢を正しましたが、別に期待も理解も信頼もするつもりはないので反応に困りますわ。
「済まなかったな、アンナ嬢と一時間近く話し込んでしまった。議論の内容が有意義なもので、ついつい時間を忘れてしまったんだ」
「いえ、私のことは気にしないでください。主の行動に干渉する権利もありませんので。……なるほど、わざわざ私にロデウロの王子が声を掛け、室内での会話内容を伝えたということは、私にそれを報告しておけ、ということですね?」
「その辺は受け取り方次第、とだけ言っておこう。お前の思うようにすればいいさ」
話してるうちに少し忘れていましたが、やはりこの方も王族なのですわね。人格の使い分けをしているところを間近に見ると、否応なしに考えさせられますわ。逆に言えば、部屋の中で私に見せていたのは素の性格、と自惚れてもいいものでしょうか。今更疑うわけではありませんが、こうも変わり身を見せられると疑心が芽生えますね。
それにしても、オーラはあんなに察しが良かったでしょうか。私に付けられたというところから優秀だというのはなんとなく分かっていましたが、私との会話には意味も感情も含まれていないので彼女のことはなにも知らないのですよね。
私のところに来る前に何をしていたかとか、そもそも誰の差し金なのかなど、知らないことばかりですわね。知りたいとも思いませんし、また今度シユウ様に聞けば教えてくれるでしょうか。情報を漏らすということも知識として知っていたようですし。
「かしこまりました、ロデウロ第二王子、シユウ・ヒストル・フルランダム様。私の判断で動きます」
「ああ、頼む。主を国の外に連れていかれるのは困るだろ? じゃあそういうことで、また来るよ、アンナ嬢」
「ええ、本日は有意義なお時間をありがとうございました、シユウ様」
軽く手を振って、シユウ様は廊下の向こうに歩いていきました。そういえば、私に話しかけてきたときも一人だったけれど、従者を一人も連れていないのは王族として少々問題なのでは。防犯意識が低いといいますか。どうせ学園の近くに待機してはいるのでしょうが、よく単独行動の許可が下りますわね。まさか独断ということは無いと信じたいですが。
さて、オーラと二人きりになってしまったわけですが、気まずいですわね。今までそんな風に感じたことなどなかったのですが、シユウ様との会話が楽しかったので、物足りなさがどうしても生じてしまいます。私はこれから、今までのような愛想笑いをすることができるのでしょうか。
生まれて初めて楽しい会話というものをしてしまったので、きっとこれからの空虚な会話をやり過ごすことが下手になりましたわね。一度上げた生活水準を再び下げることは難しい、みたいな話ですわ。楽しい会話を知った私は、きっと楽しくない会話が下手になってしまったことでしょう。
しかし、下手でもどうにか取り繕わなければなりませんわ。どうせ婚約が破棄されるとはいえ、その後のシユウ様との生活を考えれば私自身にそれなりの水準が求められることは必至であり、今までのような仮面をこれからも被り続けなければならないのは当たり前の話です。
思考がどうも浮かれていますわね。プロポーズされたとはいえシユウ様とは今日が初対面。私はここまでの楽観主義者ではなかったはずなのですが、想定外の出来事に混乱しているのかもしれませんわね。幸せというものに恵まれたことが無い人間が、突然そういったものに遭遇するとそうなるのかもしれません。
「……帰りますわ。先生方への理由報告、協力してくださいますわよね?」
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