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第一章 出会い編
18、私は流されます
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「今日はね、本を読んだの! その本にオムライスが出てきたから食べたくなってお願いしたら、いいよって言ってくれたの! やっぱりオムライスは皆好きなのね! おいしいわ!」
「そうなの、良かったわね。私もオムライスは好きよ」
「それでね、その本すっごく難しいの! 何が書いてあるかわからなかったんだけど、最後まで読むのが大切だと思って、最後のページまでめくったのよ!」
「それは偉いわね。本を最後まで読みきるのは大変なことだものね」
「そうよね! 何が書いてあるのか全然分からなかったんだけど、最後まで行ったなら読んだってことだものね! 私の方がお姉様より頭が良くなるのはそう遠い話ではないわね!」
「そうね。レンカなら、絶対にもっと賢くなれるわ。これからも本を読んでね」
「ええ! 疲れたからまたそのうち読むわ!」
地獄の会話ですわね。こんなに中身のない雑談が世の中に存在するとは、知ってはいましたが何回聞いても慣れません。だからなるべく妹とは一緒に食事したくないのです。特に二人きりになんかなった日には胃が食事を受け付けなくなることが確定していると言ってもいいでしょう。
それにしてもオムライス。あの本に出てきた記憶がないのですが。最初の三ページしか読んでいないのでそれ以降に出てきた可能性もありますが、あの妹が文章をまともに読むとは思えませんし。あ、そういえば目次にオムレストという人名が記載してあった気がします。オムレスト。まさか、ですわよね。
「お姉様にどんな内容だったか説明するって言ったんだけど、難しくてまとめられないわ! お姉様に本を渡すから、是非読んでちょうだい!」
「……覚えていてくれたのね。ありがとう、レンカ。後で借りに行くわ」
「そういえばお姉様、ダンスの先生にちゃんと謝ったの? 大変なのは分かるけど、お姉様自身のためなんだから、ちゃんとしなきゃ駄目よ?」
「……ええ、そうね。ありがとう」
何に対して私はありがとうと言ったのでしょうか。感謝する部分が無さすぎて、たった今の会話を全て忘れてしまう程度には虚しくなりました。お母様から少しだけ同情的な視線が向けられているのが何となく察せられますが、妹がここまで深刻なことになったのはお母様とお父様の責任ですわよ。しっかりと教育していればこんなことには。
今更言っても詮の無いことだと分かってはいるのですが、ここまで自分勝手なことを言われるともう、感情的には苛々を通り越して虚無に突入しています。諦めという段階すら既に飛び越えました。今の私は、妹という流れになるべく逆らわないようにすることだけを意識する機械です。
それでもあえて文句を言うならば、踊っている私を見てダンスを習いたいと言ったにもかかわらず、たった一日で投げ出した貴女にとやかく言われる筋合いはないということです。家の中では黙って、外だけで友人相手に自分語りをしていてくれれば私は何も言いません。
実際にそう言ったとしても、この子には一切響かないのでしょうけれど。自分のことしか話さず、自分の興味のあることしか聞かないのが妹です。もう全てが手遅れですわね。実際、内心では両親もそう考えているのでしょう。そもそも、弟が生まれた段階で妹の仕事は無くなってしまったわけですし。
「そういえば、今日ロデウロの王子様が留学してきたって、クラスの子達が騒いでいたわ。お姉様の学年らしいけど、会いに行ってどうなるって言うのかしら。恋人になってくれるわけでもないでしょうに」
「そうね。でも、貴女なら友達になれるかもしれないわよ」
「なっても楽しくなさそうだもの」
貴女がそれを言うの。それは多分、貴女の友達が、友達だと思っている子達が貴女に抱いている感情とほぼ同一だと思いますわよ。少なくとも私は妹と一緒にいて楽しいと思ったことは一度もありません。お母様も適当に返事するのをやめてください。真に受けて行動して、取り返しの付かないことになったらどうするつもりですの。
まあ、シユウ様なら多少の無礼は許してくれるかもしれませんが、なるべく迷惑をかけないでくださいませ。私の幸福な七年後のためにも。いっそのこと妹を扇動して、国際問題にまで発展させて、もうロデウロに連れていってもらいましょうか。妄想ですわ。何が起こるか不明瞭になってしまうような愚行は冒しません。
というか楽しくなさそうって、それはうちの第一王子と話したときの感想そのままでしょうに。自分本意の二人が話したって盛り上がるわけも楽しいわけもないのは目に見えていましたが、実際に実現するとあそこまで無言で解散することになるとは。同族嫌悪というやつでしょうか。
「美味しかったわ! うちの料理長は流石ね!」
「そうね、最高の料理人。抱え込んでおいて正解だったわ」
「……ご馳走様でした。お母様、レンカ、私は先に部屋に戻ります。本日の復習をしなければならないので」
「分かったわ。あまり遅くならないようにね」
「お休みなさいお姉様! また明日ね!」
抱え込むとは、なんとも不快な言い方を。美味しかったオムライスも、後味は泥の味ですわ。
「そうなの、良かったわね。私もオムライスは好きよ」
「それでね、その本すっごく難しいの! 何が書いてあるかわからなかったんだけど、最後まで読むのが大切だと思って、最後のページまでめくったのよ!」
「それは偉いわね。本を最後まで読みきるのは大変なことだものね」
「そうよね! 何が書いてあるのか全然分からなかったんだけど、最後まで行ったなら読んだってことだものね! 私の方がお姉様より頭が良くなるのはそう遠い話ではないわね!」
「そうね。レンカなら、絶対にもっと賢くなれるわ。これからも本を読んでね」
「ええ! 疲れたからまたそのうち読むわ!」
地獄の会話ですわね。こんなに中身のない雑談が世の中に存在するとは、知ってはいましたが何回聞いても慣れません。だからなるべく妹とは一緒に食事したくないのです。特に二人きりになんかなった日には胃が食事を受け付けなくなることが確定していると言ってもいいでしょう。
それにしてもオムライス。あの本に出てきた記憶がないのですが。最初の三ページしか読んでいないのでそれ以降に出てきた可能性もありますが、あの妹が文章をまともに読むとは思えませんし。あ、そういえば目次にオムレストという人名が記載してあった気がします。オムレスト。まさか、ですわよね。
「お姉様にどんな内容だったか説明するって言ったんだけど、難しくてまとめられないわ! お姉様に本を渡すから、是非読んでちょうだい!」
「……覚えていてくれたのね。ありがとう、レンカ。後で借りに行くわ」
「そういえばお姉様、ダンスの先生にちゃんと謝ったの? 大変なのは分かるけど、お姉様自身のためなんだから、ちゃんとしなきゃ駄目よ?」
「……ええ、そうね。ありがとう」
何に対して私はありがとうと言ったのでしょうか。感謝する部分が無さすぎて、たった今の会話を全て忘れてしまう程度には虚しくなりました。お母様から少しだけ同情的な視線が向けられているのが何となく察せられますが、妹がここまで深刻なことになったのはお母様とお父様の責任ですわよ。しっかりと教育していればこんなことには。
今更言っても詮の無いことだと分かってはいるのですが、ここまで自分勝手なことを言われるともう、感情的には苛々を通り越して虚無に突入しています。諦めという段階すら既に飛び越えました。今の私は、妹という流れになるべく逆らわないようにすることだけを意識する機械です。
それでもあえて文句を言うならば、踊っている私を見てダンスを習いたいと言ったにもかかわらず、たった一日で投げ出した貴女にとやかく言われる筋合いはないということです。家の中では黙って、外だけで友人相手に自分語りをしていてくれれば私は何も言いません。
実際にそう言ったとしても、この子には一切響かないのでしょうけれど。自分のことしか話さず、自分の興味のあることしか聞かないのが妹です。もう全てが手遅れですわね。実際、内心では両親もそう考えているのでしょう。そもそも、弟が生まれた段階で妹の仕事は無くなってしまったわけですし。
「そういえば、今日ロデウロの王子様が留学してきたって、クラスの子達が騒いでいたわ。お姉様の学年らしいけど、会いに行ってどうなるって言うのかしら。恋人になってくれるわけでもないでしょうに」
「そうね。でも、貴女なら友達になれるかもしれないわよ」
「なっても楽しくなさそうだもの」
貴女がそれを言うの。それは多分、貴女の友達が、友達だと思っている子達が貴女に抱いている感情とほぼ同一だと思いますわよ。少なくとも私は妹と一緒にいて楽しいと思ったことは一度もありません。お母様も適当に返事するのをやめてください。真に受けて行動して、取り返しの付かないことになったらどうするつもりですの。
まあ、シユウ様なら多少の無礼は許してくれるかもしれませんが、なるべく迷惑をかけないでくださいませ。私の幸福な七年後のためにも。いっそのこと妹を扇動して、国際問題にまで発展させて、もうロデウロに連れていってもらいましょうか。妄想ですわ。何が起こるか不明瞭になってしまうような愚行は冒しません。
というか楽しくなさそうって、それはうちの第一王子と話したときの感想そのままでしょうに。自分本意の二人が話したって盛り上がるわけも楽しいわけもないのは目に見えていましたが、実際に実現するとあそこまで無言で解散することになるとは。同族嫌悪というやつでしょうか。
「美味しかったわ! うちの料理長は流石ね!」
「そうね、最高の料理人。抱え込んでおいて正解だったわ」
「……ご馳走様でした。お母様、レンカ、私は先に部屋に戻ります。本日の復習をしなければならないので」
「分かったわ。あまり遅くならないようにね」
「お休みなさいお姉様! また明日ね!」
抱え込むとは、なんとも不快な言い方を。美味しかったオムライスも、後味は泥の味ですわ。
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