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第二章 懇親会編
38、私は疑ってしまいます
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「……それで、ロマンチックなデートってどういうものなの? 私にあそこまで言ったんだから、当然具体的な案があるのよね?」
「え? そんなものないですよ。まさかアンナ様、たった今辛い道を歩くって宣言しておいて、デートプランを使用人に考えさせるおつもりですか? え? 正気ですか?」
「クビね」
「勘弁してください冗談ですから。いや、でも実際そうでしょう? 好きになる努力というなら、一緒にどこに行きたいといったことも自分で決めなくては駄目では?」
「……正論なんだか、丸め込まれたんだか。まあ、言っていることに一理があるのは認めるわ。発言がノープランだったという疑惑は捨てきれないけど」
「あはは、まっさかぁ」
目が泳いでいますわね。リーデアは隠し事は上手いのでこの目の動きは間違いなくわざとやっているもの。だとしたらおちょくられたものですわ。私が納得してしまっていることを理解して、追及できないのをいいことにここぞとばかりに馬鹿にしてきますわね。他の家だったら解雇間違いなしですわよ。
他の家だったら絶対にしないでしょうね、こんなこと。私を相手にしているからなど分かっています。親愛表現として受け取るのが一番正しいのでしょうが、なんでしょうね、むかつきますわね。結婚の話題を振って泣かせてやろうかしら。まあ、結局それで面倒な役割を引き受けるのは私なのですが。
「でも実際、思いつかないから貴女に意見を求めているところもあるのよ? 何せ私はそういった浮ついた話とは一切隔離された仕事みたいな結婚をさせられるはずの女なのだから。世の男子が誘われて喜ぶ場所なんて分からないわ」
「確かに、通常だったらアンナ様のそのある意味での知識不足は深刻な問題だと思います。ですがこの場合に限ってはそれは全く問題ではありません」
「どういうこと?」
「あの王子様はアンナ様に誘われたら、例え罠だろうと喜んでついてくると思いますよ。だからどこに行くかはどうでもいいんです。重要なのは、アンナ様に誘いを口にする勇気があるかという一点のみです」
なるほど。それは自惚れに近いのかもしれないけれど、シユウ様にどこかに二人で出かけましょうなどと言ったら、一瞬の逡巡もなく首を縦に振る姿が容易に想像できますわね。王子としては失格ですが、今の私にとっては助かる話です。
ただ問題はその後。リーデアの言う通り、シユウ様を真正面からデートに誘うなど私には到底無理な話。いえ、これは心境の問題ではなく、環境の問題です。常に監視されているに等しい私が、シユウ様と二人きりで出かけるなど無茶を通り越して無謀と言われても仕方ありません。
何処に行きたいかを決めるよりも先に、実行するとなった際にどうやって監視の目を誤魔化すかを考えなくてはならず、そしてそれはシユウ様の方の護衛も同様です。あちら側にも、まだ私のことを受け入れていない者はいるとシユウ様は言っていました。それ自体は当然ですが。
「違います。心境の問題です。大体の問題というのは、なるようになりますし、その場に応じてどうにでもなるんです。でも、最初の一歩だけは自分の意思で踏み出さないといけないんです。失礼を承知で言いますが、今のアンナ様にそんな度胸があるとは思えません」
「本当に失礼ね。そのくらい簡単に言えます」
「じゃあ今電話して言ってくださいよ」
「まだ具体的なことが何も決まってないでしょうが」
「そういうところですよ。いいんですよ、デートなんてその場の勢いなんですから。当日になってから二人で相談してどこに行くか決めたって誰も責めませんよ。むしろその方が楽しいってこともあります」
「監視はどうするのよ。休日に私が出掛けるとなれば監視が付くのは避けられない。それは向こうだって同じはずよ。こんな状況で二人きりなんて実現するわけが」
「そこは私に、いえ、私達に任せてください。さすがに身の危険を考慮すれば、近辺に一人か二人はいる必要がありますが、邪魔しない者を配置しましょう。それならどうです?」
「……それならどうって、貴女は一体いつの間にそんな権限を握ったのよ」
「ふふふ、こんなこともあろうかと、シユウ王子側の従者と連絡先を交換していたのですよ」
「いつの間に……」
「これまでのやりとりでお二人の仲に協力的であることは確認済み。計画を説明すれば実現のために動いてくれることでしょう」
「メイドの仕事の範疇からは完全に外れてるわね。……というかそれ、貴女としては結構危ない橋なんじゃないの? 私のためになんでそんな危険を冒してるのよ。前々から思ってたけど馬鹿なの?」
「酷いですね。私はただ、アンナ様に幸せな結婚をしてほしいだけです。そしてこれは使用人の総意です。そしてあわよくば、結婚したアンナ様に着いていくということも!」
「それ普通本人に言う?」
笑顔を私に向けるリーデアはとても優しい。きっと私に気負わせないために、そんなブラックユーモア染みたことを最後に付け加えたのでしょうね。こんな情けない十二歳のために、そんな危ない橋を渡らせたのは心の底から申し訳ないと思う。でも、どうしても疑いを捨てきれない。
その連絡先の交換って、本当は自分の結婚のためじゃないの、と。
「え? そんなものないですよ。まさかアンナ様、たった今辛い道を歩くって宣言しておいて、デートプランを使用人に考えさせるおつもりですか? え? 正気ですか?」
「クビね」
「勘弁してください冗談ですから。いや、でも実際そうでしょう? 好きになる努力というなら、一緒にどこに行きたいといったことも自分で決めなくては駄目では?」
「……正論なんだか、丸め込まれたんだか。まあ、言っていることに一理があるのは認めるわ。発言がノープランだったという疑惑は捨てきれないけど」
「あはは、まっさかぁ」
目が泳いでいますわね。リーデアは隠し事は上手いのでこの目の動きは間違いなくわざとやっているもの。だとしたらおちょくられたものですわ。私が納得してしまっていることを理解して、追及できないのをいいことにここぞとばかりに馬鹿にしてきますわね。他の家だったら解雇間違いなしですわよ。
他の家だったら絶対にしないでしょうね、こんなこと。私を相手にしているからなど分かっています。親愛表現として受け取るのが一番正しいのでしょうが、なんでしょうね、むかつきますわね。結婚の話題を振って泣かせてやろうかしら。まあ、結局それで面倒な役割を引き受けるのは私なのですが。
「でも実際、思いつかないから貴女に意見を求めているところもあるのよ? 何せ私はそういった浮ついた話とは一切隔離された仕事みたいな結婚をさせられるはずの女なのだから。世の男子が誘われて喜ぶ場所なんて分からないわ」
「確かに、通常だったらアンナ様のそのある意味での知識不足は深刻な問題だと思います。ですがこの場合に限ってはそれは全く問題ではありません」
「どういうこと?」
「あの王子様はアンナ様に誘われたら、例え罠だろうと喜んでついてくると思いますよ。だからどこに行くかはどうでもいいんです。重要なのは、アンナ様に誘いを口にする勇気があるかという一点のみです」
なるほど。それは自惚れに近いのかもしれないけれど、シユウ様にどこかに二人で出かけましょうなどと言ったら、一瞬の逡巡もなく首を縦に振る姿が容易に想像できますわね。王子としては失格ですが、今の私にとっては助かる話です。
ただ問題はその後。リーデアの言う通り、シユウ様を真正面からデートに誘うなど私には到底無理な話。いえ、これは心境の問題ではなく、環境の問題です。常に監視されているに等しい私が、シユウ様と二人きりで出かけるなど無茶を通り越して無謀と言われても仕方ありません。
何処に行きたいかを決めるよりも先に、実行するとなった際にどうやって監視の目を誤魔化すかを考えなくてはならず、そしてそれはシユウ様の方の護衛も同様です。あちら側にも、まだ私のことを受け入れていない者はいるとシユウ様は言っていました。それ自体は当然ですが。
「違います。心境の問題です。大体の問題というのは、なるようになりますし、その場に応じてどうにでもなるんです。でも、最初の一歩だけは自分の意思で踏み出さないといけないんです。失礼を承知で言いますが、今のアンナ様にそんな度胸があるとは思えません」
「本当に失礼ね。そのくらい簡単に言えます」
「じゃあ今電話して言ってくださいよ」
「まだ具体的なことが何も決まってないでしょうが」
「そういうところですよ。いいんですよ、デートなんてその場の勢いなんですから。当日になってから二人で相談してどこに行くか決めたって誰も責めませんよ。むしろその方が楽しいってこともあります」
「監視はどうするのよ。休日に私が出掛けるとなれば監視が付くのは避けられない。それは向こうだって同じはずよ。こんな状況で二人きりなんて実現するわけが」
「そこは私に、いえ、私達に任せてください。さすがに身の危険を考慮すれば、近辺に一人か二人はいる必要がありますが、邪魔しない者を配置しましょう。それならどうです?」
「……それならどうって、貴女は一体いつの間にそんな権限を握ったのよ」
「ふふふ、こんなこともあろうかと、シユウ王子側の従者と連絡先を交換していたのですよ」
「いつの間に……」
「これまでのやりとりでお二人の仲に協力的であることは確認済み。計画を説明すれば実現のために動いてくれることでしょう」
「メイドの仕事の範疇からは完全に外れてるわね。……というかそれ、貴女としては結構危ない橋なんじゃないの? 私のためになんでそんな危険を冒してるのよ。前々から思ってたけど馬鹿なの?」
「酷いですね。私はただ、アンナ様に幸せな結婚をしてほしいだけです。そしてこれは使用人の総意です。そしてあわよくば、結婚したアンナ様に着いていくということも!」
「それ普通本人に言う?」
笑顔を私に向けるリーデアはとても優しい。きっと私に気負わせないために、そんなブラックユーモア染みたことを最後に付け加えたのでしょうね。こんな情けない十二歳のために、そんな危ない橋を渡らせたのは心の底から申し訳ないと思う。でも、どうしても疑いを捨てきれない。
その連絡先の交換って、本当は自分の結婚のためじゃないの、と。
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