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第二章 懇親会編
39、私は違いを考えます
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中等部第四談話室。自分で言うのはあれですが、次期王妃と隣国の王子が会話をするのには少々殺風景だと言わざるを得ない部屋です。本来であれば第一談話室の予約くらい簡単に取れたのでしょうが、シユウ様は自分の地位を利用して良い思いをしようみたいな欲望がありません。
初めて話したのも初等部で一番小さい談話室でしたし、言い方は悪いですが小心者なのでしょうね。とは言え、確かに二人しかいないのならば、サイズ的にはこれで丁度、いえ、むしろこれでもまだスペースは余っています。王子らしくないところが魅力、と言えば、これも少しは美談になるのでしょうか。
初等部と中等部では制服のデザイン自体はそこまで大きく変わりません。所々に意匠が散りばめられるくらいでしょうか。下品に見えない程度の装飾なので、この制服で街に出かける学生も多いとか。装飾は罪悪とかそんな言葉を聞いたことがありますが、そういう考えがあるのでしょうかね。
私の個人的な感想としては、もう少しだけスカート丈を長くしてくれないかということです。ある程度自由が利く程度の規制ではあるのですが、出来ることなら膝も隠したいくらいなのです。これは私の羞恥心と言うか露出を避けたいという思いが過度なのだろうと諦めてはいるのですが。
「……ということがありまして、そちらのグースという従者は信頼できるのかをお聞きしたいのです。どこの馬の骨とも知れぬ男にリーデアを任せるわけにはいきませんので」
「馬の骨て」
「確実にそうだと言っているわけではありません。もしそうだったら困るというお話です。リーデアの苦労は嫌になるほど見てきました。そしてその原因はフォーマットハーフ家、いえ、彼女が我が家に来る理由になってしまった私にあります」
「そうか?」
「勝手な思い込みだとしても、一因として私がいることは間違いないでしょう。それに対して、これでも結構責任を感じているのですよ。人一人の幸せを奪っていると、彼女と話しているとそう思ってしまう」
「……ま、例えそうだとしても安心して良い。グースは未婚だし、何より誠実な奴だ。年齢も三十二で、今のところ恋人もいない。うちに仕えてるから当然給料もいい。遊んでるって話も聞かないから、貯金も結構あるだろうし、優良物件だと思うぜ」
「ふむ……、それならまあ、後は本人たち次第ということでいいでしょう。周囲にお膳立てされた関係など、どうせ長続きしませんし」
「じゃあ、俺達の関係は長続きするってことかな? な?」
「は?」
「……威圧止めよう」
なぜこの人はすぐ調子に乗ってしまうのでしょうか。二年前から似たような茶番を何度繰り返したか分かりませんが、全く改善されませんわ。こういう性格を含めてシユウ様だと言えはしますが、せめてもう少し意志を強く持ってほしいですわね。
私が少し顔を歪めたくらいで謝っていて王子が務まるのでしょうか。というかもう諦めた方がいいのでしょうかね。シユウ様の美徳として納得しましょうか。考えるのも面倒になってきました。いえ、しかし将来的に困ることになるのはシユウ様、ひいては私に返ってくるのでは。
「それで、今度の懇親会なんだけどさ、もう参加者って誰かから聞いた?」
「いえ、ミラから七か国全部から王族が参加するというのは聞きましたが、具体的にはまだ」
「そっか、じゃあ具体的に教えとく。まずは俺、ロデウロ第二王子、シユウ・ヒストル・フルランダム。この間も話した、セルム第二王子、フラット・ステム・ドットレイド」
「もしその方が実際に言い寄って来たら私はどう対処すればいいのでしょうか? あまり気にしないというのも気分を害するかもしれませんし……」
「大丈夫。もしそんなことしようとしたら俺が全力で後頭部を引っ叩くから。そうすれば流石のあいつでも、手を出しちゃいけない相手だって理解するだろ」
「え、叩くんですか? 大丈夫なんですかそれ?」
「王位継承権二位以下同士の絡みなんて大体そんなもんだよ。んなこと言ったら、ディレッタからの参加者、第二王女のハクア・ステイロ・リストベアと、俺は掴みあいの喧嘩をしたこともある」
「女子に手をあげたんですの? それはそれで見損ないますが」
「五歳くらいの時の話だから。傑作なのがさ、その時の映像がまだ残ってて、たまにそれであいつからかわれてるらしいんだよ。今度の懇親会でお披露目しようぜって少し他の奴とも話してるんだけど、そんなことしたら絶対あいつに殴られる」
笑いながら話しているその姿は王族ではなく、町に住む普通の少年と何も変わらないもののように見えました。王族らしくない、というのは、初対面の時から今までに至るまで、一切変わらない印象の一つなのですが、それはどこから来ているものなのでしょう。
生まれながらに王族として育てられたにもかかわらず、我が国の王子と一体どうしてここまで違ってしまっているのか。第一王子と第二王子という立場の差こそあれど、極限と言っていいほどに乖離した要因があるとするなら、どこなのか。
「……仲が良いんですのね」
「ま、友達だな。こんなこと言ったら、あいつにはまた殴られそうだけど」
初めて話したのも初等部で一番小さい談話室でしたし、言い方は悪いですが小心者なのでしょうね。とは言え、確かに二人しかいないのならば、サイズ的にはこれで丁度、いえ、むしろこれでもまだスペースは余っています。王子らしくないところが魅力、と言えば、これも少しは美談になるのでしょうか。
初等部と中等部では制服のデザイン自体はそこまで大きく変わりません。所々に意匠が散りばめられるくらいでしょうか。下品に見えない程度の装飾なので、この制服で街に出かける学生も多いとか。装飾は罪悪とかそんな言葉を聞いたことがありますが、そういう考えがあるのでしょうかね。
私の個人的な感想としては、もう少しだけスカート丈を長くしてくれないかということです。ある程度自由が利く程度の規制ではあるのですが、出来ることなら膝も隠したいくらいなのです。これは私の羞恥心と言うか露出を避けたいという思いが過度なのだろうと諦めてはいるのですが。
「……ということがありまして、そちらのグースという従者は信頼できるのかをお聞きしたいのです。どこの馬の骨とも知れぬ男にリーデアを任せるわけにはいきませんので」
「馬の骨て」
「確実にそうだと言っているわけではありません。もしそうだったら困るというお話です。リーデアの苦労は嫌になるほど見てきました。そしてその原因はフォーマットハーフ家、いえ、彼女が我が家に来る理由になってしまった私にあります」
「そうか?」
「勝手な思い込みだとしても、一因として私がいることは間違いないでしょう。それに対して、これでも結構責任を感じているのですよ。人一人の幸せを奪っていると、彼女と話しているとそう思ってしまう」
「……ま、例えそうだとしても安心して良い。グースは未婚だし、何より誠実な奴だ。年齢も三十二で、今のところ恋人もいない。うちに仕えてるから当然給料もいい。遊んでるって話も聞かないから、貯金も結構あるだろうし、優良物件だと思うぜ」
「ふむ……、それならまあ、後は本人たち次第ということでいいでしょう。周囲にお膳立てされた関係など、どうせ長続きしませんし」
「じゃあ、俺達の関係は長続きするってことかな? な?」
「は?」
「……威圧止めよう」
なぜこの人はすぐ調子に乗ってしまうのでしょうか。二年前から似たような茶番を何度繰り返したか分かりませんが、全く改善されませんわ。こういう性格を含めてシユウ様だと言えはしますが、せめてもう少し意志を強く持ってほしいですわね。
私が少し顔を歪めたくらいで謝っていて王子が務まるのでしょうか。というかもう諦めた方がいいのでしょうかね。シユウ様の美徳として納得しましょうか。考えるのも面倒になってきました。いえ、しかし将来的に困ることになるのはシユウ様、ひいては私に返ってくるのでは。
「それで、今度の懇親会なんだけどさ、もう参加者って誰かから聞いた?」
「いえ、ミラから七か国全部から王族が参加するというのは聞きましたが、具体的にはまだ」
「そっか、じゃあ具体的に教えとく。まずは俺、ロデウロ第二王子、シユウ・ヒストル・フルランダム。この間も話した、セルム第二王子、フラット・ステム・ドットレイド」
「もしその方が実際に言い寄って来たら私はどう対処すればいいのでしょうか? あまり気にしないというのも気分を害するかもしれませんし……」
「大丈夫。もしそんなことしようとしたら俺が全力で後頭部を引っ叩くから。そうすれば流石のあいつでも、手を出しちゃいけない相手だって理解するだろ」
「え、叩くんですか? 大丈夫なんですかそれ?」
「王位継承権二位以下同士の絡みなんて大体そんなもんだよ。んなこと言ったら、ディレッタからの参加者、第二王女のハクア・ステイロ・リストベアと、俺は掴みあいの喧嘩をしたこともある」
「女子に手をあげたんですの? それはそれで見損ないますが」
「五歳くらいの時の話だから。傑作なのがさ、その時の映像がまだ残ってて、たまにそれであいつからかわれてるらしいんだよ。今度の懇親会でお披露目しようぜって少し他の奴とも話してるんだけど、そんなことしたら絶対あいつに殴られる」
笑いながら話しているその姿は王族ではなく、町に住む普通の少年と何も変わらないもののように見えました。王族らしくない、というのは、初対面の時から今までに至るまで、一切変わらない印象の一つなのですが、それはどこから来ているものなのでしょう。
生まれながらに王族として育てられたにもかかわらず、我が国の王子と一体どうしてここまで違ってしまっているのか。第一王子と第二王子という立場の差こそあれど、極限と言っていいほどに乖離した要因があるとするなら、どこなのか。
「……仲が良いんですのね」
「ま、友達だな。こんなこと言ったら、あいつにはまた殴られそうだけど」
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