58 / 169
ラジトバウム編
40
しおりを挟む冒険士ギルドの前に来た。ちょうどローグ・マールシュが出てきて鉢合わせる。
彼女はこんなときでも怖いくらい冷静で、どこか麗(うるわ)しい。
たしか王都の護衛部隊だかに所属していたとかハイロが言っていたような気がするから、こういう事態にも慣れているのかもしれない。
ローグはこちらに気がつくと、
「あら、二人ともちょうどいいところに。今から不審爆発の調査に向かうからついてきてちょうだい」
「悪いな。こっちにはこっちのやることがある。あんたたちでがんばってくれ」
と、俺はそっけない返事を返す。そっちの都合のいいときだけ手伝ってくれなんて、ムシが良すぎるんだよ。
「……そ。まムリにとは言わないけれど……黒い影の集団が奇妙な動物をどこかへ運んでいたって目撃情報が入っているとしたら……どうかしら」
「なにか知ってるのか」
「……ジャングルエリアのほうへ向かっていったそうだわぁ。奇しくも今から調査にむかおうとしている場所と同じなのよね」
それと聞いて、自分の体が緊張するのがわかった。
「あなたたちのほうこそ、なにか知ってることはないの?」
ローグにそう聞かれても、なにも答えることはできなかった。
-----
ジャングルエリアに到達する。深部まで火の手があがり、冒険士たちやらが消火作業にあたっていた。
この周辺はフォッシャと訪れたことのある遺跡が近い、ジャングルの深部。
冒険士ですらめったにこないような場所だ。こんなところで、あれだけの規模の爆発が自然発生するとは思えない。
フォッシャがなにか……関わっているんじゃないか。
そんな考えが、脳裏をなんどもよぎる。
グオォと、生物がよりつかないと言われる虚底の沼地のほうから、嵐のうねりのようなすさまじい声量の咆哮がきこえた。空気が震えたのがわかる。
俺はローグと目を合わせ、
「寄りたいところがある。二人で先にいってくれ。俺は後から追う」
ローグは特に文句をいうこともなく、ハイロもこくと頷いて沼地へと向かっていった。
-----
俺は記憶をたよりに、一度きただけの遺跡を探索する。
案の定、奥の部屋で探し物はみつかった。審官のカードがあったあの厳(おごそ)かな辺境(へんきょう)だ。
「フォッシャ!」
倒れて気絶しているフォッシャのそばに駆け寄る。
フォッシャは無事なようで、眠りから覚めたかのようにおだやかに目をあけた。
「あれ? ここは……。エイト? なにがあったワヌか?」
「……わからない。でもお前が黒い影にさらわれたのを、街の人が見たって……」
「……もしかして、これって」
フォッシャの不安げな視線を追うと、部屋の中央にぽっかりと地面がえぐられていた。さらに天井がほとんど無くなっている。
ここにたしか、大きな像のようなものがあった気がする。
それがなくなってるっていうのは一体……。わからないがなにか良くないことが起ころうとしているのはたしかなようだ。
「そうだ。ハイロたちを助けにいかないと」
外に出ると、雲行きが怪しくなっていた。
また爆発があった。遠くからでもわかるほど大きい。沼地のほうだ。
灰色の空を見上げたとき、俺は自分の目をうたがった。
――飛龍だ。
カードでしか見たことがない本物のドラゴンが雄たけびをあげて、巨大な翼をはためかせ宙を舞っている。
一瞬目があったような気がして、俺は背筋が凍るような感覚をおぼえる。
しばらく畏怖と呆気に体を支配されていたが、すぐにハイロとローグのことを思い出し、沼地へと急いだ。
0
あなたにおすすめの小説
魔石物語 - 魔石ガチャとモンスター娘のハーレムパーティーで成り上がり -
花京院 光
ファンタジー
十五歳で成人を迎え、冒険者登録をするために魔法都市ヘルゲンに来たギルベルトは、古ぼけたマジックアイテムの専門店で『魔石ガチャ』と出会った。
魔石はモンスターが体内に魔力の結晶。魔石ガチャは魔石を投入してレバーを回すと、強力なマジックアイテムを作り出す不思議な力を持っていた。
モンスターを討伐して魔石を集めながら、ガチャの力でマジックアイテムを入手し、冒険者として成り上がる物語です。
モンスター娘とのハーレムライフ、マジックアイテム無双要素を含みます。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
なぜ、最強の勇者は無一文で山に消えたのか? ──世界に忘れられ、ひび割れた心のまま始めたダークスローライフ。 そして、虹の種は静かに育ち始め
イニシ原
ファンタジー
ダークスローライフで癒しに耐えろ。
孤独になった勇者。
人と出会わないことで進む時間がスローになるのがダークスローライフ。
ベストな組み合わせだった。
たまに来る行商人が、唯一の接点だった。
言葉は少なく、距離はここちよかった。
でも、ある日、虹の種で作ったお茶を飲んだ。
それが、すべての始まりだった。
若者が来た。
食料を抱えて、笑顔で扉を叩く。
断っても、また来る。
石を渡せば帰るが、次はもっと持ってくる。
優しさは、静けさを壊す。
逃げても、追いつかれる。
それでも、ほんの少しだけ、
誰かと生きたいと思ってしまう。
これは、癒しに耐える者の物語。
***
登場人物の紹介
■ アセル
元勇者。年齢は40に近いが、見た目は16歳。森の奥でひとり暮らしている。
■ アーサー
初老の男性。アセルが唯一接点を持つ人物。たまに森を訪れる。
■ トリス
若者。20代前半。アーサー行方不明後、食料を抱えて森の家を訪れる。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる