過去に戻るインスタッレ(完結)

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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23) これからです

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四阿野原奈利子しあのはらなりこさん



あなたのお兄さんの事件の裏には
こんなことがあったんです



弁当屋の女将さんはあなたにも
お兄さんにも謝りたいと
仰っていたのに



何故あなたは
断ったのですか



謝罪が必要だと
被害者感情は
加害者からの謝罪を求めると
奈利子さんは
仰ったじゃないですか



「占い師さん、有り難うございました。まさか本当に事件が解決できるなんて……私は嬉しいんです。あの女将さんが謝ってくれたって私たちは変わりません。もう、兄は亡くなったんです、昨日。もっと早くに解決していても兄には理解できなかったと思います。ただニコニコ笑っているだけの屍だったからです」



奈利子さん
私はあなたのために
間違ったことをしたような
気がしています



あの四人に
正確には三人ですが
私が裏から悪い影響を与えた
その事が彼らの人生を
歪めてしまった



もしかしたら彼らは
自分の人生から何かを学んで
もっと年を取ってから
自ら謝罪に来たかもしれない
その時間を奪った
それは人間が
してはいけないことなのでは
何かを侵犯してしまったのでは



私は罪を犯しました
私の心に取っては
明らかな罪です



私は侵犯した
踏み込んではいけない領域を
侵犯したのです



ここに私の書いたとされる
「月光の奇妙な境」があります
これを二度と
人の目に触れないように
この場で焼き捨てて
私は書かないと誓う



奈利子さん
あなたが証人です
この本がなければ
未来にも過去にも行けない
もう誰も踏み込まない



時間は神聖です



全ての人に与えられた
神からの神聖なもの



あなたと私に与えられた
時間も神聖なもののはず



もしも人間が
神という畏怖なる概念を
心にインストールされている
神聖なイレモノだとすれば



神聖な命です



肉なるイレモノで
その命は儚いものですが
罪深くもあり
神聖なものでもあるはず



四阿野原奈利子さん
人生はこれからです













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