過去に戻るインスタッレ(完結)

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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25) 会いたい

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「わかりません。占い師さん。私には納得できない」

占い師さん
せっかく過去に戻れるのに
何故、幸せになれるように
過去を変えてはいけないの

殺すのはやめる

殺意を抱いてはいたけど
殺すなんて本当は恐ろしくて

犯人がわかって
その結果もわかったから
取り敢えず気が済んだ

でも……

「占い師さん。お願いがあります。あなたにはもう何を言っても聞いてくれないかもしれないけれど、もう一度過去に戻って事故に遭う前のお兄ちゃんに会わせてほしい」

私の現在時間は
あの事件から既に
十年以上経ってしまって
時間移動の壁に当たって
お兄ちゃんが元気だった頃に
戻れないから
会いたくても
会うことができない

「ひとめだけでも良いからお願いします 。私を一緒に連れていってくれませんか。時間の壁を越えさせてください」

過去に行けたら
元気な時の
お兄ちゃんに会いたい

四阿野原奈利子しあのはらなりこさん。お兄さんに会うと、 何かを伝えたいと思うのではありませんか。危険を回避させるようなことを。私も過去に戻って弁当屋の女将さんと話をしました。かなり踏み込んだ話です。それで何が変わったと思いますか」

「あの人はあなたのお陰で恨みを晴らせたじゃない。私だって感謝してる。私の過ごした未来世界では、奴らを探し出すことさえ困難だったから」

「弁当屋の女将さんの生活は変わりません。私が、別の歴史時間コースを作らないように努力したからです。私は、過去を変えるのではなく、あなたの来た未来世界と往き来して、彼らが処罰されるように仕向けたからです。それは、事件の起きた夜、もしも偶然に事件現場に遭遇したとしたら、私は必ず警察に通報したと思うからです」

通報して得られる結果を
彼らにもたらしたかった
その方法なら
ギリギリ自分を許せたんです

「奈利子さん。あなたが過去を変えないと約束するならこの本をお返しします。元々あなたのものですから……」

悩みながら応じた占い師に四阿野原奈利子が微笑む。



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