10 / 27
第2章 守銭奴の企み
利息と良心
しおりを挟む「三百万貸そうか」と言ったらケメコのパンダ目が閃光を放って即座に「お願いっ」と手を合わせ拝む。
高校在学中は返済期限一ヶ月で利息二十%の商いを営んでいた。と言っても元金が二千円以上五千円までの小商いだから利息だって四百円から千円まで。
五千円が一ヶ月で千円生むのだ。十人に貸せば一万円を生む。笑いが止まらない大影だったが、それでもケメコから取り立てるのは苦労した。
結局、利息だけで三千円も儲けたのだが、鬼だの悪魔だのと罵りながら嫌々返却するような借り手は歓迎しない。
ケーメー・ジェーンに「利息三十%」と言ったら金髪ジョージとふたりで「高いっ」とハモった。
勿論高い。百万以上の貸し付けに対する法定金利は十五%だ。明らかな違法だ。
「何をほざくか。連中からは五十%で借りておいて……じゃあ通常利息の二十%でいいや。期限は一年。でも、二十%でも一年で六十万だけど大丈夫か」
それでも法定金利より五%高い。通常利息なんてよくまあ法螺を吹くよな。
ケメコは「良かったぁ」と叫び、ジョージは「良心的だな」と綻ぶ。アホだ。
「盆暮れ正月には金が必要だろうから十ヵ月と考えて一月六万返済してくれれば……」
ジョージが頭を振る。
「俺、Fを辞めて実家のモータースを手伝いながら夜バイト探すつもりだけど、一月六万はきつい」
大影の目を見る。
(フム……チャラ男にしてはなかなか堅実なことを言う奴……)
大影は何だか嬉しくなった。金を貸すならこういう地道な奴に貸したい。
「私が借りるんだってばぁ。テイオーとは高校の同窓だからさぁ。またPサロで働くから心配ないってばぁ。ね、ジョージ」
ケメコの猫なで声が響く。
(そんなんだからお前は男で身を滅ぼすんだよ、ケーメー)と思ったが、大影は勿論、口にはしない。不用意な一言を一生覚えていられたりすると後が怖い。
三百万貸すのは良いが、二十%の利息分を先にもらうと手渡す金は二百四十万円になる。十万足りない。
そのことを伝えるとふたりは項垂れた。
「あのさ、僕は悪どい商売をするつもりはない。かと言って危うい商売をするなんてとんでもない。だから、特別に十五%にしてやるよ」
ふたりの目が輝く。
「十五%って一月いくら」
「一月、四万五千円。かけるの十ヵ月。年四十五万だ」
「よ、四万五千円なら何とか……」
「だからぁ、私がぁ……」
「いや、僕はジョージに貸したい。元々、手切れ金が必要だったのはジョージの方だろ」
昔からの知り合いみたいに気軽な調子で聞いた。
「まあ、そうしてもらえると俺も頑張って返す気概が出る」
(気概だとぉ……そんな言葉を知っているんならケーメーのようなちゃらんぽらんに口説かれるなよ。イケメンがもったいない。いや、その前に手切れ金二百万要求するようなヤバい女に手を出すな……)
「有り難う、テイオー」
「僕も良心的な商売ができて嬉しいよ」
何を良心と言うのか、この場合は法定金利に切り替えて当たり前の計算をしただけだ。十万以内なら二十%まで、百万以内なら十八%まで、百万を越える金額なら十五%までと法律で決まっている。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
前世が悪女の男は誰にも会いたくない
イケのタコ
BL
※注意 BLであり前世が女性です
ーーーやってしまった。
『もういい。お前の顔は見たくない』
旦那様から罵声は一度も吐かれる事はなく、静かに拒絶された。
前世は椿という名の悪女だったが普通の男子高校生として生活を送る赤橋 新(あかはし あらた)は、二度とそんのような事ないように、心を改めて清く生きようとしていた
しかし、前世からの因縁か、運命か。前世の時に結婚していた男、雪久(ゆきひさ)とどうしても会ってしまう
その運命を受け入れれば、待っているの惨めな人生だと確信した赤橋は雪久からどうにか逃げる事に決める
頑張って運命を回避しようとする話です
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる