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第2章 守銭奴の企み
契約
しおりを挟むユメミル商事のバイト君を始めてから、もしも社長が不渡りを出したらと気が気でなくて、もしもの為に五百万くらいを用済みの古い冷蔵庫を代用金庫にして準備している。
本来なら郵便貯金でも沖縄銀行とか琉球銀行とかでも利息が付くはずなのにだ。
テーブルに現金を並べると「流石、闇のテイオー」と、ケーメージェーンが拍手する。
「ジョージ、テイオーは優しい顔つきしているでしょう。でも、見てくれだけだから騙されないようにね。学校中に金貸していた悪どい奴だからね。気をつけてね」
現金が手に入ったらころりと罵る。折角、良心的なローンを組んでやったのに。
(こんなアホ女を連帯保証人にしたのは早計だったかもしれない。保証人の方が質が悪い……)
早速後悔する大影。苦笑いしながら借用書を認め、ジョージの拇印で割り印を捺してもらう。
大影は静かな声で「踏み倒すなよ」と、念を押した。
俺の、俺の話を聞けぇ……貸した金返せぇ……と、歌いたくなる。
ジョージはレディースキラーの笑顔を見せた。
これだな、この笑顔。これでヤバい女の人とかケーメーとかをモノにしたんだな。借金背負うことになるなんて、モテるのも考えものだ。
能天気ケーメージェーンは「テイオー怖あい。地獄の果てまで追いかけて絶対に取り立てるんだから……それで喧嘩も強くなったんだよね」
(女って、つまらないことにばかり精通している。得意気に喋ることではないのに。ジョージがとんでもなく強かったらいざというとき僕なんか……)
「まさかだろう」
ジョージが下からヤンキー目線で見上げる。
「まさかさあ。僕は今は無神論者だけど、いつかはクリスチャンになるつもりだから」
つい、口が滑ったふりをした。計算だ。神無しよりも無心論者が近い。
「へえぇ。テイオーがクリスチャン。それこそまさかさでしょ」
「だってお前ら追いかけて地獄に行くより……」
あ、地獄ってこの世にしかないんだっけ……
「なあにぃ。もしかしたらテイオー、天国に行きたい訳ぇ」
図星のような気がする。
しかし……死んだ人間はただ、土に帰って何も思わず安らかに眠るという。苦しみも悲しみもないと。
大影は長いこと忘れていたが、子供の頃は地獄を怖がった。
(クリスチャンだったお母さんが『地獄なんてないのよ』と優しく教えてくれたんだっけ……)
だから大影は安心して金儲けができる。
「あのさあ、テイオー。喧嘩する奴は天国には行けないんだよ」
ケーメージェーンは嬉しそうに言う。
「やっぱり喧嘩するんだ」
確かめるようなジョージの目線。割り印を捺した指先を、ティッシュで拭きながら答えを待っている。
ひ弱だった幼い頃に、父親が仕込んでくれた空手は、心身を鍛練するスポーツと言うよりも、借金を返済したくないばかりに大影を狙ってくる校内の不埒者に対する身の守りとなっていた。
その点では大影も、人を見る眼を養わなければ……と常々猛省しつつ、父親に感謝している。
必死で駆けずり回って返済を迫るのも、並みの根性ではできないことなのだ。お陰かどうか、見事に大学受験をスベった。
(僕の地獄はまだ温いけれど……金返せよ、必ず)
大影は苦笑いしながら手を振る。
「まさか、まさか。信用第一。僕は天国に行きたいから……まあ、これで契約成立だ。三百万、どうぞ……」
天国も地獄も目の前にある。
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