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第3章 タランテラの微笑み
やだよ、変態
しおりを挟むそれから少し眠って夢を見た。
オルゴールのローレライが流れている。
(秋月……古着屋の社長……剃刀親父とジョージ&ケーメージェーン……風営法違反とか未成年者保護法かな、金融法とか違反の坊っちゃんカズシゲと白薔薇のカクト……鈴レーザー……)
そのメンバーがその他大勢と共に大影を人生の大きな渦に巻き込んで、大影は懸命に足掻いていた。
秋月と一緒に逃げようとするも、秋月は二人いて、どっちが姉でどっちが玲二かわからない。
片手に金を掴んで空いている手は一つだけだ。二人のうち一人しか選べない。
(うわあああ。悪魔かああああ。毒蜘蛛が二人かぁあああ。どっちを選べばいいんだぁぁ)
どっちをって、手は玲二の方に延びているじゃないか。
(何で男の方なんだよおおお。秋月玲二。いつもグラドルの邪魔をしてイク時はお前だったんだけどさぁ、なんだばぁ)
出演料を払え。
夕飯を運んで来たのは玲二だった。黒の麻のジャケットがカッコいい。食事のワゴンを押している。
「具合はどう」
「ああ、大分良くなった」
「そりゃあ良かった」
雨は静かに窓の外で降り続いている。
ワゴンからベッド用テーブルの上に大影の膳を置き、秋月はパイプ椅子に腰かけてもうひとつの膳を膝に載せて手を合わせる。
「頂きます」
呆けて見ていると秋月は「どうしたんだよ」と不機嫌な顔つきになった。
(此方が聞きたい。やーやぬうやんばぁ、一体……勃起させる気か……)
「いや、お前も此処で食うのかなと」
誤魔化した。
「何だ、そんなことか。人をじろじろ見やがって。あんたが独りで寂しいだろうと思っただけだからさ。病室ってなあんもないから。ヒーロー、うちの飯は冷めると不味いから、早く食えよ」
「うん、好物ばかりだ」
頬っぺたを綻ばせる大影に「良かった」と秋月玲二も素直な笑顔を見せる。
(美形だよなぁ。生のグラドルだ……エロッ。でも、もしかしてこいつっていつも独りで冷めた飯食ってるとか……まさかなぁぁ。お姉さんの名前、聞いてなかった……)
「秋月、お前のCD買ったよ、全部」
「全部ったって、二枚しか出してないよ」
秋月玲二の天才の名を博したデビューアルバムと十六才で出したセカンドアルバムを大影はこっそり大切にしている。
「二枚しかって簡単に言うなよ。凄いやしが、お前」
大影が珍しく手放しで誉めた。
「来月末頃、日本でも新しいアルバムがでるんだ。買ってくれる」
お約束の左目の下。ゾクッとする。
「勿論。ファンだもの。早速予約しとかなきゃあ」
顔から目を反らす。
「ヒーローはピアノ続けているの」
「いや、とっくに諦めたよ。このジーマミー豆腐、でぇじ旨いな」
「スーパーで売っている」
秋月玲二が留学してから大影はピアノの前に座ることがなくなった。
「ピアノ勿体ない。あんなに弾けていたのに」
「イヤミか、それは」
冗談でチラリと睨んでも、秋月は真顔のまま頭を振った。
「まさかぁ、一生のライバルだと思っていたんだのに。今までカツレンヒロカゲみたいなタイプには出会ったことがないよ」
タイプと言うフレーズに反応して、こっそり咳をする。
「タイプって……どんなタイプなわけ」
何を言ってほしいのか、大影はニンジンシリシリに付けた箸をそのままに秋月の口元を見つめた。
「んんん、ピアノを玩具みたいに乱暴に弾く奴」
「げ……それって誉めてないんでない」
「誉めてんだよ。大胆だなぁって。ピアノがよく壊れないなぁって」
「おいコラ、やっぱり誉めてないやし。貶してんだろう」
壁ドンでもしたい気分。
「違うってば。誉めてるんだよ。とてもじゃないけど真似できないもんね」
けけけと笑う秋月の左目の下に軽く皺ができる。
(おおお……萌えエモっ)
「お前なぁぁ、ちょっとこっち来い」
「やだよ、変態」
恋人同士の痴話喧嘩みたいになって、大影と秋月は会話を楽しんでいる。
他のことは全部、夢物語みたいに。
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