18 / 128
第一章 復讐とカリギュラの恋
(17)ハビタにあげる
しおりを挟むジグヴァンゼラはハビタに約束した。
「僕がちゃんと食事できるようになったら、そして君が十四才になったら、僕たちは結婚しよう。僕は君が好きだよ」
「私も。ジグヴァンゼラ様が大好き。でも私は村娘だから、良いのかな、私を結婚相手に選んでも」
「僕が決めることだよ。ハビタがお嫁さんになってくれたら僕は元気になるよ」
ジグヴァンゼラにとって将来の明るい設計は特効薬になった。それは図らずもルネの望まない結果を示唆して、ルネは噂になっているジグヴァンゼラのお気に入りの少女ハビタを、ベッドに呼んだ。
領主ジグヴァンゼラが病弱で、実権を握ることのない生きる屍であれば、ルネは満足していたはずだった。
ルネは黒いマントを頭から被って、真夜中に、ハビタの亡骸をジグヴァンゼラのベッドに置いた。
「ジギー、お前の愛した者だ」
ハビタはぐったりして動かない。首に緩く紐が絡まっている。ジグヴァンゼラは急いで紐をほどいた。
身体を揺すって細い手を自分の頬に当てた。柔らかく小さな指先がジグヴァンゼラの頬から滑り落ちる。
ジグヴァンゼラはハビタの頬に手を当てた。髪の毛を撫でる。
ハビタ、眠っているの……
僕はハビタが起きるまで待つよ
一緒に寝よう
今夜からずっと……
「この者は死んだ」
「どうして……何故、死んだの……」
「わからないのか、ジギー。お前のせいだ。お前が愛する者を私も欲する。お前のせいでハビタは死んだ」
嘘だ、ハビタは死なない
死ぬ理由がない
ハビタ、起きて、目を覚まして……
ほら、やがて朝だよ
食事の時間だよ、ハビタ
僕は沢山食べるんだ
ハビタを喜ばせる為に
いっぱい食べるよ
どうして起きてくれないの
いつものように笑って
ハビタ、どうして動かないの
動きたくないの
どうして身体が冷たいの
明日は眼を覚ますよね
お話の続きはどうなったの
森の魔王の伝説のことだよ
今日は疲れているから
明日まで眠るんだよね
ハビタ……ハビタ……
応えない相手に話しかける。ルネは嗤って死神のように暗闇に消えた。
ジグヴァンゼラはハビタのか細い腕を自分の首に回そうとしたが、その腕はだらりと滑り落ちるだけ。涙がこぼれる。
朝になった。二人の間に食事のトレーを置いて、ハビタがしてくれたようにミルクに浸けたパンをハビタの唇に付ける。唇をミルクが流れる。ハビタは反応しない。
涙を拭きながら何度も試して、ハビタの口の中に柔らかいパンを押し込んだ。口づけする。ハビタが吐き出さないように軽く口づけして、泣いた。トレーを投げ出す。
拒食症で思考力の低下した頭でも、ハビタが目覚めないことを理解した。
翌日も、ハビタは目覚めなかった。
まだ12才の純真な少女の顔が、涙に咽ぶジグヴァンゼラの横で、生気を失って青白くくすんでいく。身体も人形のように硬くなった。
夜中、再び黒マントのルネがやって来て、ジグヴァンゼラのベッドからハビタの亡骸を奪って行った。
「お前が愛する者を私も欲する」
ジグヴァンゼラは死神の言葉を恐れた。
ハビタは僕が愛したから
死神に狙われたのか
酷い……神様……
ああ、僕は神様を蔑ろにしてきた
だから死神に狙われても
守ってもらえなかったんだ
ジグヴァンゼラは食事が喉につかえて、上手く飲み込めない。ハビタにたくさん食べて見せたかったのに、お腹が空かない。泣いて、涙も枯れて、疲れ果てた。
ハビタの代わりに綺麗な少年が来た。少年はジグヴァンゼラより少し年上で、ルネの洗練を受けて、ジグヴァンゼラにもその様に接した。
ジグヴァンゼラは少年と肉体関係を持って、ハビタを失った悲しみが穢れていくのを感じた。
ハビタを抱き締めたい
結婚の約束をしたよ
大人になってハビタと結婚して
笑顔で暮らすんだ
ハビタ、生き返って……
僕の心臓をハビタにあげるよ
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる