105 / 128
第三章 純愛と天使と悪霊
(96)命拾い
しおりを挟むシアノは裸のヴェルナールが男に抱き抱えられて来たことに驚いた。
「旦那様……」
「ううん……」
返事はある。冷えきった身体が震え始めた。シアノは、手にした白い厚手のリネンを手早くヴェルナールの身体に巻く。ダネイロは、自分の濡れた衣服の水分がリネンを湿らせてしまうと考えて、ヴェルナールを地面に下ろした。
ヴェルナールはシーツで巻かれシアノに凭れて崩れそうな様子で立つ。
「失礼します」
ダネイロは広袖シャツを脱いで絞った。水がダバダバと落ちる。それを再び身に付けて後ろ向きになり、ズボンや下着も同じよう素早く絞る。
シアノは月明かりで目にしたダネイロの鍛え上げ筋肉質の身体に「兵士の方ですよね。確か、ダネイロさん」と名前を言い当てた。
ダネイロは驚いた。大勢いる兵士の中から間違いなく自分を見分け、名前を言い当てたシアノに喜びを感じる。ヴェルナールを抱き止めているシアノの前に、片膝を付いて傅いた。
悪霊はダネイロに囁いた。
ダネイロ、ダネイロ
何故、傅く
それも領主にではなく執事長シアノに
「はい、私はダネイロと申します。ザカリー家にお仕えする兵士のひとりです。お手伝いできることがあれば何なりとお申し付けください」
騎士が誓約を込めるような口調だ。シアノは驚いたが、険のない微笑みを見せた。
「では、この馬で旦那様を館にお連れしてもらいたいのですが」
「畏まりました」
悪霊は、水車小屋の二人には勿論、ダネイロの前にも現れないことにした。その方が悪霊の存在の証明の為にモーナス、レネッティ、ダネイロの三人が計画したことを、無為に帰することができるからだ。
悪霊は馬に乗って立ち去るダネイロを見た。ダネイロは馬具を取り外してヴェルナールを自分の前に横座りにさせてから、シアノの腕を馬上から軽々と引っ張り上げて後ろに乗せた。シアノの腕を自分の身体に回す。
「しっかり掴まってください」
ダネイロは「はいやっ」と馬に声を掛けて軽く腹を蹴り、馬は小走りに駆け出して川縁から離れた。それから、月明かりの中を、館を目指して疾走する。
ヴェルナールを殺すのは暫く待とう
お前たちの今後に興味が湧いたからな
忌々しいが楽しみでもある
しかし、ノエビアと娼婦の悪巧みを
ダネイロは見破ることができるか
悪霊はパブッチヨに姿を変えた。肩に腹を切り裂かれて腸を引きずり出したメナリー夫人を抱えている。
その姿で木陰に入り、間を置かずしてリトワールの姿で出てきた。月明かりがリトワールの美しい作りの顔を透明にしてゆく。
リトワールの姿が消えた場所から少し離れて、ルネの背の高い金髪の頭が現れ黒マントを広げた。黒マントを翼のようにはためかせて悪霊は二、三のステップを踏む。
そのうちに黒髪のジグヴァンゼラに変貌した。黒い翼で身体を包む。鋭い眼光が館に急ぐ馬上の三人を捉えた。
ふん、ダネイロめ
お前のせいで台無しだ
歴史上の英雄譚は讃える
自ら主を決める者
自ら道を切り開くと
何とも不敵で不快な奴だ
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる