50 / 128
第二章 カリギュラ暗殺
(42) 愛
しおりを挟むリトワールは甲に刺繍のある白い手袋を眺めた。
ヘシャス・ジャンヌ様が
私のために
自ら刺してくださった
ザカリアン・ローザの紋章
美しいけれど
グロテスクな印象を与える
この紋章が私には重い
花冠のように
輪になった白薔薇に
二本の剣がクロスして
三つの目がある
左右横並びのひとつが
王公貴族や民衆など
貴賤を問わず
他人の目を表す
同列のもうひとつは
自分本人の目
そして
頂点の目は神の目で
その真下の「R」が
私のイニシャル
領主家に代々伝わる紋章に
私のイニシャルを
入れてくださった
古い家系図は失われ
ザカリー家の初代は
何処からの民なのか
わかってはいない
ただ
分を越えた望みは身を滅ぼす
という意味の『正義の次男』
諺にもなったその
伝説の次男は
ザカリー家の歴史上
実在する人物だ
伝説の次男に嫁いだ
アントローサの娘は
髪の毛も睫も白銀に輝く
希なる美女だったという
その美女の名前は
白いドラゴンを意味する
ラナンタータ
単に美しいだけでなく
聡明で優しい聖女
という記述もある
ヘシャス・ジャンヌ様……
伝説のラナンタータと同じ
白薔薇のドラゴン
私が気になるのは
ラナンタータの実の姉の
オゥランドゥーラ
赤毛で緑色の目という
オゥランドゥーラ
秋に色づく野山の
実りと艶やかさ
手足のない長男の嫁として
自ら進んで嫁いできた
彼女の直系子孫が
ジグヴァンゼラ様
今や大公家であるアントローサ家の血は、縄をなうようにザカリー家に絡む。
伝説の長男の明晰な頭脳と次男の行動力は、アントローサ家の姉妹、姉のオゥランドゥーラと妹ラナンタータによって子孫へと受け継がれ、国政を築く貴重な人材を排出する家系となってゆく。
有難い絆だ
ルネ討伐には
アントローサ家との
絆で救われた
手袋から視線をはずし、執務に精を出すジグヴァンゼラの横顔を眺めてこっそり溜め息をつく。
ルネの犠牲にならなければ
ジグヴァンゼラ様は
私を愛することなど
なかったはずだから
あざなえる縄の如く善悪は表裏一体、物事の見方はどのようにも変わる。ルネの蛮行は当然打ち砕かれるべきものとしても、リトワールには、また感慨深い事柄としての現在がある。
ああ、神よ……
あなたには
畏怖の念を覚えます
どん底の暗闇の中から
私を立ち上がらせ
光を与えてくださった
あなたの愛を私は知りました
私の生ける光
ジグヴァンゼラ様を
私の生きる喜びは
命尽き果てるまで
ジグヴァンゼラ様の
お側で共に笑い
寄り添えること
このことの他に
何も望むことはなく
私は既に満たされて
不足はありません
絶望の暗闇から
光を見いだすことができました
私には私の人生は十分なのです
そこでリトワールは項垂れ俯く。
それでも
私には子が生めない
常にその点に行き着く
領主であるジグヴァンゼラ様には
跡継ぎが必要だというのに
ハビタが生きていれば……
リトワールは再び手袋に視線を落とす。
この紋章のなんと重いことか
他人の目に
私はどのような者でありたいか
自分の目に
私はどのような者であるべきか
神の目に
私はどのような者であるのか
私とはどのような者か
本来ならジグヴァンゼラ様は
女性を愛していたかもしれない
妻を愛する夫
子を愛する父親
私は……
できることなら
オゥランドゥーラのような
女性として出会いたかった
願っても叶えられないこと
分を弁えるまでもなく
望むことすらできないこと
リトワールは項垂れたまま黙した。
リトワール……
光の粒が天から降る。
神の世では死人は甦る
そして甦った者は
誰にも嫁がず娶らない
そこにはルネのような者は
ひとりもいない
あなたは
私たちと同じ
天使のような者になる
空は静かに高く、虹の色を含んで青く輝く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる