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第4章 一緒に世界を変えよう
(5)天涯孤独
しおりを挟むキーツ・ナージはヴァルラケラピスに繋がる情報を引き出せなかったが、重要な周辺情報の幾つかを語らせることに成功した。
「セラ・カポネの7人会対抗戦略のひとつとして、中国古物の詐欺をやっていると言うのか」
「そうだ。古物の持ち主から品物を預かり、龍花に高く売り付けて持ち主には低価格だったと嘯くのさ。龍花にとっては店の評判に関わる一大事だが、手数料詐欺はチンピラの凌ぎにしてはかなりの金が動くからな」
ジャポネ円にして数千万の金はいつでも動かせる龍花は、格好のカモには違いない。
「成る程……セラ・カポネはその凌ぎで大金をせしめ、金の力で幅を利かせて組織を受け継ぐことができたというわけか」
「まあ、それには、ボナペティでの銃撃戦も……お宅らがうちの若頭を刑務所送りにしてくれたもんでな、セラ・カポネは笑いが止まらないだろうよ」
ケインズ・ファミーユのレストラン・ボナペティで、ジェイコバが死んだ銃撃戦のことだ。
ジェイコバは希代の殺人鬼イサドラ・ナリスの信望者だったが、ボナペティで撃ち殺された。
「へぇ、あの事件で送検されたパパキノシタの若頭か。今、もし、いたとしたら……どうなっていたと思う」
「そりゃ、今頃セラ・カポネは煮え湯を飲まされていただろうな……」
若頭不在も、パパキノシタの組織がカポネズ・ファミーユへスムーズに転換できた要因となった。
「若頭も詐欺事件に関わりがあるのか」
「とんでもない。俺たちは地元最大の組織パパキノシタの組の者だ。パパキノシタが仁義と任侠という美徳を重んじるジャポネヤクザで、俺たちにも『義理を欠くな、人情を欠くな』と教え込んでくれたよ」
「何が義理人情だ、笑わせるな。お前らはアルビノを狙ったじゃないか」
「つい、な。つい、だよ。セラ・カポネに勝ちたくてさ、焦ったんだ。上納金がほしかったんだ。死期を迎えているパパキノシタに認められたくて……」
「じゃあ、ロンホアの件だって」
「まぁ、待て。話してやるよ、天涯孤独さん。
ロンホアは、俺たちパパキノシタ組が街の平和に貢献していることを知っている。それで、パパキノシタ組を信頼して、古物を集める情報源として繋がりを持ったのさ。
それを、あの若造が、セラ・カポネが、若頭の不在をいいことにロンホアの信頼を裏切ったんだよ。
お前たち警察は偉そうな顔をしているけどな、詐欺師のセラ・カポネを叩きのめすことができなければとんだ笑い者だよ」
「笑い者か……ロンホアは若頭のオンナなのか」
「いや、知らない。しかし、事件は起きるさ。頑張れよ、天涯孤独」
報告を聞いたアントローサは早速、腹心の部下ゴヅィーレ警部に指示を出す。ゴヅィーレ警部はキーツ・ナージに満面の笑みを向けた。
「キーツ、よくやった。皆、手分けしてパメラという女の消息を掴め。それとセラ・カポネの台頭に纏わる裏を取れ。キーツ、お前は古物商の中国女を張れ」
火を吹く恐竜と揶揄されるゴヅィーレの笑みに戦々恐々としながら、キーツが確認する。
「ゴヅィーレ警部、ロンホァチャイナのオーナーは若い中国人女性で、詐欺事件の被害者ですよ。見張るんですか」
「本人からセラ・カポネを通した元の持ち主を聞き出しても、その持ち主が幽霊なら意味がないだろう。商売の邪魔にならないように動け。怪しい奴は引っ張れ」
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