毒舌アルビノ・ラナンタータの事件簿

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

文字の大きさ
40 / 165
第3章 ブガッティの女、猛烈に愛しているぜ

(11)俺様をこんな気持ちにさせるなんてお前ってば罪な奴

しおりを挟む

「お宅ら、何ていうの。名前。何処の組織。教えてくれたら貴重な銃弾お見舞いするのを止めてあげても良いのよねぇ。ね、ラナ……」


ラナンタータが男の脛を蹴った。


「はよ吐けっ」


後ろで意識を取り戻した男が呻く。カナンデラが振り返り様、素早く銃底でこめかみを打って、再び寝かし付けた。其れから股間に戻る。


「おっと、ヤバい。思わず撃つ処だった」

「言うっ。言うよ……言うからっ」


ラルポアが手を離してその手を洗う。

観念した男は肩を落とした。


「俺たちはキノシタ組の者だ。ヴァルラケラピスのにえの調達係りを知っている。それだけだ」


男は吐き捨てるように言った。


「はぁあ……何故、キノシタ組がヴァルラケラピスに手を貸す」


キノシタ組はシャンタンの傘下の中でも力を持った組織だ。人口50万を越える地方都市の中で、200人を越す構成員を抱える組織はキノシタ組だけだ。


「パパキノシタは知らない。俺たちの単独だ」


「マジか。俺ぁパパキノシタを知っている。おフランスからの流れ者で極道界のサムライだ。お前らさぁ、ラナンタータがパパキノシタのお気に入りだって知ってたぁ。最近遊びに行かなかったけどね、このアルビノ、警部の娘だから、パパキノシタと仲良しなの」

「カナンデラ。誤解を生むようなことを言うな。私の父はマフィアと繋がったりしない」

「そうね、そうね。でもね、ラナンタータ。パパキノシタはこいつらを殺してもあんたを守る。そんなサムライだからあんたもパパキノシタを慕っていたのよね。と、言うことだからさぁ、お前ら、他に何か言うことがあれば素直に吐け」

「す、済まん。ヴァルラケラピスにはもう連絡した。此処に来るはずだ」

「ヴァルラケラピスと連絡取れるのか。どうやって連絡する。贄の調達係とは何者だ」

「そ、其れは国境付近の……」

「ウタマロよ」


ギャルソンが現れた。ギャルソンはラナンタータを見て口を手で押さえた。


「あら嫌だ。こんな処にいるからお仲間かと思ったわ。此処は男子トイレよ。女子は向こう。ふぅ、お片付けが大変な感じ」

「ウタマロって何だ」

「ムッシュー、ふふふ。ウタマロは地下のショーパブよ。異世界との境界付近にあるわ。此処から車で30分も走れば……」

「有り難う。此の次はチップを弾むよ」

「あらあ、いけず。今弾んで」


ハグする。ラルポアがラナンタータを引っ張ってトイレの外に出た。目の端にカナンデラがギャルソンの腰を抱くのが見えた。


「あのね、ボクちゃんお金あんまし持ってないんだけどね」

「何を都合の良いこと言ってんのよ、探偵さん」


ラルポアがふっと笑って真面目な顔になる。


「ラナンタータ、そこの厨房から外に出て。十三世を回すから、それまで路地に隠れていて。ラナンタータならできるよね、大丈夫かい」

「大丈夫。アホンタレはどうする」

「置いてきぼり食わせても僕たちを撃ち殺しはしないさ。僕は見届けてから駐車場に行くから」

ラナンタータは厨房のドアを開けた。白服のスタッフが忙しそうに動いている。誰もラナンタータに注意を払わなかった。

狭い木立を抜けるように身体を斜めにしながら厨房スタッフの間をくぐり抜け、勝手口らしきドアに向かう。


「お客様、食い逃げは困りますよ」

「男に追われているの。助けて」

「ああ、君は可愛いからね。其処は左手は危険な道だ。右手からなら大通りに出られるよ」

「メルシー有り難う」

「ドゥリアン、どういたしまして」


ラナンタータが勝手口のドアを開けると、チャイナドレスの女が艶っぽく笑っていた。



カナンデラはギャルソンの腰に手を回して名前を聞いた。


「アランよ」


下半身が密着している。


「アラン、厨房のセナルを知っているかい」

「あら、さっきも同じことを聞かれたわ。知っているわよ。今日はもう帰ったけどね」

「何だって。誰に聞かれた」

「警察官には見えなかった。多分、シャンタンの手下かも」

「何でシャンタンが動くんだ」

「お飾りが直接指示したのではないと思う。だってあれでしょ、7人会があるじゃない」

「7人会に牛耳られているのか、可哀想になぁ。若いって難儀だなぁ。で、誰だと思う、その男の組は……」

「割と名の売れた奴だけど何ったっけ」

「チップな、チップ」


カナンデラは財布を取り出すと、イサドラから貰った紙幣のうち1枚を見せびらかした。


「あら、お金ないんじゃなかった。ありがと。足を引き摺っていたけどね、その男……」


もう一枚引き出す。

アランはついと指先でその紙幣を抜き取った。


「奴はね、Jっていうのよ。多分、フリーのパシリよ」

「Jね。聞かない名前だなぁ。」

「そりゃ、ここら辺はシャンタン会長の縄張りだからね、好き勝手にできないわよ。こいつら、離してあげて」


床に転がっている男はまだ目覚めない。後ろ手に縛られた男がぼそりと呟く。


「Jは田舎に帰ったはずだ。何で今頃っ」

「あら、キノシタ組でもJのことを知っているの」

「知り合いではないが、パパキノシタから店を一軒買い取った男の同郷だとか何だとか、噂だ」

「詳しく聞きたいなぁ、その話。俺様をこんな気持ちにさせるなんて、お前ってば罪な奴」


カナンデラは男のイチモツをぐっと握って左右に振った。男は驚愕に身を捩る。


「ええっ、私じゃあないの」


アランが膨れた。


「お前さん、まだ付いてるの、此れ」

「いやあん。今は駄目よ。今度教えてあげるわよ」

「ううっ、離せ。奴のことはJとしか知らない」

「お前は偉いなぁぁ。こいつと違ってチップをねだらないもんな」

「うぎゃあぁ」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...