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第3章 ブガッティの女、猛烈に愛しているぜ
(11)俺様をこんな気持ちにさせるなんてお前ってば罪な奴
しおりを挟む「お宅ら、何ていうの。名前。何処の組織。教えてくれたら貴重な銃弾お見舞いするのを止めてあげても良いのよねぇ。ね、ラナ……」
ラナンタータが男の脛を蹴った。
「はよ吐けっ」
後ろで意識を取り戻した男が呻く。カナンデラが振り返り様、素早く銃底でこめかみを打って、再び寝かし付けた。其れから股間に戻る。
「おっと、ヤバい。思わず撃つ処だった」
「言うっ。言うよ……言うからっ」
ラルポアが手を離してその手を洗う。
観念した男は肩を落とした。
「俺たちはキノシタ組の者だ。ヴァルラケラピスの贄の調達係りを知っている。それだけだ」
男は吐き捨てるように言った。
「はぁあ……何故、キノシタ組がヴァルラケラピスに手を貸す」
キノシタ組はシャンタンの傘下の中でも力を持った組織だ。人口50万を越える地方都市の中で、200人を越す構成員を抱える組織はキノシタ組だけだ。
「パパキノシタは知らない。俺たちの単独だ」
「マジか。俺ぁパパキノシタを知っている。おフランスからの流れ者で極道界のサムライだ。お前らさぁ、ラナンタータがパパキノシタのお気に入りだって知ってたぁ。最近遊びに行かなかったけどね、このアルビノ、警部の娘だから、パパキノシタと仲良しなの」
「カナンデラ。誤解を生むようなことを言うな。私の父はマフィアと繋がったりしない」
「そうね、そうね。でもね、ラナンタータ。パパキノシタはこいつらを殺してもあんたを守る。そんなサムライだからあんたもパパキノシタを慕っていたのよね。と、言うことだからさぁ、お前ら、他に何か言うことがあれば素直に吐け」
「す、済まん。ヴァルラケラピスにはもう連絡した。此処に来るはずだ」
「ヴァルラケラピスと連絡取れるのか。どうやって連絡する。贄の調達係とは何者だ」
「そ、其れは国境付近の……」
「ウタマロよ」
ギャルソンが現れた。ギャルソンはラナンタータを見て口を手で押さえた。
「あら嫌だ。こんな処にいるからお仲間かと思ったわ。此処は男子トイレよ。女子は向こう。ふぅ、お片付けが大変な感じ」
「ウタマロって何だ」
「ムッシュー、ふふふ。ウタマロは地下のショーパブよ。異世界との境界付近にあるわ。此処から車で30分も走れば……」
「有り難う。此の次はチップを弾むよ」
「あらあ、いけず。今弾んで」
ハグする。ラルポアがラナンタータを引っ張ってトイレの外に出た。目の端にカナンデラがギャルソンの腰を抱くのが見えた。
「あのね、ボクちゃんお金あんまし持ってないんだけどね」
「何を都合の良いこと言ってんのよ、探偵さん」
ラルポアがふっと笑って真面目な顔になる。
「ラナンタータ、そこの厨房から外に出て。十三世を回すから、それまで路地に隠れていて。ラナンタータならできるよね、大丈夫かい」
「大丈夫。アホンタレはどうする」
「置いてきぼり食わせても僕たちを撃ち殺しはしないさ。僕は見届けてから駐車場に行くから」
ラナンタータは厨房のドアを開けた。白服のスタッフが忙しそうに動いている。誰もラナンタータに注意を払わなかった。
狭い木立を抜けるように身体を斜めにしながら厨房スタッフの間をくぐり抜け、勝手口らしきドアに向かう。
「お客様、食い逃げは困りますよ」
「男に追われているの。助けて」
「ああ、君は可愛いからね。其処は左手は危険な道だ。右手からなら大通りに出られるよ」
「メルシー有り難う」
「ドゥリアン、どういたしまして」
ラナンタータが勝手口のドアを開けると、チャイナドレスの女が艶っぽく笑っていた。
カナンデラはギャルソンの腰に手を回して名前を聞いた。
「アランよ」
下半身が密着している。
「アラン、厨房のセナルを知っているかい」
「あら、さっきも同じことを聞かれたわ。知っているわよ。今日はもう帰ったけどね」
「何だって。誰に聞かれた」
「警察官には見えなかった。多分、シャンタンの手下かも」
「何でシャンタンが動くんだ」
「お飾りが直接指示したのではないと思う。だってあれでしょ、7人会があるじゃない」
「7人会に牛耳られているのか、可哀想になぁ。若いって難儀だなぁ。で、誰だと思う、その男の組は……」
「割と名の売れた奴だけど何ったっけ」
「チップな、チップ」
カナンデラは財布を取り出すと、イサドラから貰った紙幣のうち1枚を見せびらかした。
「あら、お金ないんじゃなかった。ありがと。足を引き摺っていたけどね、その男……」
もう一枚引き出す。
アランはついと指先でその紙幣を抜き取った。
「奴はね、Jっていうのよ。多分、フリーのパシリよ」
「Jね。聞かない名前だなぁ。」
「そりゃ、ここら辺はシャンタン会長の縄張りだからね、好き勝手にできないわよ。こいつら、離してあげて」
床に転がっている男はまだ目覚めない。後ろ手に縛られた男がぼそりと呟く。
「Jは田舎に帰ったはずだ。何で今頃っ」
「あら、キノシタ組でもJのことを知っているの」
「知り合いではないが、パパキノシタから店を一軒買い取った男の同郷だとか何だとか、噂だ」
「詳しく聞きたいなぁ、その話。俺様をこんな気持ちにさせるなんて、お前ってば罪な奴」
カナンデラは男のイチモツをぐっと握って左右に振った。男は驚愕に身を捩る。
「ええっ、私じゃあないの」
アランが膨れた。
「お前さん、まだ付いてるの、此れ」
「いやあん。今は駄目よ。今度教えてあげるわよ」
「ううっ、離せ。奴のことはJとしか知らない」
「お前は偉いなぁぁ。こいつと違ってチップをねだらないもんな」
「うぎゃあぁ」
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