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第5章 婚前交渉ヤバ過ぎる
(22)ポンテンカス
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「あんな連れ出し方って子供扱いだよね」
「僕は本来ならもう少しスマートに促せたけど、言い訳はよす」
「でも、何でわかったの」
イスパノスイザのアルフォンソ13世が風を切る。
「シャンタンの手下がルノーに乗る君を見たらしい。カナンデラ所長から連絡が来た。デカタンス・ジョークだとピンときた。もう少し遅かったら探せない処へ連れていかれる処だった」
「何で私がローランの別荘に行くと思うの。お友達になったばかりなのに」
「その……女の人は一目惚れする大胆な生き物だから、もしかしたらラナンタータも直ぐにその……」
「ラルポアはたまたま大胆なタイプに一目惚れされてばかりでそう思い込んでいるだけよね」
「待って、ラナンタータ。子供が……」
暗い夜道のガス灯の届かない建物の角に、小さな白いものが動く。イスパノスイザがゆっくり停まる。ヨチヨチ歩きの子供だ。息が白い。
「待ってて」
ラルポアがコンパーチブルの屋根を下ろし、車体の側面を跨いで下りた。子供はびくついたが、優しく微笑んで抱き上げるとラルポアの頬に自分の頬を寄せた。寒さに震えている。
「かなり冷えている」
ラナンタータの腕に移った子供は、抱っこされた胸の辺りで小さなくしゃみをした。ラルポアが急いで屋根を立てる。
「警察に」
「嫌だ、ラルポア。警察に行ったら門限破りがバレる。嫌だ、外出禁止は嫌だ」
「覚悟してたんじゃないのか」
ラルポアはラナンタータを無視して警察に向かった。
ゼノリアの息子、一歳半のミシェルレイは捜索届けが出ていた。母親のゼノリアがラナンタータの抱いている子供を見て駆け寄る。
「ミシェルレイ。無事だったのね。ナニーは、ナニーはどうしたの」
直ぐに殺傷死体発見の電話が鳴る。ブルンチャスがミシェルレイを抱き抱えたゼノリアに言った。
「ゼノリアさん、思い当たることを全て話してくれるまで、此処から帰れませんよ。それからお嬢様方、お父様がいらっしゃいますから……」
一端帰宅した警視総監が着替えもそこそこにやって来た。ラナンタータはアントローサの言葉を遮る。
「お父様、ラルポアは悪くないの。私が無理に」
「わかっている、ラナンタータ。お前がラルポアを庇う気持ちは十分わかっているよ、ラナンタータ。お前は可愛い娘だ。どんな願いも叶えてやりたい。二人一緒なら、もう門限を気にしないで良い。お前も大人なんだから卒業した時点でそうすべきだったかもしれない。ラルポア、ラナンタータのことは君に一任する。私の愛娘を宜しく頼むよ」
アントローサは笑顔でラルポアと握手を交わした。
ラルポアは面食らって微笑みが痙攣る。ラナンタータのどや顔でひくひく痙攣るのと同じ痙攣だが、気持ちにはだいぶズレがある。
一課に電話が入った。
ジョスリン組のビルが爆破されたと刑事部屋が騒がしくなり、アントローサ総監の下でゴツィーレ警部が陣頭指揮を取る。
「お前たちは帰りなさい。私は現場に行く。帰りは何時になるかわからない。ラナンタータ、もう無茶な真似はやめるんだ。任せたぞ、ラルポア」
カナンデラはトレンチコートに腕を通しながら歩く。
「シャンタン、遅くなる。先に安め。手下を借りるぞ」
ツェルシュが手配した車と黒服の軍団が駐車場にずらりと並ぶ。
「30人……こんなに要らん。3人で十分だ」
気になっていたジョスリン組で
再びビル爆破とは
5年前の事件を彷彿とさせるじゃないか。
グァルヴファイレスの残党か。
何処かに根城が出来たか
誰か、爆破の技術を持っている奴が
5年ぶりに復活した訳だ。
そいつは誰だ。
何者だ……
「ラルポア、これは……」
走り出したイスパノスイザの座席から一通の封筒を拾った。
「あのミシェルレイが持っていたのかな。気づかなかったけど」
「多分、そうよ。あ、犯行予告だ。ゼノリアが自白しない限り、ジョスリン組のシマを爆破してミシェルレイを……自白って……」
「僕たちも現場に行こう。アントローサ総監に渡すんだ」
爆破されたビルの周辺には人だかりができていた。
「こんなものでは終わらないぞ、ゼノリア。ジョスリンはアルビノの送迎を護衛していた。あの山で殺人を行えるのはお前だ、ゼノリア。お前との血で血を洗う戦いに勝って、必ず親父の復讐を果たす」
男は軽くくしゃみをした。
その目の前にフォードが停まる。
人だかりを囲むように黒いフォードがずらりと並ぶ。その一台からカナンデラが下り、黒服の軍団が人だかりに割って入る。騒ぎが起きた。
数人の男を捕らえた黒服たちがフォードに押し入れようとした時、アントローサ総監の声が飛んだ。
「カナンデラ、獲物を寄越せ」
くしゃみ男が腕をほどこうと振り回す。黒服マフィアと警察官が協力して男を押さえる。
「お前、見た顔だ。グァルヴファイレスの息子か。ラナンタータ誘拐に失敗した奴」
カナンデラが訊く。
「ダンディー探偵か。お前から先に仕留めておくべきだった」
「自白同然だなぁ、ポンテンカス。お前の脳ミソじゃあバカの一つ覚えのビル爆破するしかないんだな」
「俺の技術は世界最高峰だ」
「しかしこの爆破は失敗だよな、最高峰」
「何を。4ヶ所同時爆破させたんだぞ。それの何処が失敗だ」
「わははは、ポンテンカス。自白したな」
「でかした、ザカリー。刑事に戻れ」
ブルンチャスが微笑む。
「僕は本来ならもう少しスマートに促せたけど、言い訳はよす」
「でも、何でわかったの」
イスパノスイザのアルフォンソ13世が風を切る。
「シャンタンの手下がルノーに乗る君を見たらしい。カナンデラ所長から連絡が来た。デカタンス・ジョークだとピンときた。もう少し遅かったら探せない処へ連れていかれる処だった」
「何で私がローランの別荘に行くと思うの。お友達になったばかりなのに」
「その……女の人は一目惚れする大胆な生き物だから、もしかしたらラナンタータも直ぐにその……」
「ラルポアはたまたま大胆なタイプに一目惚れされてばかりでそう思い込んでいるだけよね」
「待って、ラナンタータ。子供が……」
暗い夜道のガス灯の届かない建物の角に、小さな白いものが動く。イスパノスイザがゆっくり停まる。ヨチヨチ歩きの子供だ。息が白い。
「待ってて」
ラルポアがコンパーチブルの屋根を下ろし、車体の側面を跨いで下りた。子供はびくついたが、優しく微笑んで抱き上げるとラルポアの頬に自分の頬を寄せた。寒さに震えている。
「かなり冷えている」
ラナンタータの腕に移った子供は、抱っこされた胸の辺りで小さなくしゃみをした。ラルポアが急いで屋根を立てる。
「警察に」
「嫌だ、ラルポア。警察に行ったら門限破りがバレる。嫌だ、外出禁止は嫌だ」
「覚悟してたんじゃないのか」
ラルポアはラナンタータを無視して警察に向かった。
ゼノリアの息子、一歳半のミシェルレイは捜索届けが出ていた。母親のゼノリアがラナンタータの抱いている子供を見て駆け寄る。
「ミシェルレイ。無事だったのね。ナニーは、ナニーはどうしたの」
直ぐに殺傷死体発見の電話が鳴る。ブルンチャスがミシェルレイを抱き抱えたゼノリアに言った。
「ゼノリアさん、思い当たることを全て話してくれるまで、此処から帰れませんよ。それからお嬢様方、お父様がいらっしゃいますから……」
一端帰宅した警視総監が着替えもそこそこにやって来た。ラナンタータはアントローサの言葉を遮る。
「お父様、ラルポアは悪くないの。私が無理に」
「わかっている、ラナンタータ。お前がラルポアを庇う気持ちは十分わかっているよ、ラナンタータ。お前は可愛い娘だ。どんな願いも叶えてやりたい。二人一緒なら、もう門限を気にしないで良い。お前も大人なんだから卒業した時点でそうすべきだったかもしれない。ラルポア、ラナンタータのことは君に一任する。私の愛娘を宜しく頼むよ」
アントローサは笑顔でラルポアと握手を交わした。
ラルポアは面食らって微笑みが痙攣る。ラナンタータのどや顔でひくひく痙攣るのと同じ痙攣だが、気持ちにはだいぶズレがある。
一課に電話が入った。
ジョスリン組のビルが爆破されたと刑事部屋が騒がしくなり、アントローサ総監の下でゴツィーレ警部が陣頭指揮を取る。
「お前たちは帰りなさい。私は現場に行く。帰りは何時になるかわからない。ラナンタータ、もう無茶な真似はやめるんだ。任せたぞ、ラルポア」
カナンデラはトレンチコートに腕を通しながら歩く。
「シャンタン、遅くなる。先に安め。手下を借りるぞ」
ツェルシュが手配した車と黒服の軍団が駐車場にずらりと並ぶ。
「30人……こんなに要らん。3人で十分だ」
気になっていたジョスリン組で
再びビル爆破とは
5年前の事件を彷彿とさせるじゃないか。
グァルヴファイレスの残党か。
何処かに根城が出来たか
誰か、爆破の技術を持っている奴が
5年ぶりに復活した訳だ。
そいつは誰だ。
何者だ……
「ラルポア、これは……」
走り出したイスパノスイザの座席から一通の封筒を拾った。
「あのミシェルレイが持っていたのかな。気づかなかったけど」
「多分、そうよ。あ、犯行予告だ。ゼノリアが自白しない限り、ジョスリン組のシマを爆破してミシェルレイを……自白って……」
「僕たちも現場に行こう。アントローサ総監に渡すんだ」
爆破されたビルの周辺には人だかりができていた。
「こんなものでは終わらないぞ、ゼノリア。ジョスリンはアルビノの送迎を護衛していた。あの山で殺人を行えるのはお前だ、ゼノリア。お前との血で血を洗う戦いに勝って、必ず親父の復讐を果たす」
男は軽くくしゃみをした。
その目の前にフォードが停まる。
人だかりを囲むように黒いフォードがずらりと並ぶ。その一台からカナンデラが下り、黒服の軍団が人だかりに割って入る。騒ぎが起きた。
数人の男を捕らえた黒服たちがフォードに押し入れようとした時、アントローサ総監の声が飛んだ。
「カナンデラ、獲物を寄越せ」
くしゃみ男が腕をほどこうと振り回す。黒服マフィアと警察官が協力して男を押さえる。
「お前、見た顔だ。グァルヴファイレスの息子か。ラナンタータ誘拐に失敗した奴」
カナンデラが訊く。
「ダンディー探偵か。お前から先に仕留めておくべきだった」
「自白同然だなぁ、ポンテンカス。お前の脳ミソじゃあバカの一つ覚えのビル爆破するしかないんだな」
「俺の技術は世界最高峰だ」
「しかしこの爆破は失敗だよな、最高峰」
「何を。4ヶ所同時爆破させたんだぞ。それの何処が失敗だ」
「わははは、ポンテンカス。自白したな」
「でかした、ザカリー。刑事に戻れ」
ブルンチャスが微笑む。
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