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60 溺愛して
しおりを挟む(波流君、チョコは元気)
(あのさ、話がある)
言いにくいけれど、お母さんの言う通り正直に話してみようか。僕も、もし、チョコちゃんに秘密を持たれたら疑って死ぬかも。
いや、死なないまでも、苦しむ。
(嫌)
(え、嫌)
(話なんて聞かない)
え、何で……もしかしてカリナちゃんから聞いたとか……うわっ、最悪。
(僕は正直に話したいんだ)
話して誤解を解かなくちゃ。
(波流君、正直にならなくてもいいから、ずっとチョコを溺愛して)
ああ、可愛い。カリナなんて目に入らない。
(溺愛しているよ。チョコちゃんだけ)
僕はやっぱりデレデレするけどこれでも必死だ。お父さんの気持ちがよく理解できる。
(嘘、波流君、もうチョコのこと飽きたんだ)
(え、誰がそんな大嘘を)
そう攻めたのか、カリナのやつ……
チョコちゃんが可哀想じゃないか。
(じゃあ何、話って。別れ話じゃないの)
全っ然、違う。寧ろその逆。頭をブンブン振る。
カリナに対する少しの怒りとチョコちゃんに対する溺れそうなくらいのラブラブ感情。天秤が壊れる。
(ははは。別れ話って、笑える。僕たち別れるの)
(えへへ。違った)
(違うよ。僕はチョコちゃんにデレテレ王子だよ。チョコちゃんにだけだ。何で別れるの)
(チョコは不安で)
(どうして不安なの。僕も不安になる)
(他に可愛い子たちがたくさんいるから)
カリナのことを言いたいのかな。
(チョコちゃんに話したいことがあったけど、次にする)
(ええっ、狡い。波流君、狡いよ)
(ふふ、話を聞かないと言ったクセに)
(聞くよ。どんなこと)
(何でも言うこと聞く)
(聞く聞く)
言ったね。約束だ。
(ふわはは。実は僕は悪の大魔王なのだ。これからチョコレートを食べに行くぞ)
僕はまたしても国を裏切って夜の街を走った。コマルナ自粛の最中に愛しの姫に会いに行く。
チョコちゃんは白いTシャツと紺のショートパンツにマスクでドアを開けた。
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