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62 すき焼きとスキップ
しおりを挟む「チョコは波流君にスキップ」
ふふ、すき焼きとスキップは二人だけの隠語だ。
「チョコちゃん、その言葉をきいたから帰るね」
「聞いたから帰るの。言わなければ良かった」
「聞いて安心した。チョコちゃんが不安がると此方も不安になるよ」
「ふふ、溺愛大魔王だ」
「溺愛大魔王」
気に入った。僕は溺愛大魔王。
でも、中学生でキスができないトラウマに悩んでいるショボい大魔王だ。ははは……
一度ぎゅっと抱き締めて離れた。
「またね」
「うん、おやすみなさい」
「おやすみ。家の中に入って。帰りにくいから」
チョコちゃんは大人しくドアの中に入る。隙間からにっこり笑った。
可愛い。
チョコちゃんは決して美人ではない。顔の作りなら誰でもカリナを選ぶだろう。僕は違うけど。
チョコちゃんは素顔も味がある。
美人は見慣れると言い、ブスには痘痕も靨と言うけれど、僕は本当の美しさに気づいただけだ。
笑顔でドアを閉めるように手で合図して、下がった。ドアの隙間から手が出て、バイバイと手を振る。
その手を指で突っついて中に入れた。ドアがきちんと閉まって「お休み」と言ってアパートを出る。
アパートの出口にカリナがいた。
「お、おっと、何をしているの」
「待ってた」
「何で」
「途中まで一緒に歩こう」
「ああ、向こうのコンビニか」
家路の途中にある。
「やっぱりわからない。音理の何処が好きなの」
歩きながらカリナが呟く。
「音理ちゃんをどんな子だと思っている」
逆に訊いてみた。
カリナはふっと笑って髪の毛を掻き上げた。
「地味な子。お父さんに会うときだけ可愛いくしていく。性格暗いから、話をしてもつまらない。でも、良いところもある。親切で然り気無く優しい。成績よりも人間性かな」
「成績悪いの」
心配になる。
「波流君相手に男遊びしてるから」
軽く睨まれた。
「音理は波流君が初めてではないよ。他にも男がいたから」
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