中学生溺愛王子はお化粧男子 777文字小説

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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64 成長痛

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「波流、お前、こんな時間に何処に行ってたんだ。寝るんじゃなかったのか」 

お父さんが怖い顔をしている。

「ちょっと外の空気を吸いに」

ああ、とうとう親に嘘を吐いてしまった。

「本当か。どれ、メールを見せてみろ」

ヤバい。チョコちゃんとのお調子者ラインを読まれたら、交際禁止になるかもしれない。うちの親は頭が固い。

何処の親もそうかもしれないけれど、僕は今、小学生から急に来年は高校生になるような気分で、親はそういう僕をいつまでも支配しやすい子供のままでいてほしいのか、僕たちは親子して成長痛に直面する。

僕は「誰のメール」と聞く。

「あの子に決まっているだろう。音理ちゃんに」

お父さんは僕のポケットから勝手にスマホを取り出した。親が通信費を払ってくれているから、こんな横暴は耐えなくてはならない。

(チョコちゃん、元気)

(波流君、チョコは元気)

(あのさ、話がある)

(嫌)

(え、嫌)

(話なんて聞かない)

(僕は正直に話したいんだ)

(波流君、正直にならなくてもいいから、ずっとチョコを溺愛して)

(溺愛しているよ。チョコちゃんだけ)

「お前、溺愛って何だ……」

(嘘、波流君、もうチョコのこと飽きたんだ)

(え、誰がそんな大嘘を)

(じゃあ何、話って。別れ話じゃないの)

(ははは。別れ話って、笑える。僕たち別れるの)

(えへへ。違った)

(違うよ。僕はチョコちゃんにデレテレ王子だよ。チョコちゃんにだけだ。何で別れるの)

(チョコは不安で)

(どうして不安なの。僕も不安になる)

(他に可愛い子たちがたくさんいるから)

(チョコちゃんに話したいことがあったけど、次にする)

(ええっ、狡い。波流君、狡いよ)

(ふふ、話を聞かないと言ったクセに)

(聞くよ。どんなこと)

(何でも言うこと聞く)

(聞く聞く)

(ふわははは。実は僕は悪の大魔王なのだ。これからチョコレートを食べに行くぞ)

「波流、これはどういうことだ」
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