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89 公認れずびあんごっこ

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メイクと着替えを済ませたチョコちゃんと二人で、例の「れずびあんごっこ」なるべたべたショットを何枚も撮影した。

頬をくっつけたり、腕を互いの身体に絡ませたりしていくつものポージングを決める。チョコちゃんママは乗せ上手だ。モデル気分で受かれてチョコちゃんと抱き合って笑った。

鏡の中の自分がすでに普段とはかけ離れているので、照れはない。なりきって遊ぶ。

チョコちゃんが「滅茶苦茶れずびあんごっこで遊ぶ」というフレーズを使うのを、チョコちゃんママも納得したみたいで、僕たちは時間を忘れた。

しかし、冷や水っていきなり被るものだね。

「あらっ、もう7時。道理で暗くなったはずだわ」

チョコちゃんママが言った。

「嫌だ。帰したくない」

チョコちゃんが抱きつく。

デジカメのシャッター音。チョコちゃんママは僕たちの反応を撮影した。

「僕も帰りたくないよ」

と応じる。また、シャッター音。

「でも、今日は帰るね」

余り遅くなってまさか外出禁止は食らわないはずだけど付き合い方に口を挟まれたくないし、今後のことを考えて、今日は大人しく帰る。

大人しくって……

大人しくしないこともあるって予感なのかな。
ははは、今は無理だけど……

「離れたくない」

チョコちゃんは僕の胴に回していた腕に力をこめた。

「僕も」

チョコちゃんの肩を抱き締める。

「おお、良いね、良いね」

チョコちゃんママが連写する。

チョコちゃんはカラコンなのに、何だか口よりもモノを言っているような深い感情を湛えている。

素敵だ。好きだな……こういうところに萌える。

「後でまたメールするよ。僕は毎日チョコちゃんのことを考えているから」

チョコちゃんママが「お、溺愛王子」と冷やかす。

「ふふ、羨ましいか」

あかんべーするチョコちゃんの変顔も撮影された。チョコちゃんママはシャッターチャンスを逃さない。凄い腕前。

僕たちはチョコちゃんママ公認の「れずびあん」だ。
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