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92 タイプじゃなかった
しおりを挟むお父さんは
「学校が始まるのに良いのか、遊んでいても」
と言ったが、嬉しそうな顔をしている。
僕が不登校男子のままだったら、チョコちゃんとの付き合いも認めてはもらえなかったんだけどね。ちゃんと登校するって宣言したからには約束を守らなければ。
チョコちゃんとのことがなくても、学力を確かめたかったからテストの日には行くつもりだったし、兎に角、学校でのチョコちゃんも気になる。
お父さんは顔が崩れてにやにや笑った。
「波流、お父さんとも撮影しよう。お母さんもおいで」
何を言われるかと思ったら、意外な展開になった。気持ち悪いくらいだ。
「お父さんはねぇ、波流が学校に行くのが嬉しいのとねぇ……はい、チーズ」
自撮り棒での撮影は一瞬だったからお父さんは「まてまて」と言った。
「それはお母さんのだ。お父さんのスマホでも撮影してくれ」
「あら、ラインで送るから」
「まてまて、まだお父さんは」
自分の顔が気になるらしい。僕はお母さんが言い損なった続きが気になった。
「僕が学校に行くのが嬉しいのと、なあに、他にも何か」
「あるある。今日、お化粧男子の動画を見せたの。YouTubeの。そしたら、俺の息子の方が可愛いと言って……ははは」
お父さんは何処かに視線を泳がせた。何かを言おうとして考えが纏まらないときにそうなるみたいだ。
「お父さんもチョコちゃんにメイクしてもらえば」
「はあ、いや、お父さんは遠慮しとくよ。今更女のスガイをしても恐ろしいだけだよ」
「あら、何も女になるメイクだけじゃないから。韓国イケメン風にとか」
「いやいや、お前は何を言うんだ」
勝手に二人で燃え上がっていてください。僕はもう親に見てもらったし、メイクを落として夕飯してラインしななきゃ。
チョコちゃんは刺激的だ。離婚モードだった僕の両親の仲を復活させた。本当に不思議だ。顔はあんまりタイプじゃなかったのに……
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