中学生溺愛王子はお化粧男子 777文字小説

109 お互い必要

「だから、波流君を誰にも奪われたくない。お父さんも協力して。波流君との婚約を実現させて」


僕が戸惑うのを理解できる人はいるのだろうか。

いると信じる。

僕はチョコちゃんが好きで、性欲とかに直結していないけれど、好きなのは本当で、多分、本当に好きで……多分なのか本当なのかはっきりさせるのが難しい……けれど、好きで……

でも、チョコちゃんは女の子とレズビアンになりたくて、なりたいのに僕と婚約したがって……

いつか婚約破棄するかもしれないけれど、直ぐに破棄したらヒマになるから暫くは付き合うと……

でも、僕の言葉に萌えて「死ぬ」とほざく。

チョコちゃんパパはじろりと僕を睨むけれど、予想を裏切る台詞を吐いた。


「波流君。キスは禁止だ。婚約するときは双方の両親共に揃ってでなければならない。君の親御さんをどのように説得するんだね」

「きゃあ。お父さん、お父さん、カッコいい。有り難う」

「どのように……」


萌える。僕も死ぬ……


「どのようにって……賛成してくれるのですか」


チョコちゃんパパが面白くなさそうな表情で頷く。


「お父さん、ありがとー。音理はやっぱりお父さん大好きだ。どうしてお母さんを捨てたわけ。寂しいよ」


チョコちゃんパパははっきり狼狽えた。


「す、捨てたんじゃない。捨てられたんだ。今はその話じゃない。波流君に質問しているんだ」

「僕は正直に話します。キスすることにトラウマがあって、乗り越えるのには時間がかかると思うけど、だからといってレズビアンを主張する音理さんを、都合の良い相手だと思っているわけではありません。今は年齢的にも焦らないで良いと思っています。音理さんと婚約するという考えが、両親に受け入れられるかどうかわかりませんが、お互いを守る為に必要なのかもしれません」


僕は慎重に言葉を選んだつもりだったけど、チョコちゃんパパは「お互い」と呟く。


「音理さんを守ります」