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18) 強いCEO
しおりを挟むこの世の誰も、恵遼天皇には代えられない。その思いは、祝淑にとっても同じだ。
兄の清正を大切にする姿を見慣れていた為か、離宮の離れでお付きの者たちに命令を下す厳しい顔を覗き見た時、同じ人間だとは思えなかった。
私が双子だから
そう思うのかな
天皇も双子なのではと
奈利子も天皇の笑顔を思い出していた。
天皇の政治力は
見習わなくてはならない
きっぱり自分の意見を通す
強いCEOになるのよ
私が引きこもっているから
夫の権限が大きくなりすぎた
奈利子は知らなかった。奈利子の意識が回復したら、奈利子の夫は離婚を申し出るつもりだったことを。そして、自力でベンチャー事業を立ち上げようと思っていたことも、何も知らずに、奈利子は夫を憎々しく感じている。
奈利子の幾つかの会社も地震によって多大な被害を被っていた。先ず、専用の現金自動預け払い機が止まった。地震で現金が必要になる客の為に、一刻も早く復旧しなければならないと、社員はほとんど出払っている。
怪我人も出た。事務所所長が回転椅子ごとひっくり返って手足を捻挫した上に、スチールキャビネットが倒れて、腹部を強打した。
たまたま腹部にビニールのファイルケースが落ちて、キャビネットはその上に倒れたのだが、少しでもクッションになり得たかどうか、所長は部下の運転で病院に向かった。
篠崎は帰ってくるときに、スーパーに寄って値下げシールのついているパンとドリンクを買ってきた。
「これ、通路に投げ出された商品だそうです。でも、袋は消毒したと言ってたので、どうですか。お腹空いたでしょう。弁当類は全く無かったです。ピザ屋も軽食屋も緊急閉店で」
「有り難う。気が利くついでに、地下室からワインを取ってきてくれると嬉しいな。チャビーラン・ボルドーをお願いね」
一般人は名前も聞いたことの無いようなピノ・ロワイヤルを使った最高級のワインは、王室御用達の椿姫という、ザカリー郡の名産だ。年間二百本しか生産できない希少性と鼻孔に残る香り、そして味蕾に訴える奥深い甘さが一本二百万円以上の値を叩き出す。それでも、二十年後まで予約済みなのだから、父親はどうやって手に入れたのか、奈利子は果報者だ。
今夜は二人で
厄落としとゲン担ぎに
取って置きの
チャビーランを
開けよう
チーズを用意した。恵遼天皇の顔が過る。胸が切なくなる。奈利子は鏡を見た。病み上がりの青白く痩せこけた顔に脂気の抜けた髪の毛。
固定電話が鳴った。のそりと動いて電話に出ると夫の部下が早口で捲し立てる。
「大変です、ネサさん。CEOが行方不明です。病院に行った社員からの報告で、ベッドがもぬけの殻で、しかも」
ネサ……
ネサって誰……
CEOって私よね
「しかも社長代理が……」
★★★★★★★★★★
息ができない
パソコンを開こう
いいえ、シャワーを使って
ああ、シャワー壊れてたから
メイクピンザに行って
シャワーヘッドを買わなくてはならない
さっき、久しぶりに奈利子さんが来た
車椅子のご主人と
秘書の篠原さんを連れて
占い師は恨まれることもある
特に奈利子さんのように
特別な関係になると、その人の人生に
深く踏み込むことになってしまうので
ザカリアンカードは悪魔のように
奈利子さんの願いを拒否した
奈利子さんの願いは、ご主人と別れて
秘書の篠原さんを籍に迎えること
カードは『隠れた恋愛』
それが、奈利子さんの恋愛
そして篠原さんもまた
そういう恋愛のようで
どういうわけか
互いに好きな相手は別の人
奈利子さんも篠原さんも
別に好きな相手がいるのに
その相手のことは互いに隠して
一緒になりたいと言う
奈利子さんの顔は輝いていたけど
車椅子のご主人は意識はあるのか
半身不随になって回復は見込めない
そのご主人と別れて
秘書の篠原さんを社長として
新たな会社を作ると
会社は奈利子さんのパワーで
成功するでしょうね
金色の三方のライオン
正面と左右を見ている
三つの顔のライオンは
過去、現在、未来に
強力な支配力、采配力を表す
奈利子さんの望みは
自分の人生を思うがまま生きること
最高権力者との恋愛
そのために全てのことを行う準備が
彼女にはできている
命を捨てることになっても
その道は魅力的らしい
しかも、奇遇というには余りにも
悪魔的な組み合わせ
けれど、あなたの愛するお方には
既に離れられない恋人がいて
そのおふた方の高貴さは
占うことも憚られるのです
奈利子さん、申し訳ないけれど
そもそもの土俵が違うのです
私は応援できません
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