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第一章 魔王に憑依されて
(3)魔力
しおりを挟む「ほお、やっとその気になったか」
何処からでもなく、その声は自分自身が喋っている。鏡の中の自分の口を見ながら、私は尋ねてみた。
「どなた、ですか……」
「ふふふ……」
私が笑った。
「魔王だ」
え……魔王……
ちょっと待って。
冗談じゃなく、魔王って……
「冗談じゃなく魔王だ」
「魔王って悪魔のこと」
「違う。魔王だ。悪魔などではない」
魔王と悪魔の違いがわからない。
「お前はバカか。悪魔は悪だ。愚かな奴なのだ。悪魔は抵脳だ。下等動物だ。一緒にするな」
では、魔王は……
「まさかお前は魔王を悪魔の王様だと……魔力の意味をググってみろ」
ええっ、ググるの……
人を引き付け惑わす力
へぇ、悪魔とは関係ないのか。
「わかったか。失礼なことを言うな」
えっと、どうして私に……
「やがてお前の姉の一周忌だな。復讐したいのではなかったか」
何故それを
「お前、駅で拾ったスマホを届けたな。あのお礼だ」
え、意味がよく飲み込めない
「あれは……まあいい」
背中の翼、着替えられない
「やっぱりバカだな。目に見えるものを信じるな。それはただ見えるだけのものだ。脱いでみろ」
はあ、魔王の前で
「余計な」
わかりましたよ。いい加減風邪でも引きそうな気持ち悪さですから
私は姉の学生服を借りた。
ひとつ違いだから何でも共有できる。
「どうだ、邪魔にはならないだろう」
翼はバサバサと動く。
教室で困る。教師が何かを言う。
厄介なことになるかも
「任せておけ。全員教室ごと木っ端微塵にしてやる」
やっぱり悪魔じゃないですか
「あんな抵脳と一緒にするな」
いやいやいやいや、お願いですから木っ端微塵はやめて
みんな将来があるのに
「あんな奴らの将来なんかどうだって」
やっぱり悪魔だ
「お前、飲み込みが悪いな。魔王に悪魔は禁句だ」
禁句……
「木っ端微塵が嫌なら焼き払おう」
え……焼き払うって教室を……
「止めても無駄だ。着替えは済んだな」
何故か私は校門付近にいた。騒がしい。生徒と教師が入り乱れて走っている。
あ、煙が……まさか
「まさかだと……魔王を信じろ」
え、やっぱり……
「悪魔は禁句だ」
いえ、やっぱりやったんですか
「ふはははは。当たり前だ」
走っている
勝手に動く
教室が燃えた
私の鞄は……私の教科書は……
燃えたら困る
「大丈夫だ。戻してやる」
教室は税金でできているんですよ
私が憎いのは教室ではないし
教室燃やしても何にもならない
「成る程、ではこれはどうだ」
救急車が到着した。
「お、猫斑。君、無事だったか」
木葉の君……
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