堕ちた令嬢と冥界の契約

第12話 武器の調達

翌朝、クロエ・ハートフィリアは家の周りを巡回しているスケルトンたちを眺めながら考えていた。防衛用の柵を作り、スケルトンたちを常に見張りに配置していることで、ある程度の安心感は得られたが、それでも彼女はまだ不安を抱えていた。

「このままじゃ、もし強い敵が来た時にスケルトンたちが無防備すぎるわ……」

クロエはスケルトンの脆さを痛感していた。彼らは忠実に働くが、素手では攻撃力に限界がある。前にゴブリンと戦った時も、数で圧倒することはできたが、武器があればもっと効率的に戦えるだろう。そこで、彼女は一つの考えに至った。

「スケルトンたちに武器を持たせよう」

戦闘用に鍛えられていないスケルトンたちでも、武器を持たせれば戦力として十分に活用できるはずだ。簡単な武器でいい。剣や槍といった基本的な装備があれば、防衛力は大幅に向上するだろう。

「武器屋に行って、適当な武器を買ってこよう」

クロエは早速、イステリアの街にある武器屋へ向かう決意を固めた。彼女が住む森からは少し距離があるが、スケルトンたちが見張っているので家の安全は確保されているはずだ。今が絶好の機会だった。

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イステリアの街に着いたクロエは、港の喧騒を横目に武器屋へ向かった。街の通りには多くの冒険者や商人が行き交っており、武器屋もそうした冒険者たちで賑わっていた。クロエはその中に紛れて店の扉を開けた。

武器屋の中は、鋭く光る剣や斧、槍などが所狭しと並べられていた。クロエは少し圧倒されながらも、自分の必要としているものを探すために店の中を歩き回った。

「鈍の剣と槍……それで十分よね」

彼女はスケルトンたちに持たせるには、あまり高価でない武器が適していると考えていた。スケルトンは戦闘経験もないため、扱いやすく、そこそこの耐久性があれば問題ない。店内を歩き回り、簡素な作りだが頑丈そうな武器をいくつか見つけた。

まず、目に入ったのは鈍い輝きを放つ簡素な剣だった。鋭利さはあまりないが、厚みがあり、重量感もある。これならスケルトンたちが振るっても壊れることなく戦えるだろう。

「これなら……悪くないわ」

クロエはその剣を手に取り、さらに槍のコーナーへと向かった。そこには長柄の槍が何本か並べられていた。軽量で使いやすそうなものもあれば、やや重いものもあったが、彼女はシンプルな作りで耐久性の高そうな一本を選んだ。

「これもいい……スケルトンたちには丁度いい重さかも」

クロエは剣と槍をそれぞれ数本ずつ選び、店のカウンターへ向かった。そこで店主が彼女に声をかけた。

「お、なかなかいい選び方だな。剣と槍か、これなら普通の冒険者でも十分戦えるぞ。お前さん、これで何をするつもりだ？」

店主は興味深げに彼女を見ていたが、クロエは笑みを浮かべながらも詳細は語らなかった。

「少し防衛のためにね。あまり高価なものではなくていいんだけど、丈夫なものが欲しかったの」

店主は彼女の答えに満足したのか、頷きながら代金を計算し始めた。

「じゃあ、これで合計……10銀貨だな」

クロエは手持ちの銀貨を取り出し、代金を支払った。彼女にとっては少し痛い出費だったが、家を守るためには必要な投資だ。これでスケルトンたちがもっと効果的に家を守ってくれるなら、十分に価値がある。

「ありがとう。また必要になったら来てくれよ」

店主の声を背に、クロエは武器を抱えて店を出た。

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家に戻ったクロエは、さっそくスケルトンたちに新しい武器を持たせる準備を始めた。彼女は再び冥界とのつながりを呼び起こし、数体のスケルトンを召喚した。彼らは無表情のまま彼女の命令を待っていた。

「これからあなたたちには、この武器を使ってもらうわ」

クロエは鈍の剣と槍をスケルトンたちに手渡し、それぞれの手に持たせた。スケルトンたちは無言で武器を握り締め、いつもの無感情な表情のまま彼女の前に立ち並んだ。彼女の命令に従って武器を扱うその姿は、かすかに頼もしさすら感じられる。

「これで、少しは防衛力が上がるはず」

クロエは満足げにスケルトンたちの姿を見ながら、自分の選択が間違っていないことを確信した。彼女はスケルトンたちに、再び家の周囲で見張りを続けるよう命じた。剣を持ったスケルトンたちが家の周りを巡回し、槍を持ったスケルトンが入り口付近で警戒している。

「これで、ゴブリンや他の脅威が来ても、もっと対抗できる」

武器を持ったスケルトンたちは、彼女にとっての新たな防衛力となり、家の安全をさらに強化する存在となった。クロエは少し安心しながら、次の戦いに備える準備を進めた。

これからどんな脅威が待ち受けていようとも、彼女は決して無防備ではない。