堕ちた令嬢と冥界の契約

第14話 ゴブリン退治

クロエ・ハートフィリアは、静かに森の中を進んでいた。彼女の後ろには、2体の護衛スケルトンが無言で歩を進めている。今日は、冒険者ギルドで受けた新たな依頼――ゴブリン退治のために、この深い森へとやってきた。

依頼は、近くの村で家畜や作物を荒らしているゴブリンの一団を討伐するというものだ。スケルトンたちが武器を装備している今、十分に対応できるとクロエは判断した。だが、彼女は油断しなかった。ゴブリンは数が多い場合、危険度が増す。戦闘が長引けば、スケルトンたちだけでは対処できない可能性がある。

「慎重に行動しなければ……」

クロエは自分に言い聞かせながら、スケルトンたちに武器を確認させた。剣を持つスケルトンと、槍を持つスケルトンが、彼女の護衛として静かに立っている。だが、クロエは自身が前に戦った時の経験を思い出し、今回はさらに策を練ることにした。

彼女は今回、スケルトンたちに正面からゴブリンと戦わせる一方で、自身は目立たずに行動し、必要に応じて背後から奇襲をかける作戦を考えていた。そして、そのためには不可視化の魔法を使って隠密行動を取ることが必要だ。

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クロエがゴブリンたちの巣に近づくにつれ、森の中に不気味な雰囲気が漂い始めた。ゴブリン特有の騒がしい声や、火を焚いている匂いが彼女の鼻をついた。気配を探ると、どうやらゴブリンたちは十数体ほどいるようだ。

「数は多いけど……これならやれる」

彼女は小さく息をつき、スケルトンたちに目配せした。今が勝負の時だった。だが、彼女自身が目立って行動すれば、ゴブリンたちに見つかるリスクがある。そこでクロエは、自分自身を隠すための不可視化の魔法を使うことにした。

クロエが不可視化を使うためには、魔法の特性上、彼女が身に着けているものすべてが効果を受けないため、全裸で行動する必要があった。

「仕方ない……」

クロエは周囲を確認し、誰にも見られていないことを確認すると、素早く衣服を脱ぎ始めた。冷たい夜風が肌に当たり、鳥肌が立つ感覚が広がる。だが、彼女はそんなことに構わず、集中して魔力を引き出した。

「消えなさい……」

その言葉と共に、クロエの体は闇のベールに包まれ、姿を消していった。完全に透明化した彼女は、その場から一歩も動かない。視覚的には誰にも存在が確認できないが、クロエ自身はゴブリンたちの巣穴をしっかりと見据えていた。

「スケルトンたち、前へ」

彼女は低く命令を下すと、スケルトンたちは無言で前方へと進んでいった。彼らの動きに反応し、ゴブリンたちはすぐに異変に気づき、騒ぎ出した。

「ガァァ！？」

ゴブリンたちは突然現れたスケルトンに驚き、武器を手にして迎え撃とうとした。だが、剣を持ったスケルトンはすぐに一匹のゴブリンに切りかかり、槍を持ったスケルトンは距離を保ちながら次々にゴブリンを突き刺していく。

戦闘が始まり、スケルトンたちはゴブリンの群れに次々と攻撃を加えていた。しかし、数で勝るゴブリンたちは徐々にスケルトンたちを取り囲み、押し返そうとしていた。

「このままじゃ……」

クロエはスケルトンたちが不利な状況になる前に、不可視化したままゴブリンたちの背後に回り込んだ。彼女の存在には誰も気づいていない。これこそ、彼女が求めていた隠密行動だった。

不可視化したまま、クロエは一匹のゴブリンの近くに静かに歩み寄り、手を伸ばした。彼女の指先がゴブリンに触れると、彼女は「生命力吸収」の魔法を発動した。

「……！」

ゴブリンは突然体から力が抜け、苦しげな声を上げながらその場に崩れ落ちた。クロエは姿を現すことなく、次々と他のゴブリンにも同じ攻撃を仕掛けていく。彼女が直接手を下すことで、ゴブリンたちは混乱し、次々と倒れていった。

その隙に、スケルトンたちはゴブリンの攻勢を押し返し、再び攻撃に転じた。剣を振り回すスケルトン、槍で突くスケルトン――彼らは忠実にクロエの命令を守り、次々にゴブリンを討伐していった。

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戦いが終わる頃には、森の中には倒れたゴブリンの屍が散らばり、静寂が戻っていた。クロエは、不可視化の魔法を解除し、再び姿を現した。全裸の体に夜風が当たるが、戦いの興奮でそれすらも気にならない。

「これで……終わったわね」

クロエは深呼吸をしながら、周囲を見渡した。スケルトンたちは忠実に彼女を守り、ゴブリンたちを討伐することができた。彼女自身も隠密行動を取ることで、無事に奇襲を成功させた。

「やっぱり、この方法は使えるわね……」

クロエは拾い上げた衣服を再び身に着けながら、自分の選んだ戦術が間違っていなかったことを実感していた。スケルトンと不可視化の力を組み合わせれば、どんな相手にも対応できる。そう確信しながら、彼女は再びスケルトンたちと共に、冒険者ギルドへと帰路に就いた。