堕ちた令嬢と冥界の契約

第26話 脱出への決意

クロエ・ハートフィリアの毎日は、絶望と屈辱で彩られていた。看守は毎日彼女の牢を訪れ、体を弄ぶたびに彼女の心は崩れていった。看守に逆らう力もなく、ただ耐え続けるしかない状況で、クロエの心には一筋の光すら残っていないかのように思われた。

しかし、ある日、クロエの心の中に微かに残っていた抵抗の炎が再び燃え上がった。彼女はもうこのままでは終わりたくない。屈辱的な日々から抜け出し、自由を取り戻すために、最後の賭けに出る決意をしたのだ。

「私には、まだ魔法がある……」

クロエはそう自分に言い聞かせた。不可視化の魔法――それは彼女が長年習得してきた技術であり、何度も彼女を窮地から救ってきた。今回も、この魔法を使ってこの牢獄から脱出するしかないと、彼女は決意した。

次の日、看守がまた牢にやってきた。彼の足音が聞こえた瞬間、クロエは心を静め、計画を実行する準備を整えた。看守がいつものように扉を開け、彼女の方へ近づいてきたその瞬間が、クロエにとって絶好の機会だった。

「さあ、今日もお前と遊ぼうじゃないか……」

看守は軽い笑みを浮かべながらクロエに近づいた。しかし、彼がまだ油断しているその瞬間、クロエは意を決して不可視化の魔法を発動させた。瞬く間に、彼女の体は薄い闇のベールに包まれ、姿が消えた。

「……何！？どこに行った！？」

看守は突然クロエの姿が消えたことに気づき、驚きと混乱で声を上げた。彼は牢の中を見回し、クロエを探そうとしたが、不可視化した彼女は完全にその場から姿を消していた。

クロエは冷静に看守の隙をついて、牢から抜け出すことに成功した。彼女は看守が鍵を持って扉を開けたタイミングを狙い、見事に彼の背後をすり抜けたのだ。

クロエは、冷たい牢獄の廊下を透明なまま慎重に進んでいった。心臓が激しく脈打ち、全身に緊張が走っていたが、彼女は絶対に見つからないように、静かに、着実に歩みを進めた。

「ここから出て……自由を取り戻すんだ……」

クロエの心には強い決意があった。彼女はもう二度と、あの屈辱的な日々に戻るつもりはなかった。牢獄の廊下は薄暗く、ところどころに見回りの兵士たちがいたが、彼女の透明化された姿は誰にも見つからなかった。

しばらく進んだところで、クロエは牢獄の出口にたどり着いた。大きな鉄の扉が彼女の前に立ちはだかっていたが、幸運にも出口はまだ閉じられていなかった。彼女は無言で扉を開け、外の空気を吸い込んだ。

「これで……やっと……」

クロエは外の冷たい夜風に当たりながら、涙が込み上げてくるのを感じた。彼女はようやく、長い間囚われていた牢獄から抜け出すことができたのだ。

その夜、クロエは一度も振り返ることなく、牢獄から遠く離れた場所へと逃げていった。彼女はまだ弱り切った体で、何度も足を止め、深い息をつかなければならなかったが、それでも彼女は自由を手に入れたという事実が、全身に新たな力を与えていた。

「もう……二度とあんな場所には戻らない……」

クロエはそう誓いながら、再び自分の人生を取り戻すために、新たな道を歩み始めたのだった。