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第2章4部
哀痛の涙
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「どこから出てきたのですか、このガキはっ!!」
クーランは必死にイカゲの視界に入ろうと、小さな体を動かした。
まだ魔法が使えないクーランにとって、霊魔のイカゲに触ることができないからだ。
「離れろ、クーランッ!!!」
必死なクーランに、セリカの声は届いていない。
「邪魔ですっ!!」
イカゲは思いきり腕を払い、クーランを弾き飛ばした。
「クーランッ!!」
飛ばされたクーランに必死に手を伸ばすも、それは突き刺さった鎖によって阻まれる。
「ぐぅぅっっ!!!」
熱を帯びた鎖は容赦なくセリカの傷を襲い続ける。
猛烈な痛みにセリカは再び突っ伏した。
クーランはセリカに駆け寄ると、自分の首に巻いてあるマフラーを取り傷口をを優しく押さえた。血を吸ったマフラーが濃く滲んでいく。
「ク、クーラ・・・待って、ろと、言った・・・だろ・・・。に、にげ、ろ・・・」
かろうじて顔を上げたセリカは、クーランの手を優しく握った。しかし、目に涙を溜めたクーランは、何度も首を横に振り、拒否の意思を示した。
「その傷は・・・。」
いつの間にか2人の傍まで来ていたイカゲが、クーランの首にある魔障痕を無遠慮に見つめる。
クーランはイカゲの姿に硬直し、そのままブルブルと震え始めた。
「やはり・・・。それは私が付けた魔障痕ですね?」
クーランの瞳から涙が溢れだす。恐怖に揺れる瞳は、イカゲの仮面を歪に映し出した。
「私としたことが・・・。素材を拾いそこなっていたようですね。」
「くぅっ!!!」
恐怖で動けないクーランにイカゲが手を伸ばした時、セリカは振り絞った力で氷の塊をイカゲに投げつけた。
「クーランに、触るな、っ・・・!」
しかし、氷はいとも簡単に粉砕されバラバラと足元に落ちていく。足元の氷を踏み砕くイカゲは鼻で笑った。
「脆くて反吐が出る。」
「くっ・・・」
「この子どもは、あなたの血縁者ですか?」
「ちが、う・・・。この子は、関係、ない。手を出すなっ・・・!」
動揺するセリカに興味を覚えたイカゲは、いいことを思いついたと言わんばかりの声音を出した。
「ゼロ様との関係をまだ言いませんか?」
「本当に、知らない・・・!あの時以前に、奴と会ったことはない!」
「そうですか・・・。じゃあ思い出すようにお手伝いをしましょう。」
そう言うと、イカゲはクーランに更に近づいた。
「な、なにをっ!!!おいっ!クーランに触るなっっ!!!」
疼く傷に眉をひそめながら、セリカは必死に手を伸ばす。しかし動くことができなかった。
それはクーランも同じだった。
村が襲われた時、自分や自分の両親を傷つけ殺した本人が目の前にいる。
早鐘のように鳴る胸の鼓動が、耳の奥で鈍く響いている。
「素材が咎人になる瞬間を見たことがありますか?」
「な、なにを、言っ――!」
「傷を付けた霊魔が、再び魔障痕から負の意識を注ぐことで咎人は誕生します。しかし、これは非常に繊細な作業でしてね。素材の大きさや頑丈さによって、力をコントロールしなければならないのです。もしコントロールを誤れば、素材はすぐに壊れて使い物にならなくなってしまう。」
イカゲはゆっくりとクーランの首を掴む。為す術のないクーランは、ボロボロと涙を流し続けた。
「なので、この作業はちゃんとした設備のある施設で、研究者立ち合いのもと行われるのですが・・・。まぁ、私は特別な霊魔なので大丈夫でしょう。」
「やめろぉっっ!!!!クーランから手を離せっっ!!頼むっっ!!!」
「思い出せそうですか?」
「っっぅ・・・っぅ・・・本当に、分からない、んだ・・・!私は、幼少時の記憶が混濁している部分が、多いから・・・。」
「人はより強いショックを与えることで潜在的な意識を取り戻せるそうですよ?」
「クーランは関係ないっ!!私に用があるなら、私を好きにすればいいだろうっ!!」
「確かにあなたは大切な情報源です。しかし、こちらにも都合があるのですよ。」
「くぅっっ!!離せっ!これを取れぇぇぇっっ!!!」
渾身の力を込め、セリカは鎖を引き抜こうとする。その度に傷は抉れ、そこから大量の血が噴き出した。その様子に、クーランはパクパクと口を動かした。
「大丈夫です。咎人になれば痛みや恐怖から解放されます。苦しいのは一瞬ですよ。」
そう言うと、イカゲはその姿に似合わぬ悍ましい傷跡を舐めるように撫でた。
「やめろぉぉっ!やめてくれぇぇぇっ!!」
イカゲの腕から靄のかかった黒い突先が形成される。それはクーランの魔障痕にゆっくりと突き刺さっていった。
クーランの声なき声が周辺に響き渡る。
「クーラァ゛ンッ!!ぐぅっ、離せぇぇ゛っ!!!」
セリカは鎖ごと引きずるように身体を起こそうとした。グジュリと皮膚が引き攣り裂ける音がする。それでも構わず必死に手を伸ばす。
「無駄ですよ。それより、気を散らさないでください。失敗しちゃいますよ。」
突先はズブズブと魔障痕へ入っていく。クーランの小さな身体がビクンビクンと痙攣しはじめた。
「や、やめ・・・て・・・やめてぇぇ゛ぇぇっ!!」
目の前で起こる惨酷な光景が涙でぼやけていく。喉が潰れるほど張り上げた声は、セリカの頭にガンガンと響いた。
セリカはクーランの名を呼び続ける。痙攣していたクーランの身体がガクンと揺れ、脱力した時、セリカの心臓がドクンと鳴った。
「ク・・・ク、ラ・・・?」
イカゲも動きを止める。
「おや・・・?もしかして死にしましたか?」
イカゲはグイッとクーランを持ち上げて見せた。クーランの瞳は固く閉じられ、涙の跡が痛々しく見えた。
「失敗ですか・・・。おかしいですね、力加減を間違えましたかね。」
そう言うと、イカゲは興味なさそうにクーランを放った。クーランの体は、まるで人形にように乏しくセリカの傍に落ちた。
「ふむ。やはり負の意識を注ぐ時の加減が難しいですね。調整する機械の必要性がよく分かりました。」
ふっくらとした頬はカサついている。果実のように濡れた唇からは、涎が垂れていた。
「・・・さて、どうですか?ゼロ様との関係を思い出しましたか?」
乾いた涙で張り付いた長い睫毛を震える手で触れれば、伏せられたそれは頼りなく震えた。
「そうだ、あなたの四肢を切り取って持って帰れば、情報を解析できるかもしれません。シトリー様の邪魔をする者も消えて一石二鳥――」
――気配は今までに感じたことのないものだった。猛烈な熱さにイカゲは思わず息を呑む。火精霊と融合した自分が、熱を感じる事なんてないはずなのに。
振り返った先には、ゆっくりと立ち上がるセリカがいる。セリカを縛っていた鎖は、すでに熱に溶かされ消えていた。
(私の鎖が、溶けた・・・?)
戦いによって破損した制服からはセリカの白い肌が露出している。そこから覗く左胸郭から腹部にかけ途切れた傷にイカゲはハッとした。
(あの魔障痕は・・・!!いや、それよりも――!!!)
イカゲの視覚が優先したものは、セリカの身体に光る線だった。身体に合わせた線は魔障痕を囲むように、歪な軌跡を描いている。
イカゲは、見覚えのあるその模様に目を見張った。
(魔障痕の周りに・・・あれは水精霊の紋様・・・!?)
セリカの脇腹からは未だに血が流出している。構わずセリカはゆっくりと右手を挙げた。
熱波と言う表現ではあまりにもやさしい。急に現れた固く重い熱の壁は、イカゲを数メートル先まであっという間に吹き飛ばした。
「あ、がぁ゛!!!」
息を吸えば、喉から肺にかけ灼熱の渦がかけめぐる。体中の血液が沸騰しそうなほど熱を帯びた体に、イカゲは動揺を隠しきれなかった。
(熱っ・・・、熱いっ!!!!私が、熱さを感じるなんて・・・!!!)
イカゲはゆっくりと近づいてくるセリカに炎の鎖を突出する。しかし、鎖はセリカに届く前にぐにゃりと変形し、セリカの足元に溶け落ちていった。
「くっっそぉぉっ!!」
何度も何度も鎖を飛ばす。しかし、結果は同じだ。
(どういうことだっっ!!?あの女のエレメントは水精霊。水が炎の鎖を溶かす理なんて存在しないっ!!)
イカゲはさらにセリカの身体に起きている変化に気付いた。
(なんだ・・・?首から顔にかけて、また線が・・・!?)
イカゲは炎の塊をいくつも発現させると、セリカ目がけて思いきり投げつける。
セリカは両手をふわりと広げると、すべての塊を打ち消していった。
光を宿していない眼と、首から顔にかけ浮き出た模様にイカゲは唖然とする。
「火精霊の紋様だとっっ!!?」
セリカの身体に刻まれた光る2つの紋様は、呼応するように輝いてる。水精霊の紋様はスカイブルー、火精霊の紋様は淡い朱色をしている。
「なんだっ!!何者ですか、あなたはっ!!」
目の前で起こる見た事もない不可解な事象は、イカゲを混乱させるのに十分だった。
「もういいっ、殺すっ!!情報はあなたの死体だっ!!」
イカゲは渾身の力を放出する。周辺にある岩や木々たちが同調するように一斉に激しい炎に包まれると、陽の光とは違う暴力的な明るさが、2人の影を濃く映し出した。
「幕引きですっ!死になさいっ!!」
周囲の炎が渦になって集まっていく。それは細長く延びる高速な渦巻き状の竜巻へと変化していった。
猛烈な熱風に周囲が巻き上げられていく。炎の竜巻は勢いを加速させながらセリカへ猛進していった。
セリカは棒立ちのままだ。その眼には未だ光を宿していない。
「ハハハハッッ!!諦めましたかっ!!炎の渦に引き裂かれなさいっ!!!」
激しい風に布地が巻き上げられていく。それがクーランのマフラーだと気付いた時、セリカの火精霊の紋様が一層強く輝きだした。
クーランは必死にイカゲの視界に入ろうと、小さな体を動かした。
まだ魔法が使えないクーランにとって、霊魔のイカゲに触ることができないからだ。
「離れろ、クーランッ!!!」
必死なクーランに、セリカの声は届いていない。
「邪魔ですっ!!」
イカゲは思いきり腕を払い、クーランを弾き飛ばした。
「クーランッ!!」
飛ばされたクーランに必死に手を伸ばすも、それは突き刺さった鎖によって阻まれる。
「ぐぅぅっっ!!!」
熱を帯びた鎖は容赦なくセリカの傷を襲い続ける。
猛烈な痛みにセリカは再び突っ伏した。
クーランはセリカに駆け寄ると、自分の首に巻いてあるマフラーを取り傷口をを優しく押さえた。血を吸ったマフラーが濃く滲んでいく。
「ク、クーラ・・・待って、ろと、言った・・・だろ・・・。に、にげ、ろ・・・」
かろうじて顔を上げたセリカは、クーランの手を優しく握った。しかし、目に涙を溜めたクーランは、何度も首を横に振り、拒否の意思を示した。
「その傷は・・・。」
いつの間にか2人の傍まで来ていたイカゲが、クーランの首にある魔障痕を無遠慮に見つめる。
クーランはイカゲの姿に硬直し、そのままブルブルと震え始めた。
「やはり・・・。それは私が付けた魔障痕ですね?」
クーランの瞳から涙が溢れだす。恐怖に揺れる瞳は、イカゲの仮面を歪に映し出した。
「私としたことが・・・。素材を拾いそこなっていたようですね。」
「くぅっ!!!」
恐怖で動けないクーランにイカゲが手を伸ばした時、セリカは振り絞った力で氷の塊をイカゲに投げつけた。
「クーランに、触るな、っ・・・!」
しかし、氷はいとも簡単に粉砕されバラバラと足元に落ちていく。足元の氷を踏み砕くイカゲは鼻で笑った。
「脆くて反吐が出る。」
「くっ・・・」
「この子どもは、あなたの血縁者ですか?」
「ちが、う・・・。この子は、関係、ない。手を出すなっ・・・!」
動揺するセリカに興味を覚えたイカゲは、いいことを思いついたと言わんばかりの声音を出した。
「ゼロ様との関係をまだ言いませんか?」
「本当に、知らない・・・!あの時以前に、奴と会ったことはない!」
「そうですか・・・。じゃあ思い出すようにお手伝いをしましょう。」
そう言うと、イカゲはクーランに更に近づいた。
「な、なにをっ!!!おいっ!クーランに触るなっっ!!!」
疼く傷に眉をひそめながら、セリカは必死に手を伸ばす。しかし動くことができなかった。
それはクーランも同じだった。
村が襲われた時、自分や自分の両親を傷つけ殺した本人が目の前にいる。
早鐘のように鳴る胸の鼓動が、耳の奥で鈍く響いている。
「素材が咎人になる瞬間を見たことがありますか?」
「な、なにを、言っ――!」
「傷を付けた霊魔が、再び魔障痕から負の意識を注ぐことで咎人は誕生します。しかし、これは非常に繊細な作業でしてね。素材の大きさや頑丈さによって、力をコントロールしなければならないのです。もしコントロールを誤れば、素材はすぐに壊れて使い物にならなくなってしまう。」
イカゲはゆっくりとクーランの首を掴む。為す術のないクーランは、ボロボロと涙を流し続けた。
「なので、この作業はちゃんとした設備のある施設で、研究者立ち合いのもと行われるのですが・・・。まぁ、私は特別な霊魔なので大丈夫でしょう。」
「やめろぉっっ!!!!クーランから手を離せっっ!!頼むっっ!!!」
「思い出せそうですか?」
「っっぅ・・・っぅ・・・本当に、分からない、んだ・・・!私は、幼少時の記憶が混濁している部分が、多いから・・・。」
「人はより強いショックを与えることで潜在的な意識を取り戻せるそうですよ?」
「クーランは関係ないっ!!私に用があるなら、私を好きにすればいいだろうっ!!」
「確かにあなたは大切な情報源です。しかし、こちらにも都合があるのですよ。」
「くぅっっ!!離せっ!これを取れぇぇぇっっ!!!」
渾身の力を込め、セリカは鎖を引き抜こうとする。その度に傷は抉れ、そこから大量の血が噴き出した。その様子に、クーランはパクパクと口を動かした。
「大丈夫です。咎人になれば痛みや恐怖から解放されます。苦しいのは一瞬ですよ。」
そう言うと、イカゲはその姿に似合わぬ悍ましい傷跡を舐めるように撫でた。
「やめろぉぉっ!やめてくれぇぇぇっ!!」
イカゲの腕から靄のかかった黒い突先が形成される。それはクーランの魔障痕にゆっくりと突き刺さっていった。
クーランの声なき声が周辺に響き渡る。
「クーラァ゛ンッ!!ぐぅっ、離せぇぇ゛っ!!!」
セリカは鎖ごと引きずるように身体を起こそうとした。グジュリと皮膚が引き攣り裂ける音がする。それでも構わず必死に手を伸ばす。
「無駄ですよ。それより、気を散らさないでください。失敗しちゃいますよ。」
突先はズブズブと魔障痕へ入っていく。クーランの小さな身体がビクンビクンと痙攣しはじめた。
「や、やめ・・・て・・・やめてぇぇ゛ぇぇっ!!」
目の前で起こる惨酷な光景が涙でぼやけていく。喉が潰れるほど張り上げた声は、セリカの頭にガンガンと響いた。
セリカはクーランの名を呼び続ける。痙攣していたクーランの身体がガクンと揺れ、脱力した時、セリカの心臓がドクンと鳴った。
「ク・・・ク、ラ・・・?」
イカゲも動きを止める。
「おや・・・?もしかして死にしましたか?」
イカゲはグイッとクーランを持ち上げて見せた。クーランの瞳は固く閉じられ、涙の跡が痛々しく見えた。
「失敗ですか・・・。おかしいですね、力加減を間違えましたかね。」
そう言うと、イカゲは興味なさそうにクーランを放った。クーランの体は、まるで人形にように乏しくセリカの傍に落ちた。
「ふむ。やはり負の意識を注ぐ時の加減が難しいですね。調整する機械の必要性がよく分かりました。」
ふっくらとした頬はカサついている。果実のように濡れた唇からは、涎が垂れていた。
「・・・さて、どうですか?ゼロ様との関係を思い出しましたか?」
乾いた涙で張り付いた長い睫毛を震える手で触れれば、伏せられたそれは頼りなく震えた。
「そうだ、あなたの四肢を切り取って持って帰れば、情報を解析できるかもしれません。シトリー様の邪魔をする者も消えて一石二鳥――」
――気配は今までに感じたことのないものだった。猛烈な熱さにイカゲは思わず息を呑む。火精霊と融合した自分が、熱を感じる事なんてないはずなのに。
振り返った先には、ゆっくりと立ち上がるセリカがいる。セリカを縛っていた鎖は、すでに熱に溶かされ消えていた。
(私の鎖が、溶けた・・・?)
戦いによって破損した制服からはセリカの白い肌が露出している。そこから覗く左胸郭から腹部にかけ途切れた傷にイカゲはハッとした。
(あの魔障痕は・・・!!いや、それよりも――!!!)
イカゲの視覚が優先したものは、セリカの身体に光る線だった。身体に合わせた線は魔障痕を囲むように、歪な軌跡を描いている。
イカゲは、見覚えのあるその模様に目を見張った。
(魔障痕の周りに・・・あれは水精霊の紋様・・・!?)
セリカの脇腹からは未だに血が流出している。構わずセリカはゆっくりと右手を挙げた。
熱波と言う表現ではあまりにもやさしい。急に現れた固く重い熱の壁は、イカゲを数メートル先まであっという間に吹き飛ばした。
「あ、がぁ゛!!!」
息を吸えば、喉から肺にかけ灼熱の渦がかけめぐる。体中の血液が沸騰しそうなほど熱を帯びた体に、イカゲは動揺を隠しきれなかった。
(熱っ・・・、熱いっ!!!!私が、熱さを感じるなんて・・・!!!)
イカゲはゆっくりと近づいてくるセリカに炎の鎖を突出する。しかし、鎖はセリカに届く前にぐにゃりと変形し、セリカの足元に溶け落ちていった。
「くっっそぉぉっ!!」
何度も何度も鎖を飛ばす。しかし、結果は同じだ。
(どういうことだっっ!!?あの女のエレメントは水精霊。水が炎の鎖を溶かす理なんて存在しないっ!!)
イカゲはさらにセリカの身体に起きている変化に気付いた。
(なんだ・・・?首から顔にかけて、また線が・・・!?)
イカゲは炎の塊をいくつも発現させると、セリカ目がけて思いきり投げつける。
セリカは両手をふわりと広げると、すべての塊を打ち消していった。
光を宿していない眼と、首から顔にかけ浮き出た模様にイカゲは唖然とする。
「火精霊の紋様だとっっ!!?」
セリカの身体に刻まれた光る2つの紋様は、呼応するように輝いてる。水精霊の紋様はスカイブルー、火精霊の紋様は淡い朱色をしている。
「なんだっ!!何者ですか、あなたはっ!!」
目の前で起こる見た事もない不可解な事象は、イカゲを混乱させるのに十分だった。
「もういいっ、殺すっ!!情報はあなたの死体だっ!!」
イカゲは渾身の力を放出する。周辺にある岩や木々たちが同調するように一斉に激しい炎に包まれると、陽の光とは違う暴力的な明るさが、2人の影を濃く映し出した。
「幕引きですっ!死になさいっ!!」
周囲の炎が渦になって集まっていく。それは細長く延びる高速な渦巻き状の竜巻へと変化していった。
猛烈な熱風に周囲が巻き上げられていく。炎の竜巻は勢いを加速させながらセリカへ猛進していった。
セリカは棒立ちのままだ。その眼には未だ光を宿していない。
「ハハハハッッ!!諦めましたかっ!!炎の渦に引き裂かれなさいっ!!!」
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