MIRAI~美少年な王子様は愛されて当然なんです~『改訂版』

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LoveとLike

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2013年3月26日
翌日のロケ撮影。
場所は少し広めな緑地にある公園。
撮影の準備をスタッフ達が急かせかとしている中、未来はぼんやりその様子を眺めつつ、昨日電話で琉空に言われた事を考えていた。
斗亜が自分の事を好き。本当にそうなのだろうか。
琉空はあぁもきっぱりそう断言してきていたが、未来としては何故だがそんな風には感じられなかった。
しかしもしそうならばやはり皆の言う通り、キスなんてしていては駄目だと未来も思った。
だって百花の事もまだ解決していないのに、斗亜にまで迫られたら絶対に手におえなくなる自信がある。
だからその前になんとかしなくてはと、未来は決意を胸にしそして
 
「あの、斗亜君っ」

公園内の片隅に設けられた演者用待機場所にて、台本を広げていた斗亜に未来は声をかけた。
 
「ん?何?どうしたの?」

少し不安気な眼差しで斗亜を見つめながら、未来は掌を無意識に握った。
 
「えっと、ちょっと話があるんだけど……」


 
「あはははっ。何を真剣に言うかと思ったら。大丈夫だよ、未來。僕最初に言ったよね?付き合ってとかそんな面倒臭い事は言わないって」

公園から少し離れた所。
小さな噴水がある広場に移動した二人。
徐に話だした未来に、斗亜は珍しく声を荒らげて笑いながらそう言った。
 
「っでも、僕の事、その…」
「好きだよ。恋愛対称として。LikeじゃなくてLoveでね。だけどえ~っとなんだっけ?琉空君だっけ?の言うような気持ちは僕にはないから」

クスクスと、瞳にはうっすら涙まで浮かべて言う斗亜に、未来は何が何だか分からなくなる。
 
「え?何で?ってかなんかもうよく解んない。だって琉空は恋愛対称で人を好きになると、その人と付き合いたいって思うようになるって言ってたよ?なのに何で?琉空は嘘なんて言わないし、もう全然解らないよ…」

琉空と斗亜、二人が言う事がてんで違っていて、未来の頭の中は混乱し、もう一人では理解出来そうにない。

「未來、琉空君が言ってる事は嘘じゃないよ。それは凄く普通な感情で、普通は人を好きになったらそう思うと思う。だけど僕は普通じゃないから。未來の事は凄く好きだし傍にいたいと思うけど、でも恋人になってほしいとは思わない。僕は束縛はするのもされるのも嫌いだから」

柔らかい声音と笑顔で、ゆっくりと未来に言い聞かせるように話す斗亜。
だがしかし、未来にはいまいち納得出来ず、その表情は曇ったままだ。
 
「だから安心して?付き合ってほしいなんて言わないし、もし未來に好きな人が出来て僕と会いたくないって思うようになったら、未來の思う通りにするし僕に遠慮なんかしなくてもいい。だからそれまでは良いじゃん。未來の嫌な事は絶対しないからさ。駄目、かな?」

真っ直ぐに、だけどどこか頼りなく自分を見つめてくる斗亜の瞳。
未来はやはり今回も、その瞳に吸い込まれてしまうような感覚を覚えた。


 
※※※


 
「駄目、とは言えなかったんだよね…」

撮影を終えてホテルの自室に戻った未来は、早速今日の斗亜との事を琉空に話していた。
 
「まぁ…、じゃあもうそれでお前がいいならいいんじゃない?」

自宅の自室。
テーブルに教科書とノートを広げ宿題をしていた琉空は、携帯を耳にあて、もう片方の手にはシャープペンを握りながらそう言った。

「うん。キスなんてアメリカでは挨拶でするしね。減るもんじゃないし、それに斗亜君とは仲良くしていきたいって思うから…」
「ふ~ん、何で?最初は苦手だって言ってなかったっけ?」

ぶつぶつと斗亜の文句を言っていた未来を思い浮かべながら、琉空がそんな質問をすると
 
「うん。でも今は一番あのキャスト内では話が合うから。他の子は皆素人みたいだから話す気にもならないけど、斗亜君は違うから」
「へ~、認めてるんだ?」

斗亜を評価する程彼に対し好感を抱いている未来に、普段他人との馴れ合いをあまり好まない節のある未来だったが、意外な事をあるものだと琉空は少し驚いた。
 
「まぁね。だから気まずくはなりたくないんだよね。キスでそれが免れるならその方がいいかなって」

なんてことはないように話す未来に、琉空の額に少しばかりの皺がよるが
 
「…まぁ、お前がいいならいいけど…。でも気を付けろよ?」「え?気を付けるって何を?」

神妙な声音の琉空に反し、未来の声はとても軽い。
 
「何をって、キス以上の事されないようにに決まってるだろ?まぁそれもお前がいいならいいんだけど」
「はぁ~?何言ってんの?そんなの大丈夫だよ。だって僕男だよ?流石にそれ以上は求められないって、ないない」

けらけらと笑いながら、有り得ないよと言う未来に琉空はそうか、そうだよなとは思えなかった。
寧ろ絶対求めてくる。だって斗亜は好きなんだからと、琉空は今後の未来を久しぶりに割と本気で心配に思った。
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