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こちら付与魔術師でございます
こちら付与魔術師でございます Ⅱ 冒険者ギルド・魔術師ギルド編
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いやぁ、参りました。不慣れな言い訳をして、何とか明日会うようにしてもらいましたよ。
ん?恋人かって? いやいや違いますよ。
彼女は妹のようなものです。
確かにスタイルは良いし、元気いっぱいの、ちょっとおっちょこちょいな子でかわいらしいのですが、恋愛対象ではないですね。それに彼女一人っ子だし。
まぁ、それは置いておくとして、これから午後はギルド登録になるのですが、ギルドというものを少し紹介しておきます。
ギルドとは正確には同じ職業の技術を持った集団というところでしょうか。ギルドに所属しなくてもその職業が出来ないわけではありません。はい。
ただ、いろいろな優遇が受けられるのと、信用が得られることが、最大の恩恵です。
例えば、魔術師ギルドでは、通常の図書館には置いていない特殊な専門書を読むことが出来るようになります。また、魔道具の販売もしてくれます。
これは作るのに手間のかかるものを買ってきて出来合いのものにはめ込んで使うということもできます。
あ、私はやりませんよ。そこは付与魔術師としてのプライドがありますから。
ただし、付与魔術を治めていない魔術師には、魔力をブーストする魔道具を作ってもらうよりははるかに安上がりです。
他のギルドも大体似たようなものです。
鍛冶ギルドならば素材を取りに行かなくても通常のものはある程度置いています。
もっとも希少な物はやはり取りに行く必要がありますがねぇ。
冒険者ギルドでは魔物討伐や護衛の依頼を受けることが出来ます。別に個別に依頼を受けることも可能なのですが、情報量も圧倒的に違いますし、なにしろ依頼料の踏み倒しがありません。
依頼を受ける段階で、冒険者ギルドが依頼主から料金を徴収し、管理するからです。
これ結構重宝されるのですよ。
いや~、いいシステムですね。
それとは別に、ここにはちょっと面白いことがあります。そう、冒険者ギルドでは魔物から取れる素材を売っているのです。冒険者達は迷宮や盗賊討伐などで獲た物を売って生活している人もいます。物によっては魔術師ギルド、鍛冶ギルドに売るのですが、魔物の素材を扱い、大量に保管できるところはここしかありません。
まぁ、持ちつ持たれつですね。
で、最後に商工会です。これは街の中で商売するための組織です。ここでは商売を始めるための登録、トラブルの仲裁、運転資金の貸し付け等をやっています。当然、開業する場所の斡旋もしてくれます。
とーぜん、私も斡旋してもらいました。月いくらという単位で場所代は取られますが、わりかし安いほうです。
ここに登録しないでも商売は出来ますが、場所取り合戦しなくてすみますからねぇ。指定場所が取られていても商工会がすぐに動いてくれますから。
そう、こわ~いお兄さん達が来るんですよ。真っ黒な鎧やローブに身を包んだ人達が・・・・・・
だいたいこんなところですかね。
でわ、ギルド巡りにいってきます。
定食屋ハズキを出た後、私は中央広場に来ていた。様々な露天が立ち並び、様々な人が行き交っている。近くの建物には武器屋、防具屋、魔道具屋、日用雑貨屋、食料品店など店舗型の店が並んでいた。魔術修行に行っている間に街並みはずいぶんと変わっていた。
中央広場はかなりの広さだ。店舗型と露天が共存できる程だ。取りあえず私は一番近い冒険者ギルドに向かった。
中央広場から2本入ったところにギルドはあった。場所は昔と変わっていない。
扉を開け、中に入った。昼をまわってすぐなので冒険者はほとんどいなかった。入り口から5mくらいのところに3人の女性が座っている。その中の1人が声をかけてきた。エルフだ。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件ですか?」
役所のエルフとは違い、にこやかに話しかけてきた。私はその受付のエルフに近づき、見つめてしまった。
エルフにしては特徴がありすぎる。華奢な身体、長い耳等は通常のエルフのそれなのだが、髪と瞳の色が根本的に違う。
深紅の髪に深紅の瞳。
このようなエルフは見たことがなかった。
声を掛けてきたエルフはぼーっとしている私の目の前でひらひらと手を振っている。
「あっ・・・・・・ああ、すみません、えと冒険者登録をしたいのですが」
私はエルフから目をそらしながら目的を告げる。
「はい!冒険者登録ですね。どちらの指輪をお持ちですか?」
「これですが・・・・・・」
右手の小指にはまっている住民用の指輪を見せた。
「はい、それではこちらに手をかざしてください」
受付のエルフがこぶし大の水晶球を机の上に置く。私はそのまま水晶球の上に手をかざした。その瞬間指輪と水晶球の間で光りのやりとりが始まる。
両方に光りが吸収され、水晶はもとの水腫球へと戻っていた。
「はい、登録完了です。カーソン・デロクロワ様ですね。ようこそルイスの冒険者ギルドへ。それではギルドの説明に入ります」
それから暫く、受付のエルフさんの説明を延々と聞くことになった。
冒険者ギルドにはランクというものがある。それは実力ではなく、どれだけ依頼をこなしたかということで判断される。
ランクも大まかに3つに分類される。
一つは、魔物や盗賊などを退治するハンター系ランク。
次に、依頼された物を探してくるエクスプロレーション系ランク。
最後に隊商や用心などを護衛するガーズ系ランク。
特に系統を選ぶ必要は無く、依頼が発生し依頼を成功させると、内容が指輪に記憶される。
ちなみにガーズ系ランクは依頼主から完了のサインを記載された特殊な羊皮紙をもらう必要がある。
結局のところ、すべては指輪ありきなのだ。
ランクはE、D、C、B、A、S、SSと七つに分かれているらしい。
それは依頼をこなした回数とその難度で決まる。ランクが低くても、高ランクの依頼は受けることは出来る。
要は依頼人とうまく交渉し、解決すればよいということらしい。
冒険者ギルドは、依頼の仲介、斡旋、大規模な依頼があったときの取りまとめ、アイテムの買い取りと販売、滞在許可証の更新が仕事ということだ。
魔物素材などの買い取りや商品の量は、全ギルドの中で最大規模だという。
「・・・・・・以上で説明を終わりますが、何かご不明な点はございますか?」
元気だ。このエルフのおねーさん元気すぎる。延々と一人で半刻程話し続けていたのに、まだまだ話したりないという感じだ。
しかも、役所のエルフとは違い抑揚をつけて、おまけに世間話を混ぜて話してくる。
・・・・・・疲れた。
「どうしました?」
にこりと笑って受付のエルフのおねーさんは私の顔を覗き込んだ。
「いや、エルフの方のもいろいろな方がおられるのだなぁ・・・・・・と」
なにげに呟いた一言に喰いついてきた。
「どういうことです?いろいろなエルフ?確かにエルフには様々な種類のエルフがいますが。ちなみにわたしは古代エルフですが・・・・・・、って、あ、今のは忘れてください!。この街でこのことを知っているのはあなたとわたしも含めて3人だけですので」
目の前のエルフは両手を合わせ、頭を下げている。
なんというか、天然なんだな。うん。
古代エルフ。数万年を生きるエルフだ。森を生きる普通のエルフの寿命が500年程。ダークエルフも同じくらい。ハーフエルフは200年くらいだ。
後はハイエルフという閉鎖的なエルフの種族がいる。こちらは生態がほとんどわかっていない。ちなみに古代エルフはさらにわかっていない。全くの謎の種族なのだ。
それが目の前にいる。私は自然と笑みがこぼれていた・・・・・・ようだ。
「あ、あのう、怖いですよ。その笑み・・・・・・」
受付のエルフは顔が引きつっていた。それはそうだろう。種族を明かした瞬間ににやけられたのだ。奴隷商かと思われたようだ。
「ああ、失礼いたしました。私は魔術師でして、そのぅ変わった種族の方にお会いしたので知的好奇心がつい・・・・・・」
「・・・・・・あぁ、そういうことでしたか。それは・・・・・・」
まだ警戒は解いていないようだ。危ない人と認識されたらしい。まあ、そりゃそうだ。
ここは一押ししておくかな。
「あの、ぶしつけで申し訳ないのですが、いずれ古代エルフのことをお聞かせ願えませんでしょうか。もちろん料金は払いますし、情報は漏らしません」
我ながら本当にぶしつけな提案だと思う。しかも初対面で・・・・・・。端から見たら口説いてるようにしか見えないのだろうなぁ。
「え、あ、あの、私、今あなたのお名前を知ったばかりなのですけど・・・・・・」
そういえば相手の名前すら知らなかった。しかも私は名乗ってすらいない。困惑する受付のエルフに自己紹介をした。
「私、今度この街で付与魔術師として仕事を始めるカーソン・デロクロワと申します。突然失礼いたしました。今後ともよろしくお願いいたします」
取りあえず、丁寧に自己紹介をする。相手も取りあえず名乗ってくれた。警戒心は丸出しだったが・・・・・・。
「私は冒険者ギルドで受付事務をやっております、フォルティーナ・エル・ゴチックと申します」
フォルティーナは腰まで伸びる深紅の髪が美しいエルフだ。眼も深紅の瞳というエルフにしては派手な感じだ。
古代エルフなんか初めて見たので、これが古代エルフの特徴なのかと勝手に想像する。
しかし、隠してる割には目立ってるよなぁ。
耳は普通のエルフと大して変わらない。身体も華奢で、細身である。ぴったりフィットした服を着ているので身体のラインが丸出しになっている。
「あ、あの、恥ずかしいのでじろじろ見ないでください・・・・・・」
先程、元気よく説明していた姿とは似つかない、消え入るような声で話しかけてきた。
私はそんなにじろじろ見ていたつもりはなかったのだが・・・。
「あ、申し訳ありません、えっと・・・・・・」
「フォルテーナ、フォルテで結構です・・・・・・」
フォルテの警戒はまだ解けていないようだ。仕方が無い、今回は私が悪い。
日を改めるとしよう。そう思い、軽く挨拶をして立ち上がった。フォルテも同時に立ち上がる。
「それでは、失礼いたします」
私が出口まで行くと、フォルテも見送りに出てくれた。
「またのご利用、お待ちしております・・・・・・」
(あ~、失敗したな)
私は冒険者ギルドを出て、次の目的地である魔術師ギルドへ向かっていた。それにしても古代エルフとは・・・・・・。
初めて見たのでにわかには信じられないが、本当だろう。何故かそのような確信があった。
どうやって、話を聞けるようにするかを考えながら歩いていると、目的地である魔術師ギルドへ着いた。
建物はこぢんまりとしている。
大きな街の魔術師ギルドにしてはあまりにも小さい。10坪程度しかない。
取りあえず中へ入ってみる。そこにはとんでもない空間が待っていた。
正面には20代くらいの男性と、50代くらいの女性が座っていた。二人ともローブを着ている。
男性は灰色のローブ、女性は紫色のローブ。
しかし、私にとってそんなことはどうでもよかった。
このギルドの設計に興味がわいた。
空間そのものが異質だった。半円状の受付の後ろには左右に巨大な空間がある。片方に通じる通路には魔術道具販売所と書かれている。もう片方の通路の入り口には資料室と書かれている。
両方とも高さだけでも10メートルはある。奥行きはどれくらいあるのかわからない・・・・・・。
「ようこそ、魔術師ギルドへ」
私があれこれと考えを巡らせていると女性の魔術師から声がかかった。取りあえず私は興味を捨て置き、半円状の受付の方まで移動した。
「今日はどのようなご用件でしょうか?お買い物でしょうか?それとも資料の閲覧でしょうか?」
先程の女性から声がかかる。きりっとした聡明そうな女性だ。横に座る20代の若者はまだ見習いといったところだろう。
「いえ、今日はギルドに登録に来ました」
女性はにっこりと笑った。
「それではこちらの方に手をかざしてください」
横に座っていた若者が、冒険者ギルドで出された物と同じような水晶球を取り出した。
私は黙ってそれに手をかざした。しかし、先程とは少し違う。冒険者ギルドの登録とは別の何かが流れ込もうとした。
それだけではない。こちらから通常の情報以外の何かを吸い取ろうとしている。
「む!」
私はとっさに高音言語魔法を唱え、手の先端から全身に防御結界を張る。
高音言語魔法、これは、普通に出回っている魔法ではない。遙か古代に使われていた魔法だ。
師匠との修行中に偶然遺跡から見つけた物だ。見つかった本は、この言語の体系を記した物だった。
この解読には2人がかりで2年を要した。2年と言っても通常の2年ではない。
師匠の秘術中の秘術、時間操作の魔法で特殊な空間を作り、その中で解読した物だ。その空間の時間軸は通常の100分の1の時間で流れている。
つまり解読に要した時間は、通常空間の時間で200年かかったと言うことだ。
ばちっ ばちっ
水晶球と私の手の間で激しい魔力の渦が巻き起こっていた。
受付の二人はあわてて防御結界を張ろうとしている。受付周辺にも強力な結界が構築されてゆく。
どうやら危険が迫ったら自動的に発動する仕組みのようだ。
ぱんっ
という音と共に、水晶球が割れ、濁流のように大量の魔力が漏れ出した。
私は次の魔術を唱えていた。何者にも聞こえない詠唱が終わると胸元にあるアミュレットが黒く輝き出す。それは溢れ出した魔力を飲み込み始めた。
渦巻いていた魔力は徐々に薄れてゆく。そしてアミュレットの闇の光りは目の前にいる二人の防御結界をも飲み込み始めた。
私は魔力の暴発の危険が去ったことを確認し、アミュレットの動作を停止した。そして二人の受付の無事を確認する。二人は無事だったがその間にあった半円状の受付は完全に消滅し、小さなクレーターが出来ていた。
「あ、あなた、何者?」
女性の方が震える声で話しかけてくる。防御結界はまだ解いていない。
「いや、ただの付与魔術師ですが・・・・・・、ギルドの登録を・・・・・・」
すべての言葉を出す前に販売所と資料室の方から魔術師らしき者達数人が駆け込んできた。彼らの頭上にはいくつもの火球や雷球、風刃が浮いている。
「なにやつ、何が目的だ!」
入ってきた魔術師の中で紫色のローブを着た男が声を掛けた。敵意がむき出しだ。
師匠は常に言っていた。障害は叩きつぶせ・・・・・・と。
しかし、ここは冷静にならねば・・・・・・、ここで追い出されたら商売が出来ない。
私は黙って両手を挙げた。防御結界は解かない。
「わたしは、カーソン・デロクロワと申します。ギルドに登録に来たのですが、水晶球の反応がおかしかったので防御結界を張らせていただきました。まさか水晶球が暴走するとは思ってもいなかったもので・・・・・・」
これは本心である。本当にそう思っていたのだ・・・・・・断じて嘘ではない!あれ?誰に言ってるのだろ?
「あなた、魔術師ギルドの登録は初めて?」
先程受付にいた女性が声を掛けてきた。すでに防御結界はない。私が初めてだというと水晶球の効果を説明してくれた。
駆けつけた他の魔術師にも害はないはずだと言って下がるように言った。
(もしかしてお偉いさん?)
私は心の中で呟いていた。
水晶球の効果。それは魔法の楔を刻むことと、魔力の質と総量を記録することが目的だったらしい。
楔を刻むのは、犯罪を犯したときに追跡できるようにするためで、これも指輪に刻まれる。
そして、追跡するために人それぞれ違う魔力の質を登録する。
あとは総量の記録だ。これは万が一の時に対応に当たる人数を決めるために計っていたらしい。
この測定法は各国共通でということだ。つまり・・・・・・、教えていなかった師匠が悪い!
私は事情を説明し、頭をお下げた。ギルド側も謝罪を受け入れてくれた。
そして、魔術師ギルドの説明が別室で始まった。対応してくれているのは先程の女性魔術師だ。
一緒にいた男性は受付の修復をしているそうだ。いや、まっこと申し訳ない。
さて魔術師ギルドは、タリスマンやアミュレット、杖や魔道書などを売っている。また、さまざまなマジックアイテムや、特殊な素材も扱っているそうだ。
魔獣などの牙や骨、様々な物を扱っている。ここは冒険者ギルドと同じだ
そしてもう一つの目玉が、資料室だ。ここにはかなりの量の魔道書が補完されているらしい。大体10万冊前後だという。
ギルドの登録が済めば一般の物は自由に閲覧することが出来る。しかし、禁書庫は魔術師ランクが影響するらしい。
もっとも高ランクの職員が一緒なら入れるということらしいが。
魔術師ランクは冒険者ギルドと同じく7つに別れているそうだ。
基本はほぼ一緒なのだが、冒険者ギルドと違うのは系統の別れ方だ。
研究で実績を重ね、ランクを上げるスタディ系。
冒険者や討伐でランクを上げるハンター系。
護衛などとして動く、ガーズ系。
この中に火、雷、雪、風、精神、召喚、付与等さまざまな系統に別れランクが設定されている。
例えばハンターランクD、火系統Cという感じだ。
ハンターとしてはDランクだが、火系統の魔術の力はCランク相当あるという意味になる。
系統ランクは定期的に魔力の質を計ることによって確認できると言うことだ。
最終的に指輪に記録される。まったくなんて容量のでかい指輪なんだ。
とりあえず、先程の登録の続きをやって魔術師ギルドに登録した。
ただし、高音言語魔法は感知されなかったようだ。
ギルドの空間について質問してみたが、秘密とのことだった。大体の予測は付いているが・・・・・・。
最後に女性が名乗ってくれた。
「私は、ネタヴィア・アルソン。ここルイスの街の副ギルドマスターをしています。何かあったら声を掛けてください」
どうやら、気に入ってくれたようだ。ギルドの上層部に知り合いがいて困ることはない。わたしはもう一度名前を名乗って、女性の魔術師に挨拶をすると魔術師ギルドを後にした。
その時には、入り口のカウンターはすでに元に戻っていた。
ん?恋人かって? いやいや違いますよ。
彼女は妹のようなものです。
確かにスタイルは良いし、元気いっぱいの、ちょっとおっちょこちょいな子でかわいらしいのですが、恋愛対象ではないですね。それに彼女一人っ子だし。
まぁ、それは置いておくとして、これから午後はギルド登録になるのですが、ギルドというものを少し紹介しておきます。
ギルドとは正確には同じ職業の技術を持った集団というところでしょうか。ギルドに所属しなくてもその職業が出来ないわけではありません。はい。
ただ、いろいろな優遇が受けられるのと、信用が得られることが、最大の恩恵です。
例えば、魔術師ギルドでは、通常の図書館には置いていない特殊な専門書を読むことが出来るようになります。また、魔道具の販売もしてくれます。
これは作るのに手間のかかるものを買ってきて出来合いのものにはめ込んで使うということもできます。
あ、私はやりませんよ。そこは付与魔術師としてのプライドがありますから。
ただし、付与魔術を治めていない魔術師には、魔力をブーストする魔道具を作ってもらうよりははるかに安上がりです。
他のギルドも大体似たようなものです。
鍛冶ギルドならば素材を取りに行かなくても通常のものはある程度置いています。
もっとも希少な物はやはり取りに行く必要がありますがねぇ。
冒険者ギルドでは魔物討伐や護衛の依頼を受けることが出来ます。別に個別に依頼を受けることも可能なのですが、情報量も圧倒的に違いますし、なにしろ依頼料の踏み倒しがありません。
依頼を受ける段階で、冒険者ギルドが依頼主から料金を徴収し、管理するからです。
これ結構重宝されるのですよ。
いや~、いいシステムですね。
それとは別に、ここにはちょっと面白いことがあります。そう、冒険者ギルドでは魔物から取れる素材を売っているのです。冒険者達は迷宮や盗賊討伐などで獲た物を売って生活している人もいます。物によっては魔術師ギルド、鍛冶ギルドに売るのですが、魔物の素材を扱い、大量に保管できるところはここしかありません。
まぁ、持ちつ持たれつですね。
で、最後に商工会です。これは街の中で商売するための組織です。ここでは商売を始めるための登録、トラブルの仲裁、運転資金の貸し付け等をやっています。当然、開業する場所の斡旋もしてくれます。
とーぜん、私も斡旋してもらいました。月いくらという単位で場所代は取られますが、わりかし安いほうです。
ここに登録しないでも商売は出来ますが、場所取り合戦しなくてすみますからねぇ。指定場所が取られていても商工会がすぐに動いてくれますから。
そう、こわ~いお兄さん達が来るんですよ。真っ黒な鎧やローブに身を包んだ人達が・・・・・・
だいたいこんなところですかね。
でわ、ギルド巡りにいってきます。
定食屋ハズキを出た後、私は中央広場に来ていた。様々な露天が立ち並び、様々な人が行き交っている。近くの建物には武器屋、防具屋、魔道具屋、日用雑貨屋、食料品店など店舗型の店が並んでいた。魔術修行に行っている間に街並みはずいぶんと変わっていた。
中央広場はかなりの広さだ。店舗型と露天が共存できる程だ。取りあえず私は一番近い冒険者ギルドに向かった。
中央広場から2本入ったところにギルドはあった。場所は昔と変わっていない。
扉を開け、中に入った。昼をまわってすぐなので冒険者はほとんどいなかった。入り口から5mくらいのところに3人の女性が座っている。その中の1人が声をかけてきた。エルフだ。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件ですか?」
役所のエルフとは違い、にこやかに話しかけてきた。私はその受付のエルフに近づき、見つめてしまった。
エルフにしては特徴がありすぎる。華奢な身体、長い耳等は通常のエルフのそれなのだが、髪と瞳の色が根本的に違う。
深紅の髪に深紅の瞳。
このようなエルフは見たことがなかった。
声を掛けてきたエルフはぼーっとしている私の目の前でひらひらと手を振っている。
「あっ・・・・・・ああ、すみません、えと冒険者登録をしたいのですが」
私はエルフから目をそらしながら目的を告げる。
「はい!冒険者登録ですね。どちらの指輪をお持ちですか?」
「これですが・・・・・・」
右手の小指にはまっている住民用の指輪を見せた。
「はい、それではこちらに手をかざしてください」
受付のエルフがこぶし大の水晶球を机の上に置く。私はそのまま水晶球の上に手をかざした。その瞬間指輪と水晶球の間で光りのやりとりが始まる。
両方に光りが吸収され、水晶はもとの水腫球へと戻っていた。
「はい、登録完了です。カーソン・デロクロワ様ですね。ようこそルイスの冒険者ギルドへ。それではギルドの説明に入ります」
それから暫く、受付のエルフさんの説明を延々と聞くことになった。
冒険者ギルドにはランクというものがある。それは実力ではなく、どれだけ依頼をこなしたかということで判断される。
ランクも大まかに3つに分類される。
一つは、魔物や盗賊などを退治するハンター系ランク。
次に、依頼された物を探してくるエクスプロレーション系ランク。
最後に隊商や用心などを護衛するガーズ系ランク。
特に系統を選ぶ必要は無く、依頼が発生し依頼を成功させると、内容が指輪に記憶される。
ちなみにガーズ系ランクは依頼主から完了のサインを記載された特殊な羊皮紙をもらう必要がある。
結局のところ、すべては指輪ありきなのだ。
ランクはE、D、C、B、A、S、SSと七つに分かれているらしい。
それは依頼をこなした回数とその難度で決まる。ランクが低くても、高ランクの依頼は受けることは出来る。
要は依頼人とうまく交渉し、解決すればよいということらしい。
冒険者ギルドは、依頼の仲介、斡旋、大規模な依頼があったときの取りまとめ、アイテムの買い取りと販売、滞在許可証の更新が仕事ということだ。
魔物素材などの買い取りや商品の量は、全ギルドの中で最大規模だという。
「・・・・・・以上で説明を終わりますが、何かご不明な点はございますか?」
元気だ。このエルフのおねーさん元気すぎる。延々と一人で半刻程話し続けていたのに、まだまだ話したりないという感じだ。
しかも、役所のエルフとは違い抑揚をつけて、おまけに世間話を混ぜて話してくる。
・・・・・・疲れた。
「どうしました?」
にこりと笑って受付のエルフのおねーさんは私の顔を覗き込んだ。
「いや、エルフの方のもいろいろな方がおられるのだなぁ・・・・・・と」
なにげに呟いた一言に喰いついてきた。
「どういうことです?いろいろなエルフ?確かにエルフには様々な種類のエルフがいますが。ちなみにわたしは古代エルフですが・・・・・・、って、あ、今のは忘れてください!。この街でこのことを知っているのはあなたとわたしも含めて3人だけですので」
目の前のエルフは両手を合わせ、頭を下げている。
なんというか、天然なんだな。うん。
古代エルフ。数万年を生きるエルフだ。森を生きる普通のエルフの寿命が500年程。ダークエルフも同じくらい。ハーフエルフは200年くらいだ。
後はハイエルフという閉鎖的なエルフの種族がいる。こちらは生態がほとんどわかっていない。ちなみに古代エルフはさらにわかっていない。全くの謎の種族なのだ。
それが目の前にいる。私は自然と笑みがこぼれていた・・・・・・ようだ。
「あ、あのう、怖いですよ。その笑み・・・・・・」
受付のエルフは顔が引きつっていた。それはそうだろう。種族を明かした瞬間ににやけられたのだ。奴隷商かと思われたようだ。
「ああ、失礼いたしました。私は魔術師でして、そのぅ変わった種族の方にお会いしたので知的好奇心がつい・・・・・・」
「・・・・・・あぁ、そういうことでしたか。それは・・・・・・」
まだ警戒は解いていないようだ。危ない人と認識されたらしい。まあ、そりゃそうだ。
ここは一押ししておくかな。
「あの、ぶしつけで申し訳ないのですが、いずれ古代エルフのことをお聞かせ願えませんでしょうか。もちろん料金は払いますし、情報は漏らしません」
我ながら本当にぶしつけな提案だと思う。しかも初対面で・・・・・・。端から見たら口説いてるようにしか見えないのだろうなぁ。
「え、あ、あの、私、今あなたのお名前を知ったばかりなのですけど・・・・・・」
そういえば相手の名前すら知らなかった。しかも私は名乗ってすらいない。困惑する受付のエルフに自己紹介をした。
「私、今度この街で付与魔術師として仕事を始めるカーソン・デロクロワと申します。突然失礼いたしました。今後ともよろしくお願いいたします」
取りあえず、丁寧に自己紹介をする。相手も取りあえず名乗ってくれた。警戒心は丸出しだったが・・・・・・。
「私は冒険者ギルドで受付事務をやっております、フォルティーナ・エル・ゴチックと申します」
フォルティーナは腰まで伸びる深紅の髪が美しいエルフだ。眼も深紅の瞳というエルフにしては派手な感じだ。
古代エルフなんか初めて見たので、これが古代エルフの特徴なのかと勝手に想像する。
しかし、隠してる割には目立ってるよなぁ。
耳は普通のエルフと大して変わらない。身体も華奢で、細身である。ぴったりフィットした服を着ているので身体のラインが丸出しになっている。
「あ、あの、恥ずかしいのでじろじろ見ないでください・・・・・・」
先程、元気よく説明していた姿とは似つかない、消え入るような声で話しかけてきた。
私はそんなにじろじろ見ていたつもりはなかったのだが・・・。
「あ、申し訳ありません、えっと・・・・・・」
「フォルテーナ、フォルテで結構です・・・・・・」
フォルテの警戒はまだ解けていないようだ。仕方が無い、今回は私が悪い。
日を改めるとしよう。そう思い、軽く挨拶をして立ち上がった。フォルテも同時に立ち上がる。
「それでは、失礼いたします」
私が出口まで行くと、フォルテも見送りに出てくれた。
「またのご利用、お待ちしております・・・・・・」
(あ~、失敗したな)
私は冒険者ギルドを出て、次の目的地である魔術師ギルドへ向かっていた。それにしても古代エルフとは・・・・・・。
初めて見たのでにわかには信じられないが、本当だろう。何故かそのような確信があった。
どうやって、話を聞けるようにするかを考えながら歩いていると、目的地である魔術師ギルドへ着いた。
建物はこぢんまりとしている。
大きな街の魔術師ギルドにしてはあまりにも小さい。10坪程度しかない。
取りあえず中へ入ってみる。そこにはとんでもない空間が待っていた。
正面には20代くらいの男性と、50代くらいの女性が座っていた。二人ともローブを着ている。
男性は灰色のローブ、女性は紫色のローブ。
しかし、私にとってそんなことはどうでもよかった。
このギルドの設計に興味がわいた。
空間そのものが異質だった。半円状の受付の後ろには左右に巨大な空間がある。片方に通じる通路には魔術道具販売所と書かれている。もう片方の通路の入り口には資料室と書かれている。
両方とも高さだけでも10メートルはある。奥行きはどれくらいあるのかわからない・・・・・・。
「ようこそ、魔術師ギルドへ」
私があれこれと考えを巡らせていると女性の魔術師から声がかかった。取りあえず私は興味を捨て置き、半円状の受付の方まで移動した。
「今日はどのようなご用件でしょうか?お買い物でしょうか?それとも資料の閲覧でしょうか?」
先程の女性から声がかかる。きりっとした聡明そうな女性だ。横に座る20代の若者はまだ見習いといったところだろう。
「いえ、今日はギルドに登録に来ました」
女性はにっこりと笑った。
「それではこちらの方に手をかざしてください」
横に座っていた若者が、冒険者ギルドで出された物と同じような水晶球を取り出した。
私は黙ってそれに手をかざした。しかし、先程とは少し違う。冒険者ギルドの登録とは別の何かが流れ込もうとした。
それだけではない。こちらから通常の情報以外の何かを吸い取ろうとしている。
「む!」
私はとっさに高音言語魔法を唱え、手の先端から全身に防御結界を張る。
高音言語魔法、これは、普通に出回っている魔法ではない。遙か古代に使われていた魔法だ。
師匠との修行中に偶然遺跡から見つけた物だ。見つかった本は、この言語の体系を記した物だった。
この解読には2人がかりで2年を要した。2年と言っても通常の2年ではない。
師匠の秘術中の秘術、時間操作の魔法で特殊な空間を作り、その中で解読した物だ。その空間の時間軸は通常の100分の1の時間で流れている。
つまり解読に要した時間は、通常空間の時間で200年かかったと言うことだ。
ばちっ ばちっ
水晶球と私の手の間で激しい魔力の渦が巻き起こっていた。
受付の二人はあわてて防御結界を張ろうとしている。受付周辺にも強力な結界が構築されてゆく。
どうやら危険が迫ったら自動的に発動する仕組みのようだ。
ぱんっ
という音と共に、水晶球が割れ、濁流のように大量の魔力が漏れ出した。
私は次の魔術を唱えていた。何者にも聞こえない詠唱が終わると胸元にあるアミュレットが黒く輝き出す。それは溢れ出した魔力を飲み込み始めた。
渦巻いていた魔力は徐々に薄れてゆく。そしてアミュレットの闇の光りは目の前にいる二人の防御結界をも飲み込み始めた。
私は魔力の暴発の危険が去ったことを確認し、アミュレットの動作を停止した。そして二人の受付の無事を確認する。二人は無事だったがその間にあった半円状の受付は完全に消滅し、小さなクレーターが出来ていた。
「あ、あなた、何者?」
女性の方が震える声で話しかけてくる。防御結界はまだ解いていない。
「いや、ただの付与魔術師ですが・・・・・・、ギルドの登録を・・・・・・」
すべての言葉を出す前に販売所と資料室の方から魔術師らしき者達数人が駆け込んできた。彼らの頭上にはいくつもの火球や雷球、風刃が浮いている。
「なにやつ、何が目的だ!」
入ってきた魔術師の中で紫色のローブを着た男が声を掛けた。敵意がむき出しだ。
師匠は常に言っていた。障害は叩きつぶせ・・・・・・と。
しかし、ここは冷静にならねば・・・・・・、ここで追い出されたら商売が出来ない。
私は黙って両手を挙げた。防御結界は解かない。
「わたしは、カーソン・デロクロワと申します。ギルドに登録に来たのですが、水晶球の反応がおかしかったので防御結界を張らせていただきました。まさか水晶球が暴走するとは思ってもいなかったもので・・・・・・」
これは本心である。本当にそう思っていたのだ・・・・・・断じて嘘ではない!あれ?誰に言ってるのだろ?
「あなた、魔術師ギルドの登録は初めて?」
先程受付にいた女性が声を掛けてきた。すでに防御結界はない。私が初めてだというと水晶球の効果を説明してくれた。
駆けつけた他の魔術師にも害はないはずだと言って下がるように言った。
(もしかしてお偉いさん?)
私は心の中で呟いていた。
水晶球の効果。それは魔法の楔を刻むことと、魔力の質と総量を記録することが目的だったらしい。
楔を刻むのは、犯罪を犯したときに追跡できるようにするためで、これも指輪に刻まれる。
そして、追跡するために人それぞれ違う魔力の質を登録する。
あとは総量の記録だ。これは万が一の時に対応に当たる人数を決めるために計っていたらしい。
この測定法は各国共通でということだ。つまり・・・・・・、教えていなかった師匠が悪い!
私は事情を説明し、頭をお下げた。ギルド側も謝罪を受け入れてくれた。
そして、魔術師ギルドの説明が別室で始まった。対応してくれているのは先程の女性魔術師だ。
一緒にいた男性は受付の修復をしているそうだ。いや、まっこと申し訳ない。
さて魔術師ギルドは、タリスマンやアミュレット、杖や魔道書などを売っている。また、さまざまなマジックアイテムや、特殊な素材も扱っているそうだ。
魔獣などの牙や骨、様々な物を扱っている。ここは冒険者ギルドと同じだ
そしてもう一つの目玉が、資料室だ。ここにはかなりの量の魔道書が補完されているらしい。大体10万冊前後だという。
ギルドの登録が済めば一般の物は自由に閲覧することが出来る。しかし、禁書庫は魔術師ランクが影響するらしい。
もっとも高ランクの職員が一緒なら入れるということらしいが。
魔術師ランクは冒険者ギルドと同じく7つに別れているそうだ。
基本はほぼ一緒なのだが、冒険者ギルドと違うのは系統の別れ方だ。
研究で実績を重ね、ランクを上げるスタディ系。
冒険者や討伐でランクを上げるハンター系。
護衛などとして動く、ガーズ系。
この中に火、雷、雪、風、精神、召喚、付与等さまざまな系統に別れランクが設定されている。
例えばハンターランクD、火系統Cという感じだ。
ハンターとしてはDランクだが、火系統の魔術の力はCランク相当あるという意味になる。
系統ランクは定期的に魔力の質を計ることによって確認できると言うことだ。
最終的に指輪に記録される。まったくなんて容量のでかい指輪なんだ。
とりあえず、先程の登録の続きをやって魔術師ギルドに登録した。
ただし、高音言語魔法は感知されなかったようだ。
ギルドの空間について質問してみたが、秘密とのことだった。大体の予測は付いているが・・・・・・。
最後に女性が名乗ってくれた。
「私は、ネタヴィア・アルソン。ここルイスの街の副ギルドマスターをしています。何かあったら声を掛けてください」
どうやら、気に入ってくれたようだ。ギルドの上層部に知り合いがいて困ることはない。わたしはもう一度名前を名乗って、女性の魔術師に挨拶をすると魔術師ギルドを後にした。
その時には、入り口のカウンターはすでに元に戻っていた。
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