こちら付与魔術師でございます

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こちら付与魔術師でございます Ⅲ 鍛冶ギルド・商工会編

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 さて、なんやかやで4時近くになりました。おっとまずい。商工会は夜までやっていますが、鍛冶ギルドは夕方までなんですね。
 え?何故かって?
それは・・・・・

それは、この国では公務員は24時間の交代勤務です。あ、一応3交代ですよ。
それも6時間交代というユル~いお仕事なのです。
商工会は一応、国家経営ですから24時間対応なんです。

鍛冶ギルドは、ん~、中に鍛錬所なんかがあるんですが、ほら、町中でしょ。
夜にトンテンカンテンなんかやった日にゃぁ。

役所で商工会の登録も出来内のかって? ねぇ、だってお役所縦割りですよ。
譲るもんですか既○権益を・・・・・・えへんえへん

そういうことで次は鍛冶ギルドへいきます。

鍛冶ギルドは、まぁそのままなんですけどね。要は鍛冶屋さんの団体です。鍛冶屋といっても武器職人もいれば防具職人もいる、

細工物が得意な冶金師、農機具や生活雑貨専門の鍛冶屋等様々な人達がいるんです。

それを取りまとめているのがこのギルドです。年に1回鍛冶職人コンテストなんかを開いたりもしているようです。

ギルドでは様々な素材を買うことも出来ます。ま、ピンキリですがね。それこそ良いものは値段が高いですから・・・・・・。

ただ発掘に行く必要は無いですよね。危険無くしてある程度の品質の物をお金で手に入れられるところですから。

それは重宝します。ふつうに鍛冶屋やる分にはギルドの素材で十分なのです。

 ん?聞きたいことがある?

 なんでしょ?

 高音言語魔法のことについて?

 あぁ、あれは後日ということで・・・・・・。いや鍛冶ギルドにいかなきゃなんないんですよ。
今日中に済ませないと明日のルーミィとの約束が・・・・・・。

 それに高音言語魔法は私の隠し球です。簡単には教えません。

 アミュレット?それもまだ秘密です。今度紹介しますよ。

 それでは鍛冶ギルドへいきます。

 

 鍛冶ギルドはルイスの街の西側へあった。もうすでに閉館の時間近い。私はなんとか閉まる前にギルドへ飛び込んだ。
ギルドの受付に座っているひげもじゃの小男が、何事かというほどに、目を見開いている。

 「・・・・・・すっ、すみません、登録をしたいのですが、間に合いますか」

 私は魔術師ギルドからここまで3km程走っていた。身体と喉が悲鳴を上げていた。

 「あー、んー、良いよ」

 ひげもじゃの小男は野太い声で返事を返した。取りあえず座れと椅子を勧める。
私は好意に甘え、腰を下ろした。疲れが一気に吹き出してくる。
ひげもじゃの男は一度奥に行き、木のコップに何かを入れてきた。

「まぁ、一息つきなされ」

 差し出されたのは無臭の透明な液体だった。

 「いただきます」

 喉が渇いていた私は、出された液体を一気に飲み干した。
 口をつける瞬間、ひげもじゃの小男が

 「あっ」

 と何か言いかけたが私はそれを無視した。そして後悔した。

 「げへ、げへ、ごほ」

 それはほどよい冷たさを持っていたが、喉を通るときには熱い別の物へ変化していた。

 火酒

 アルコールが90度を越える酒だった。冒険者やドワーフなど酒に強い者が好む酒。それが火酒だ。
 私は目の前が急にくるくると回り出すのを感じながら意識を失った。


「・・・・・・大丈夫かの?」

「若いから大丈夫じゃ・・・・・・きっと」

 ささやき声を聞きながら私は目を覚ました。目の前に二人のひげもじゃの顔が並んでいる。

「おぉ、若いの気がついたか!」

   声がでかい。頭がズキズキする。
  
  「あぁ、私はどうなったんですか?」
  
  起き上がりながら周りを観察する。
そこは先程座っていた椅子から、少し離れたソファーの上だった。
  
  「んー、喉が渇いておるじゃろうと思って出した儂の酒をいっきに飲んでぶっ倒れたんじゃ」
  
  そういいながら、ガハガハと笑っている。そういえば火酒を一気に飲み干した気がする・・・・・・。
  
  「えと、どれくらい寝てたんでしょうか?」
  
  私は外を見ようとした。しかし、どこにも窓はない。
  
  「んー、一刻ほどじゃの~」
  
   ひとりのひげもじゃが答えた。彼らはドワーフと呼ばれる種族だ。通常ドワーフは山に住み、鉱物を掘って生活の糧としている。  
   たまに街に住み着く者もいる。この二人はその類いだろう。二人の内、一人が木のコップを持って来た。中にはなみなみと透明の液体が入っている。私は思わず顔を背けた。
  
  「安心せい。ただの水じゃ」
  
  そう言われ私は恐る恐る口をつけた。本当に水だった。思わず一気に飲み干した。
  
  「がっははは、また火酒と思うたかのぅ」
 
  彼らは腹を抱えて笑っている。
   
  「あのぅ、まだ登録は可能ですか?」
  
  私は本来の目的を思い出し、彼らに尋ねた。彼らは顔を見合わせ あぁ という顔をした。
  
  「大丈夫じゃよ。今からやるかの。それとも飯でも喰うか?」
  
  私はのんびりとした提案を丁寧に断り、登録作業をすることを告げた。二人は水晶球を持って戻ってきた。
  
  「ほれ、これに手をかざせ。すぐに終わるからの」
  
  私は魔術師ギルドのことを思い出しながら恐る恐る手をかざした。水晶球と指輪の間で光りの帯が行き交う。
  それはすぐに収った。今度は何も起きなかった。ホッと息を吐くとドワーフの一人が前のソファーに座っていた。
  
  「よぅし、これでお前さんも鍛冶ギルドの一員じゃ。ところでお主、えーとカーソンと言うたかの、主は何を作るのじゃ?」
  
   ドワーフは親しげに話しかけてきた。手にはコップが握られている。どうやら火酒を飲んでいるようだ。
  
  「私ですか? 私は付与魔術師ですのでマジックアイテムを作成しようと思っています」
  
  ドワーフは目を細める。
  
  「ほぅほぅほぅ、ならばお主に仕事を頼むかもしれんな。わしはバートン・ルナードという」
  
  そう言って手を出して来る。私は握り返していた。
  ドワーフと知り合いになっておけば、希少な金属が手に入るかもしれないという打算もあった。

 「よろしくお願いします。カーソン・デロクロワと言います」   
  
 そこから鍛冶ギルドの説明が始まった。

 鍛冶ギルドにも一応ランクというものがある。
 やはり七階級あるということだ。
 ランクの定義は、加工できる金属や石の種類になるという。
 はっきり言うと経験は関係ないらしい。ほとんど生まれ持った才能で出発点は決まるらしい。
 それからは工房などに弟子入りをして腕を磨く、後は努力と才能次第と言うことらしい。
 また、鍛冶職人には冶金という技術もある。これは金属などに装飾を施す技術だが、これにもランクがあるらしい。これも努力と才能(センス)だという。1%の努力と99%の才能(センス)らしい。世の中不条理だ・・・・・・。

 ちなみにバートンは両方ともSランクだそうだ(この髭のおっさんがSランクの装飾職人ねぇ・・・)

 鍛冶ギルドでは素材も扱っているということだ。主に加工した金属(インゴット)や鉱石(原石)を扱うらしい。

 たまに希少金属や竜の骨などが入るということだ。
 そこで私は竜の骨が入ったら知らせてくれるように伝え鍛冶ギルドを後にした。

 最後にもう一度火酒を勧められたが思いっきり辞退した。



 さて、遅くなったが、最後に商工会に出向く。
 ここは一度訪れていた。街に帰って最初に訪れたところがここだった。要は露天の場所探しを依頼しに言ったのだ。
 基本的に商工会は市民ではなくとも利用できる。旅の商人達が露天などを開くので滞在許可証だけで良い。
 私は、ルイスの街に帰り、真っ先にここを訪れていた。露店を探していると言うことを伝えると、ちょうど1件空いていると言うことだった。
 すぐに下見に行き、気に入ったので1ヶ月間借りることにした。滞在許可証では1ヶ月単位の契約となる。 
 そのうえ、住民登録をしている者が借りたいと申し出た場合は、そちらが優先される。実に不条理だ。
 滞在許可証で滞在している期間で住民登録をした場合は契約自体も更新となる。そのための更新費用は銀貨1枚だ。

 ちなみに私が借りた場所は、中央広場の端の方で、その先は歓楽街へと繋がっている。
 場所代は銀貨5枚。これは半日いても1日いても変わらない。
 ただし、場所を他人に化すことは出来ない。露天の出店位置は空間魔法が掛かっており、指輪の登録情報で空間魔法を解除できる。

 もし、場所を離れるときに空間魔法を忘れて、他の者が使った場合は金貨1枚の罰金が取られる。ちなみに空間魔法の鍵が掛かっている場所は薄い靄がが掛かったようになり、留守か休みだということが容易に判断できるようになっている。


 「あの、私カーソン・デロクロワと申します。広場の露店を滞在許可書で借りているのですが、市民登録をしましたので更新をお願いに着ました」

 受付に座っている40代くらいの男性に声を掛けた。男性の職員はじっとこちらを見て、指輪を見せるように言った。
 小指にはまっている指輪ともう一つの指輪を見て私の顔を見た。

「料金は銀貨1枚になりますが年度末に支払いますか?それとも今支払いますか?」

 職員の言葉に私は、今払いますといって銀貨を1枚手渡した。

 「この水晶球の手をかざしてください」

 私は言われたとおりに手をかざした。指輪と水晶球の間に光りの帯が出来る。そしてすぐに消えて亡くなった。

 「更新は終わりました。それと古物商の指輪もお持ちのようですが登録はお済みでしょうか?」

 そうだ、古物商の登録のことを忘れていた。指輪をもらっただけで登録のことをしっかり忘れていた。

 「あ、まだです。今します」

 私の言葉に職員の男性はうなずき、登録料は金貨10枚になると言った。
 私がカウンターの上に金貨10枚を置くと、職員がそれを回収し、少し待つように言って席を立つ。
 暫くして戻ってきた職員の手には赤いオーブが乗っていた。ん~、なんだろう素材が気になる。
 職員の指示に従って古物商の指輪をかざすと紅の光が指輪の中に吸い込まれていった。 指輪からは蒼い光がオーブに吸い込まれる。

 「はい、登録は完了いたしました。古物商の指輪の取り扱いには十分注意してください。なくすと罰金は金貨100枚です」

 私はさすがにゾッとした。まぁなくさないように、あとで魔法で処理をすればいいだけだ。

 露天の説明は最初に聞いていたのでその部分は聞かずに終わらせた。

  
 やっとすべての登録が終わった。明日は朝から定食屋ハズキの看板娘ルーミィとの約束がある。
 お願いがあると言っていたが何だろうと思いながら私は家路につく。

 帰り着いたときにはすでに、日を跨いでいた。

 あっ、晩ご飯食べる之忘れた・・・・・・。
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