こちら付与魔術師でございます

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こちら付与魔術師でございます

こちら付与魔術師でございます Ⅳ 多機能カバンを作りましょう

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  う~ん、昨日は大変だった~。とくに鍛冶ギルド。ありゃあ酷い目に遭った。
 
  えっ?確認せずに飲むのが悪い?
 
  ・・・・・・反論の余地がない(笑)
 
  しかしまぁ、これで商売が出来る。
  
  なになに?今日は商売はいいのか?
 
  う~ん、正直、商品がないんですよね。それに今日は朝から定食屋ハズキの看板娘ルーミィとの約束があるから・・・。
 
  あっ、ちゃんと仕事はしますよ。今日はオフにしますがね。
 
  一日付き合うのかって? どうでしょ、なんかデートというわけではなく仕事の依頼みたいな感じでしたからねぇ。
 
  まあ、会ってみないと分かりませんなぁ。こればかりは・・・・・・
 
  ちなみに一応午後からは仕事をする予定なんですよ。まぢで。
 
  今日半日かけてバッグを作るつもりです。 
 
  付与魔術師が何でそんなことを? う~んそれは、魔法のかかったバックを作る予定なんですよ。
 
  どんなバックかって?
それは・・・・・・、ねぇ。素材集めや買い物を便利にするためのバックです。
 
  ほら、何でも入るバッグってあるじゃないですか。でもあれって入るには入るんだけど、色々取り出すの面倒じゃあないですか。それに分けて入れられないですし。
 
  そこで、ちょっとオリジナルのバックを作ろうかと。
 
  ルーミィとの話の後でバッグを一つ買おうと思っているんですよ。
 
  予定では午後から初めて、夕方には完成予定ですかね。
 
  実際使って試さないと行けないので、明後日の予定の道具をついでに買いにいっちゃおーかなーって(笑)
 
  ま、営業開始は来週からかなぁ? 午前中は露天で仕事待ちをして午後からは販売用のマジックアイテムを作るっと。
 
  そんな感じですよ。
  
  んでわ
 
 
  朝早く、私は中央広場の自分の店の前にいた。ルーミィとの待ち合わせのためだ。別に私がここを指定したわけではない。
  ルーミィの方からここがいいと言ってきたのだ。しばらく待っていると、そこらを歩く人より頭二つ分背の高いルーミィが歩いてきた。
 
  (たしか2m20cmって言ってたっけ・・・・・・)
 
  「おっはよ~、カーソン~」
 
  ただでさえ目立つのにぶんぶんと手を振ってこちらに駆け寄ってくる。身体の割には足が速い。
 
  「ねぇ、待った?」
 
  かわいい笑顔で話しかけてくる。私はその元気さに少々押されながら答えた。
   
  「いや、まだ来たばっかりだよ。で、話って?」
 
  私はいきなり本題に入った。正直空気が読めない奴とよく言われる。ルーミィは頬を膨らませている。
 
  「も~、そんなに話を終わらせたいかなぁ。私、そんなに魅力ないかなぁ」

 ルーミィは聞こえるように独り言を言っていた。取りあえずスルーしておこう。

 「ねぇ、ブランチでも食べながら話しましょうよ」 

 そういえば朝ご飯食べてないな。私はルーミィの提案を受け入れ、近くのカフェへ入った。

-----カフェ-----

 カフェはちょうど朝と昼の間で、そんなに混んではいなかった。とりあえず、メニュー表を見る。
 この時間にしては結構いろいろなものが食べられる。
 とりあえず・・・・・・

 「すみませ~ん、グリズリーサンド2人前とオレンジジュース」

 「・・・・・・え~、ミルクトーストと紅茶」

 ちなみに私が後者だ。食べ物が来るまでにある程度のことは聞いておこう。

 「で、なにか作って欲しいものでもあるの?」

 私はまた、いきなり本題に入った。この期に及んでまだ空気を読まない。ルーミィは突然の質問に頭を抱えた。

 「はぁ~、相変わらずね~。せっかく可愛い子と一緒にいるんだからさあ、もっといろんなこと話そうとは思わないの?」

  まぁ、そう言われてみればそうかもしれんが、まだ帰ってすぐの私に何を話せとおっしゃるのか。このお嬢さんは。

 「そういわれても、私は最近の話題なんか全く知らんしなぁ。ずっと師匠の屋敷に引きこもってたんだから・・・・・・」

 「・・・・・・あのさ、まさかとは思うけど、外に出て気晴らししたりはしなかったの?街に出てみたりとか・・・・・・」

 そういえば彼女には言ってなかったな、私の師匠の住んでるところ。

 「ん~、一番近い村まで500kmはあるからなぁ。それに外出と気晴らしはちゃんとしてたぞ。古代遺跡巡ったり、肉を取りに森に入ったり・・・・・・」

 あれ、なんか机に突っ伏してるなぁ。あの古代遺跡を荒らし回るロマンがわからんかなぁ。まぁ若いから仕方ないか。

 「お~い、料理来たぞ。起きろ~」

 私はルーミィの頭を つんつん とつついた。がばりと勢いよく頭をあげる。店員が料理を落としそうになっていた。

 「お、お待たせいたしました。グリズリーサンド2人前とオレンジジュース、ミルクトーストと紅茶でございます」

 ウエイトレスのおねーさんが両手一杯に持った料理を机の上に並べていく。器用だなぁ。
 グリズリーサンドが置かれるとルーミィはいきなりかぶりついた。おなかすいてたのか。どおりでカリカリしているわけだ。

 「いただきます」

 私も、紅茶を少し口に含んで、ミルクトーストを口に運ぶ。ほどよく染み渡ったミルクの優しい味が、口の中を満たしてゆく。
 うむ、これはいい。私がミルクトーストを半分食べ終わったとき、ルーミィはグリズリーサンドの最後の一口を口に入れた。
グリズリーサンドってミルクトーストの倍のサイズなんだがなぁ。

 「おね~さん、グリズリーサンド二皿追加!」

 まだ喰うか! 私は口に含んだ紅茶を吹き出しそうになった。

 「おっ、おい、そんなに食べて大丈夫か?」

 私は思わずルーミィに声を掛けた。ルーミィはにやっと笑っている。

 「もちろん、お・ご・っ・て・く・れ・る・わ・よ・ね」

 何故か眼が笑っていない。何か怒らせるようなことしたかなぁ。女心って奴は分からないものだ。師匠にも苦労したもんなぁ。

 「分かったよ分かった。奢ってやるけど、それまでだぞ。まだ仕事始めてないんだから・・・・・・」

 あぁ、三日分の食費がルーミィのおなかの中に収ってゆく・・・。早く仕事しよう。

 「で、最初に戻っていいかな?」

 私はミルクトーストを食べ終わり、紅茶のおかわりをたのむ。やはりジト目で見られている。ん~、面倒い。

 「はぁ、もういいわ。本題に入るわね」

 グリズリーサンドを頬張りながら、ルーミィは仕事内容を話し出した。

 どうやら定食屋ハズキの食材の件らしい。最近、肉の入荷が多くなく仕入の量が減っているという。
 このままでは昼か夜のどちらかの営業を止めないといけない状態だそうだ。先日のコカトリスの肉もたまたま在庫があったらしい。
 そこで、大量の肉を新鮮なまま保存するマジックアイテムを作って欲しいということだった。

 「ん~、マジックボックスではだめなのかな?」

 「買えるわけないでしょ、あんな高いもの!!」

 ルーミィはオレンジジュースを飲み干しながら怒鳴ってきた。いや、飛んでるし。

 「オレンジジュースくださ~い」

 あ、追加しやがった・・・。

 マジックボックスとは簡単に言えば、時空魔法で中の時間を年単位で止めることの出来る箱(材質は何でも良い)のことだ。
 大体、1年単位で売られている。金額は1年止めることが出来て、大きさが1m×1m×1mで金貨150枚というところだ。
 当然、中に入れたら1年間は腐ることはない。極端なことをいえば人を入れることも出来る。ただし、あまりいいことは聞かない。
 記憶がなくなっていたとか、肉体的なダメージが大きく回復するのに数年かかったなどだ。
 後は1年ごとに金額が倍になってゆく。時空魔法自体使える者が少ないため、また膨大な魔力が必要なためそのような金額になっている。

 「まぁ、そうだなぁ。う~ん。ちょっと考えてはみるけど・・・・・・予算は?」

 知り合いにあまりふっかけたくはないが生活がかかっているので仕方がない。ルーミィは下を向いて黙っている。

 いきなり両手を目の前に拡げた。そして俯いている。

 「ん? 金貨で10枚?」

 正直厳しい値段だ。

 「・・・・・・銀貨・・・・・・」

 消え入るような声だ・・・。

 「銀貨ぁ~!」

 私は思わず大声を上げた。周りが一斉にこちらを見る。私はなんでもないといって、他の人に頭を下げた。
 ルーミィは下を向いたままだ。まぁ、そんなところだろう。20ちょいで実家のウエイトレス。小遣いを貯めたのだろう

 これはおやじさんには内緒というところか・・・・・・。

 「ルーミィ・・・・・・さすがにそれは、難しいぞ。ロイズに相談は出来ないのか?」

 ロイズはルーミィの父親で、定食屋ハズキのオーナー兼料理長だ。

 「いま、うち、半年赤字・・・・・・」

 あ~、そうきたか~。しかしあの味がなくなるのはまずい。私がじっと考え込んでいると、ルーミィが袖を引っ張ってくる。

 ルーミィは自分を指さしていた。ん?まさか。

 「・・・・・・あたし、買って・・・・・・」

 おいおいおいおいおい。
 私は思いっきり動揺した。そりゃぁこの国には奴隷の売買制度はある。実際身内が金に困って自分を売る者もいる。もっとも売買可能なのは20歳以上と決まっているのだが、闇ではもっと低い年齢もいるとは聞いている。

 しかし私は友人を買う気はない。そこまで墜ちてはいない。

 「~う~、わかった。銀貨10枚で考えてみる。なっ。だからそんな考え止めろ」

 ここではいそうですかとは言えない。言う気もない。

 「・・・・・・いい、の?」

 よっぽど覚悟を決めてきたのだろう。いまだに表情がこわばっている。

 「大丈夫、なんとかする。だから、なっ。その代わり少し時間をくれ。2月、いや1月でいい」

 私は相当慌てていた。ルーミィが衝動的に身売りをしかねないという気がしたからだ。

 「そのかわり、条件がある・・・・・・」

 私が出した条件は3つ。

1.絶対に身売りをしないこと、また今後二度とそのような考えを起こさないこと

2.ロイズに店の収支台帳を借りてくること

3.蜂蜜酒の作り方を教えること(成功時のみ)

 「それだけでいいの?」

 ルーミィが涙目で詰め寄ってくる。私はそれでいいといって、抱きつこうとするルーミィを引き離した。

 ハーフ巨人のハグは強烈だからなぁ。

 「ただし、無断では持ち出すなよ」

 それだけ念を押して、暫く話したあとルーミィと別れた。

-----商店街-----

 とりあえずルーミィとの重い、重~い話を終えた私は商店街に寄った。
 背中に背負うタイプで多くポケットが付いたバックを買うためだ。色々とあるが、頑丈でポケットが多く軽い物というものは中々ないものだ。
 布屋やバッグ屋、雑貨店など10件ほどまわったとき、ついに理想のバックを見つけた。その店は露天で、{ルールウの雑貨店}という看板が掲げてあった。
 品物は蜜穴熊という砂漠地帯に住む珍しい動物の毛皮で作った物だ。これは非常に頑丈で、バジリスクやキマイラ、ピッポグリフなどの爪や牙、嘴など、一切通さないらしい。
 加えて、熱に非常に強いと言われている。ただ、あまりにも凶暴で、頑丈なため、ほとんどが魔法で対応されるため、毛皮が出回らない。
 このバッグは、外側を蜜穴熊の皮で作り、中に別の皮を張り、そこに多数のポケットを備えている。ファッション的には最悪に近いが、使う物が使うのであれは非常に実用的な物だ。

 「おねぇさん、これいくらですか?」

 30代くらいの売り子を捕まえて値段を聞く。

 「ん~、物はいいんだけど売れないから金貨2枚でいいわ」

 たけ!

 私は思わず心の中で呟いた。
 銅貨5枚で定食屋の日替わりが食べられるのだぞ! 
 銅貨に直すと2000枚だ!! 
 日替定食400回分だぞ!!!
 しかし、私は表情は崩さない。これからずっと付き合っていくカバンになる・・・・・・かもしれない。材質も最高。
これから作るアイテムにはぴったしの物だ。

 「2枚・・・・・・ね」

 机の上に金貨を2枚置く。売り子さんはちょっとびっくりした顔をした。

 「本当に買うの? もう5年も売れてなかったから良かった」

 売り子さんは嬉しそうな顔をした。よほどの不良在庫だったようだ。

 「あの、このような珍しい商品、結構扱ってられるんですか」

 私の中の買い物したい虫が蠢きだしていた。

 「ん~、そうねぇ。あんまり良いのは・・・・・・って何が欲しいか分からないから考えられないじゃない!」

 うん、面白い人だ。猛烈に興味がわいた。

 「おねーさん、ルールウっておねーさんのこと?」

 私は思わず聞いてしまっていた。冒険者ギルドと同じことやってるぞ。あの時はドン引きされたからなぁ。

 「そうだよ。ルールウ・キスカってのが私の名前だよ。この大陸を行商して歩いているのさ。よろしく」

 そう言って握手を求めてくる。私も握り返した。さすが商売人、人見知りするような性格ではなかった。
 話を聞いていると、どうやら故郷が戦争で壊滅し、仕方なしに行商人になったそうだ。もともと商家の出で、家の仕事を手伝っていたから行商人としてもやってこれたらしい。

 「で、何か探している物でも?」

 正直あることはあるのだが、あまりに希少品なので聞くのはどうかと思う。せっかく行商人に出会ったのだルールウがこの街にいる間だけでもいろいろな話が聞きたい。
 変な奴と思われ、避けられたくもなかった。取りあえず二つだけ言ってみることにした。

 「いや、あ~、その・・・竜の牙と魂の石・・・・・・です」

 「あるよ」

 我ながら無茶を・・・ってある?あるの? 
 私は口をパクパクとさせるしかなかった。
 普通はお目にかかれない代物だ。竜の牙は昨日、鍛冶ギルドで頼んだやつだ。特に入荷を期待していたわけではない。

 「どれくらいいる?」

 ど?どれくらい?
竜の牙なんて1個、金貨2枚はする。魂の石も最低金貨1枚だ。
特に魂の石は質によって値段が変わる。
ここは見せてもらうしかない。

 「あのう、見せてもらってもいいですか?」

 私は恐る恐る尋ねた。30センチ四方の箱が2つ出てきた。開けて見ると竜の牙が10個と魂の石が玉石混淆で20個ほど。
良いものは金貨5枚分くらいの価値がある。

 「あのぅ、どれがいくらか教えてもらえませんか?」

 私は両方を指さした。ルールウは何か考え込んでいた。私は自分の手持ちを確認し、家に置いてあるすべての貨幣の計算を始めた。

 「そうだね~、まとめて金貨20枚でどうだい?」

 「買った!」

 私は思わず即答していた。しまった、後先考えてなかった。というくらいの大安売りだった。しかし、単体の値段を聞いたはずなのに何故セット価格だったんだろう。まぁいいや。

 「ほっ、本当に良いんですね」

 私は思わず確認を取る。冗談と言われたら1週間はいじけるだろう。

 「いいよ。どうせ売れないし。そもそもここで買おうという奴いないから不良在庫だったのさ」

 価値が分かってるのだろうか、この人。ちょっと心配になってきた。
 
 「ほら、これなんか良い石だろ。相場なら金貨5枚はするよ」

 すみません。ごめんなさい。この人、価値分かって売ってました。
 私は財布の中から22枚の金貨を出して、ルールウの手に渡した。
 
 「はぃ、まいどあり。また欲しい物が出来たら寄ってよ。この街には半年くらいいる予定だから」

 私が買ったばかりの蜜穴熊のバックにすべての商品を詰め込み立ち去るときにルールウは手を大きく振って見送ってくれた。
よっぽど売れてなかったんだなぁ。

-----自宅-----
 
 さて、我が家に帰り着いた私は、本日の目標である多機能カバンの作成に入った。
 蜜穴熊のバッグから竜の牙と魂の石を取り出し、バッグを表と裏で入れ替える。ポケットは全部で8つ付いている。
 口が20cmくらいのが3つ。15cmくらいのが5つだ。魔法を掛けるのは20cmの大きな方だ。残りは普通に使う。
 中のサイズを確認したので、今度は自宅の一室に移動する。
  ちなみに私の家は6部屋とキッチン、それに地下に部屋が1つと庭にアイテム作成所小屋がある。

 その内の2部屋は寝室と書庫だ。で、残った4部屋の内3部屋を今回は使う。

 まず、3つのに部屋に属性無しの魔方陣を作る。今回は魔力で書かず、魔石を配置する。これは後の作業のために魔力を温存するためだ。
 3つの部屋にそれぞれ異なる魔方陣を書き終わったら、余った部屋で作業をする。ここには様々な素材が置いてある。
先程買った蜜穴熊のバッグや竜の牙、それに魂の石もある。
 とりあえず今回使うために買っておいた少し大きめの魔石を12個用意しておく。
 で、蜜穴熊のバッグの20cmのポケット3つに魔術を掛けてゆく。3つとも同じ系統の魔術だ。
 空間魔法の1つでエリア同士をつなぐための術、これを1つのポケットに付き1つ、先程部屋にかけた魔方陣に個々に繋がるよう同じ魔法をかける。
 ポケットは入れるところが青、赤、緑とそれぞれ光り出す。
 正直、これだけで完成だ。これだけと言っても魔方陣を書き出してすでに2刻は過ぎている。
 これから、術式の本格的なセッティングと実際の使用テストが待っている。

 私は休憩と食事を兼ねて、一度下のキッチンに降りた。そこでパンを炎の魔法で軽く焼き(火加減が難しい)、紅茶を入れる。
半刻ほど休憩し、また2階に行き作業に戻った。

 私は道具部屋から先程用意した12個のうち4つの魔石を取り、1つの部屋へ行く。その部屋の魔方陣は青い光を放っていた。
 4つの魔石を部屋の四方に置き、魔石の中に魔方陣を刻み込む。魔方陣を書き終えた魔石は青く光り出した。
 正直、放つ光の色はどうでも良いのだが目的別に色を変えてみた。
 部屋の角に配置した4つの魔石すべてが青く光る。そしてその光は部屋中を満たした。
 徐々に部屋の中の温度が下がってゆく。これでこの部屋は終了なので、あとで様子を見に来ることにして道具部屋に戻った。

 つぎに赤い光りを放つ魔方陣の部屋に行く。同じ作業を繰り返す。ただし、今回の魔石は赤が2つと青が2つこれを部屋の隅に交互に配置する。
 徐々に空気が乾き始める。少し待つとからりとした室温になり、そこで大気の変動が止まる。この部屋はこれで完成だ。

 最後に緑色に光る魔方陣の部屋に行く。同じく4つの魔石に魔方陣を書く。魔方陣からは紫とも黒ともつかない光りが放たれた。
 光りと共に部屋の中に瘴気が渦巻き出す。それを確認すると私は部屋を出た。そして、部屋のノブに小さな魔方陣を書く。それは白い光りを放った。
 その魔方陣に住民登録でもらった指輪をかざす。ノブの魔方陣と指輪から白い光りが放たれ、暫く繋がった後突然、光りは何事もなかったように消えた。

 それから一刻程、空間同士がうまく繋がっているか、物がきちんと部屋に届くかを実際に試しながら調整をしてゆく。たまに物が行方不明になる。

 最後に青の魔方陣の部屋に行くと、そこは凍えるような寒さまで室温が低下していた。

 「はぁ、やっと終わった。これで寝れる・・・・・・」

 私は独り言を呟くと、そのまま寝室へと向かって行った。
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