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第9章 恐山
一話 道中にて
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――――道中――――
集落から恐山までの道程はそう遠くない。徒歩で半日もあれば、麓までたどり着けるだろう。
ユキはアミの願いを聞き入れ、一日だけその身体を休める事に専念し、翌日の早朝には旅立っていった。
***********
一見穏やかな道中の、周りが自然に囲まれた雑木林の道を歩み進める最中の事。
「そろそろお昼にしようよ~」
歩くのに疲れたのか、ミオが訴えかける様に声を挙げた。
「遠足に来た訳では無いのですから……」
先頭を歩くユキがその歩みを止め、呆れた様に口を開く。
「でも朝からずっと歩きっぱなしだし、少し早いけどお昼にしない?」
その傍らを歩くアミも、ミオの意見には賛成している。
そう。この三人で恐山へと向かっている。
当初はユキ一人で向かうつもりであった。何故なら直属クラスとの闘いに於いて、二人の実力では足手纏い以外の何者でも無いのだから。
――前夜の事。
『そりゃ私じゃ力にはなれないけどさ。でもアンタ一人で行くのを“はいそうですか”と、黙って見送る訳無いでしょ!』
『ユキ……。一人で全て背負おうとするのはやめて』
そう言い、二人は強引に着いて来たのだった。
ユキがそれに抗わず、三人で向かう事に同意しているのは、守りながら闘う事の難しさの“理”とは関係無く、彼女達のその想いが嬉しかったのかも知れない。
「確かに……。ですが、此処を抜けてからにしましょう。どうやら此処は、野党崩れの山賊が出没するみたいですので」
そう言いながら急にユキが前方を見据え、その歩みを止めた。
アミとミオの二人は、ユキの言葉の意味。その前方を見据える。
「姉様あれ!」
ミオが指した先にあるもの。それは四人もの刀を構えた山賊風体の輩に、ある一人の人物が囲まれている光景だった。
どう見ても多勢に無勢。今にも四人がかりで襲われようとしている。
“ーーあれは!”
ユキは山賊に囲まれている、三度笠被る浪人風の人物に目を見張った。
「姉様、ユキ! 助けに行きましょ! 四人がかりは卑怯よ!」
「ええ!」
アミとミオが加勢に入ろうと、飛び出そうとした処。
「その必要は無いと思いますよ」
ユキは手を翳して二人を止める。
「ユキ?」
「なんで止めんのよ!?」
ユキの言葉にアミは怪訝そうな表情をし、ミオは声を荒げるがーーもう遅い。
四人の山賊は既に一人の人物に、一斉に斬り掛かっていたのだから。
“ーーっ!?”
だがそれは、余りにも一瞬の出来事。
四人の山賊は、何時の間にやら抜き放たれていた浪人の刀で、同時に血飛沫をあげながら崩れ落ちていた。
「いっ……何時の間に?」
ミオが驚き呟くのも無理は無い。腕に覚えが有る者なら、一振りで四人を同時に斬る等、生半可な事では無いのだから。
三度笠を被る浪人は、刀の血糊を振り払って鞘に納め、立ち竦むユキ達三人の方を見据えていた。
集落から恐山までの道程はそう遠くない。徒歩で半日もあれば、麓までたどり着けるだろう。
ユキはアミの願いを聞き入れ、一日だけその身体を休める事に専念し、翌日の早朝には旅立っていった。
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一見穏やかな道中の、周りが自然に囲まれた雑木林の道を歩み進める最中の事。
「そろそろお昼にしようよ~」
歩くのに疲れたのか、ミオが訴えかける様に声を挙げた。
「遠足に来た訳では無いのですから……」
先頭を歩くユキがその歩みを止め、呆れた様に口を開く。
「でも朝からずっと歩きっぱなしだし、少し早いけどお昼にしない?」
その傍らを歩くアミも、ミオの意見には賛成している。
そう。この三人で恐山へと向かっている。
当初はユキ一人で向かうつもりであった。何故なら直属クラスとの闘いに於いて、二人の実力では足手纏い以外の何者でも無いのだから。
――前夜の事。
『そりゃ私じゃ力にはなれないけどさ。でもアンタ一人で行くのを“はいそうですか”と、黙って見送る訳無いでしょ!』
『ユキ……。一人で全て背負おうとするのはやめて』
そう言い、二人は強引に着いて来たのだった。
ユキがそれに抗わず、三人で向かう事に同意しているのは、守りながら闘う事の難しさの“理”とは関係無く、彼女達のその想いが嬉しかったのかも知れない。
「確かに……。ですが、此処を抜けてからにしましょう。どうやら此処は、野党崩れの山賊が出没するみたいですので」
そう言いながら急にユキが前方を見据え、その歩みを止めた。
アミとミオの二人は、ユキの言葉の意味。その前方を見据える。
「姉様あれ!」
ミオが指した先にあるもの。それは四人もの刀を構えた山賊風体の輩に、ある一人の人物が囲まれている光景だった。
どう見ても多勢に無勢。今にも四人がかりで襲われようとしている。
“ーーあれは!”
ユキは山賊に囲まれている、三度笠被る浪人風の人物に目を見張った。
「姉様、ユキ! 助けに行きましょ! 四人がかりは卑怯よ!」
「ええ!」
アミとミオが加勢に入ろうと、飛び出そうとした処。
「その必要は無いと思いますよ」
ユキは手を翳して二人を止める。
「ユキ?」
「なんで止めんのよ!?」
ユキの言葉にアミは怪訝そうな表情をし、ミオは声を荒げるがーーもう遅い。
四人の山賊は既に一人の人物に、一斉に斬り掛かっていたのだから。
“ーーっ!?”
だがそれは、余りにも一瞬の出来事。
四人の山賊は、何時の間にやら抜き放たれていた浪人の刀で、同時に血飛沫をあげながら崩れ落ちていた。
「いっ……何時の間に?」
ミオが驚き呟くのも無理は無い。腕に覚えが有る者なら、一振りで四人を同時に斬る等、生半可な事では無いのだから。
三度笠を被る浪人は、刀の血糊を振り払って鞘に納め、立ち竦むユキ達三人の方を見据えていた。
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