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1年生
君との出会い
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僕の名はシオン・サミュエル。しがない伯爵令息だ。父と母ともに健在で兄弟は弟が1人いるくらい。今まで生きてきて特にこれといった不満はなく気ままに過ごしてきた。兄弟仲も良好で、家督争いもなく長男の僕が伯爵の地位を継ぐ予定だ。
もし僕の趣味を挙げるとするならば読書だと思う。自分でも本の虫だと自覚している。本を読んでいて食事をするのも忘れて気がついたら夜だった。なんてこともよくある。
今に至るまでの15年間ずっと、本を読む時は我が家の図書室でこもって読んでいた。しかし来月の4月から僕は、魔力保持者なら全員が通わなねばならないイキシア王立魔法学園に通うことになる。そこの図書館となると人がたくさん居て、集中して本が読めないだろう。
学園は全寮制のため必ず寮に入ることになる。集中して本を読みたいなら寮か他の人気の少ない場所を見つけるしかない。
正直魔力量はずば抜けて高いわけでもないしとても珍しい属性持ちというわけでもない。土属性でせいぜい土いじりが得意というありふれたものなので学園に行かなくてよいというなら喜んで家に居たい。
去年社交会デビューした身からすると色んな家柄の人と交流を持ち、他の貴族から揚げ足をとられないようにしたり相手から下に見られないよう作法をずっと気にしたりするのはとても疲れる。学園に行ったら令息や令嬢だけとはいえ24時間寝るまでそれをしなければならないと考えると行くのが憂鬱にもなる。
家督を継ぐにあたって顔は広い方がいいが父に出世願望はない。現状の繋がりで満足しているため仲良くなるのは必要最低限の人でいいらしい。まあ、人と話したり仲良くなるのは得意ではないため行きたくはない。行かなければならないので行くのだけれど
そんなこんなで入学式前日になった。
今日は入寮する日で続々と新入生らしき人が寮へと入ってゆく。
寮は「スミレ寮」「セン寮」の2つに分かれておりスミレ寮は平民から子爵まで、セン寮は伯爵から王族までと家の生活水準や家柄によって分けられている。平民だけれど大きい商家の息子なんかはセン寮に入ることも少なくない。
寮を分けるなんて平民などに対してひどいのではなんて言う人もいるが仮に全ての家柄の人が同じ寮になると今まで生活してきた環境が違うのに一同に集められて生活することになり双方の生徒側にストレスが溜まってトラブルが起きてしまう。そのため学園側の配慮として2つの寮に分かれている。
僕は家柄的にセン寮に入ることになる。3年間ずっと同じ部屋らしくどれだけ家柄が良くても必ず2人1部屋なのでどんな人が同室になるか緊張する。
部屋の前まで来た。手が緊張で震えているが極力気にしないようドアをノックした。
コンコンコン
「はい。どうぞ」
「し、失礼します」
そう言ってドアを開いた。
部屋の中には僕より先にルームメイトが着いていたようだ。美しいという言葉は彼のためにあるのではないかと思わせるほど綺麗な人がそこには居た。
まず一番に目を惹く美しい銀髪はポニーテールに結われており髪1本1本の毛先まで手入れされていることがよく分かる。藍色の瞳はサファイアの宝石を眼に埋め込んだかのようにキラキラして見える。顔の造形全てが整っていて神の子と言われても信じられる。それくらい綺麗な人がいた。
「あの、どうかしました?」
「へぁ!?いえすみませんボーッとしちゃって、えへへ」
どうやらこの美丈夫のことをずっと見つめてしまっていたらしい。
「そうですか。そういえば荷物は先に届いてますよ。荷解きしますか?あ、そういえば自己紹介してませんでしたね、すみません。私はシャムロック・ランギルスといいます。家はランギルス公爵家です。シャルと呼んでもらって構いません。」
「シオン・サミュエルと申します。家はサミュエル伯爵家です。これから3年間よろしくお願いします。僕もシオンでいいですよ。」
ランギルス公爵家っていえばまさに筆頭公爵家じゃないか。その令息ともなると多分王太子と従兄弟にあたるはず。なんでそんな位の高い人と同じ部屋なんだ。
緊張でどうにかなりそう。
「敬語は無しでいいですか?私としてもこれから先一緒に生活するにあたってこの話し方は疲れるので早く素を出したいのですが。」
「わかった。改めてよろしくねシャル」
まあこれから3年ずっと敬語ってわけにもいかないし、相手の位が高いからってうっかり敬語使わないようにしなきゃ。
「ああ、よろしくシオン。けどルームメイトだからといって俺は君と特に馴れ合うつもりはないから、それじゃ。これから少し用事があるから。」
「え、あのっ」
呼び止める前に部屋を出て行ってしまった。あれが素なのかな。一人称も俺になってたし。最初に話した方が外行きのシャルだったのだろう。
「荷解き、1人で頑張るかー」
悶々と考えている内に荷解きが全て終わった。外を見たら少し暗くなっていた。
「ふぅ、お腹も空いたしそろそろ夜ご飯にしようかな」
朝と夜の食事は部屋で作って食べるか寮の食堂で食べるかのどちらかだ。昼ご飯は弁当を作ったり学食を使う人が多い。
食堂に行くために部屋を出ようととドアノブに手をかけた瞬間ドアが急に開いた。
「わ!?」
ドアが開いた先にいたのはシャルだった。5秒くらい気まずい沈黙が流れる。
「.....あのさ!僕今から食堂行くところなんだけどシャルも一緒に行かない?」
この空気に耐えられなくなって、そんなつもりはなかったのに口走ってしまった。まあ同じ部屋だし少しくらいは仲良くなっておきたい。
「俺、君と馴れ合う気はないってさっき言ったんだけど、忘れたの?名前呼び許可しただけでもだいぶ優しいと思うんだけど。俺に取り入ったって別に意味ないよ?取り入ろうとするなら別をあたって」
んなっ!?別に僕取り入ろうとして誘ったわけじゃないのに!少し頭にきた。
「君と仲良くなろうとする人間全てが君の家柄目当てで、取り入ろうとしていると思わないでくれるかな!もしそう思っているんだとしたら僕としてはすこぶる気分が悪いよ。君は人の見方を1から見直した方がいいんじゃないかな。それじゃ僕は食堂に行きたいから。退いてくれない?」
とても驚いた顔をしていたが素直に道をあけてくれた。僕は足速に食堂へ行った。ご飯を注文し席に座った。
やばいかもしれない。
思ったこと全てを言ってしまった。気がついてももう遅い。自分よりも位の高いお方に楯突いてしまった。今日で僕の貴族人生が終わってしまった気がする。明日にはもうサミュエル伯爵家は貴族界から抹消されているかもしれない。
初日からもう前途多難です。
もし僕の趣味を挙げるとするならば読書だと思う。自分でも本の虫だと自覚している。本を読んでいて食事をするのも忘れて気がついたら夜だった。なんてこともよくある。
今に至るまでの15年間ずっと、本を読む時は我が家の図書室でこもって読んでいた。しかし来月の4月から僕は、魔力保持者なら全員が通わなねばならないイキシア王立魔法学園に通うことになる。そこの図書館となると人がたくさん居て、集中して本が読めないだろう。
学園は全寮制のため必ず寮に入ることになる。集中して本を読みたいなら寮か他の人気の少ない場所を見つけるしかない。
正直魔力量はずば抜けて高いわけでもないしとても珍しい属性持ちというわけでもない。土属性でせいぜい土いじりが得意というありふれたものなので学園に行かなくてよいというなら喜んで家に居たい。
去年社交会デビューした身からすると色んな家柄の人と交流を持ち、他の貴族から揚げ足をとられないようにしたり相手から下に見られないよう作法をずっと気にしたりするのはとても疲れる。学園に行ったら令息や令嬢だけとはいえ24時間寝るまでそれをしなければならないと考えると行くのが憂鬱にもなる。
家督を継ぐにあたって顔は広い方がいいが父に出世願望はない。現状の繋がりで満足しているため仲良くなるのは必要最低限の人でいいらしい。まあ、人と話したり仲良くなるのは得意ではないため行きたくはない。行かなければならないので行くのだけれど
そんなこんなで入学式前日になった。
今日は入寮する日で続々と新入生らしき人が寮へと入ってゆく。
寮は「スミレ寮」「セン寮」の2つに分かれておりスミレ寮は平民から子爵まで、セン寮は伯爵から王族までと家の生活水準や家柄によって分けられている。平民だけれど大きい商家の息子なんかはセン寮に入ることも少なくない。
寮を分けるなんて平民などに対してひどいのではなんて言う人もいるが仮に全ての家柄の人が同じ寮になると今まで生活してきた環境が違うのに一同に集められて生活することになり双方の生徒側にストレスが溜まってトラブルが起きてしまう。そのため学園側の配慮として2つの寮に分かれている。
僕は家柄的にセン寮に入ることになる。3年間ずっと同じ部屋らしくどれだけ家柄が良くても必ず2人1部屋なのでどんな人が同室になるか緊張する。
部屋の前まで来た。手が緊張で震えているが極力気にしないようドアをノックした。
コンコンコン
「はい。どうぞ」
「し、失礼します」
そう言ってドアを開いた。
部屋の中には僕より先にルームメイトが着いていたようだ。美しいという言葉は彼のためにあるのではないかと思わせるほど綺麗な人がそこには居た。
まず一番に目を惹く美しい銀髪はポニーテールに結われており髪1本1本の毛先まで手入れされていることがよく分かる。藍色の瞳はサファイアの宝石を眼に埋め込んだかのようにキラキラして見える。顔の造形全てが整っていて神の子と言われても信じられる。それくらい綺麗な人がいた。
「あの、どうかしました?」
「へぁ!?いえすみませんボーッとしちゃって、えへへ」
どうやらこの美丈夫のことをずっと見つめてしまっていたらしい。
「そうですか。そういえば荷物は先に届いてますよ。荷解きしますか?あ、そういえば自己紹介してませんでしたね、すみません。私はシャムロック・ランギルスといいます。家はランギルス公爵家です。シャルと呼んでもらって構いません。」
「シオン・サミュエルと申します。家はサミュエル伯爵家です。これから3年間よろしくお願いします。僕もシオンでいいですよ。」
ランギルス公爵家っていえばまさに筆頭公爵家じゃないか。その令息ともなると多分王太子と従兄弟にあたるはず。なんでそんな位の高い人と同じ部屋なんだ。
緊張でどうにかなりそう。
「敬語は無しでいいですか?私としてもこれから先一緒に生活するにあたってこの話し方は疲れるので早く素を出したいのですが。」
「わかった。改めてよろしくねシャル」
まあこれから3年ずっと敬語ってわけにもいかないし、相手の位が高いからってうっかり敬語使わないようにしなきゃ。
「ああ、よろしくシオン。けどルームメイトだからといって俺は君と特に馴れ合うつもりはないから、それじゃ。これから少し用事があるから。」
「え、あのっ」
呼び止める前に部屋を出て行ってしまった。あれが素なのかな。一人称も俺になってたし。最初に話した方が外行きのシャルだったのだろう。
「荷解き、1人で頑張るかー」
悶々と考えている内に荷解きが全て終わった。外を見たら少し暗くなっていた。
「ふぅ、お腹も空いたしそろそろ夜ご飯にしようかな」
朝と夜の食事は部屋で作って食べるか寮の食堂で食べるかのどちらかだ。昼ご飯は弁当を作ったり学食を使う人が多い。
食堂に行くために部屋を出ようととドアノブに手をかけた瞬間ドアが急に開いた。
「わ!?」
ドアが開いた先にいたのはシャルだった。5秒くらい気まずい沈黙が流れる。
「.....あのさ!僕今から食堂行くところなんだけどシャルも一緒に行かない?」
この空気に耐えられなくなって、そんなつもりはなかったのに口走ってしまった。まあ同じ部屋だし少しくらいは仲良くなっておきたい。
「俺、君と馴れ合う気はないってさっき言ったんだけど、忘れたの?名前呼び許可しただけでもだいぶ優しいと思うんだけど。俺に取り入ったって別に意味ないよ?取り入ろうとするなら別をあたって」
んなっ!?別に僕取り入ろうとして誘ったわけじゃないのに!少し頭にきた。
「君と仲良くなろうとする人間全てが君の家柄目当てで、取り入ろうとしていると思わないでくれるかな!もしそう思っているんだとしたら僕としてはすこぶる気分が悪いよ。君は人の見方を1から見直した方がいいんじゃないかな。それじゃ僕は食堂に行きたいから。退いてくれない?」
とても驚いた顔をしていたが素直に道をあけてくれた。僕は足速に食堂へ行った。ご飯を注文し席に座った。
やばいかもしれない。
思ったこと全てを言ってしまった。気がついてももう遅い。自分よりも位の高いお方に楯突いてしまった。今日で僕の貴族人生が終わってしまった気がする。明日にはもうサミュエル伯爵家は貴族界から抹消されているかもしれない。
初日からもう前途多難です。
応援ありがとうございます!
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