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一章
一話
しおりを挟む聖エリリアント学院そこは、まさに世界の全てを集結したといってもいい程の学院であった。
そこには、全校生徒四万人程でさらに教師などを合せると四万五千人程の人間が住んでいた。
その学院では数ある神の恩恵を持つ者だけが集まる、その為学院外からは小さな強国と呼ばれそこにいる者達に尊敬と畏怖の念を持っていた。
そしてそこに、一際静かで不遇な恩恵を持つ少年がいた。
─────
ピピッピピッピピッピーーカチッ
「うう、朝。イヤだ」
そう言ってモゾッと尻を上げて起きるのは聖エリリアント学院一年守島 攻尓と言う少年だ。
名前に合わず比較的物静かで他人の顔色を伺う様な性格をしている。
自分でも直したいとは思っているが今までこれでやって来たから今更だと、一歩目すら出ていない。
「あた~、ら、し~い、朝が……来ちゃった。…憂鬱な月曜日だ……」
そう言いながらダラダラと起きる。一人や友達相手だと饒舌なのだ。
僕は前日、フィニッシュファンタジー1.5を朝からやっていて完全に寝不足だ。
それに今日は確かキライな実技訓練があるはずだ、それが更に憂鬱感を増長させてくる、まだクラスにも馴染めないし悩みの種は尽きない。
そんな僕は布団を畳み隅へ片すと制服へ着替え始める。よくあるブレザーで青色と白色を基調に作られており動きの阻害が少ないように作られている。
「そろそろ出ないと…いってきます」
僕は革靴を履き移動時間12分の学院へ歩を進める、道中同じクラスの人を見たが、桜並木の綺麗な木漏れ日を見なから登校し、教室へ向かう。
「うぃーす!」「おはよーう!」「うわー今日実技あんのかー」「まじっ!?弁当めっちゃ多いんたけど!?」
ガヤガヤと多種多様な生徒がこれまた多種多様な話をして盛り上がっていた。
僕は教室に入ると直ぐさま自分の席に着くと後ろの席にいる唯一の友達 クリフルト・エルールに話しかける。
「や、おはよクリフ。昨日FF1.5やり込んじゃって寝不足だよ」
「おはよ、あれは中毒性あるからなー夏休みとかの連休中じゃないとオレはやらないな」
クリフとは入学初日にたまたま学院近くの本屋で同じ物を買っているところで遭遇してから話すようになって仲良くなった友達だ。
クリフには本当に感謝しなくちゃ、クリフがいなかったら僕はずっとボッチだっただろうし、運が良かった。
「そういえば、あの場所にはいつ行く?早めに決めないとオレも暇ばっかりじゃないぞ」
「う、そうだよね。……善は急げっていうし今日行っちゃう?」
「分かった、今日な。じゃあ三島堂の前に集合で」
「うん、了解 」
三島堂とはクリフと仲良くなったきっかけの本屋だ、そしてそこに集合することになった。
僕らは、知る人ぞ知る噂の検証をする約束をしていると。担任の教師──ウェンティ・村雲 が「HR始めまーす」とちょっと気怠げに教室に入って来くる。
「よーし。そろってるなー、んじゃ今日は午後に実技訓練があるから体力の温存と吐くから飯を食い過ぎないことー以上ーー」
「やっぱあるのかー」「月曜から実技は萎えるーせめて火曜がよかったー」
担任のウェンティの話が終わると教室はまたも騒がしくなり始めると実技訓練の愚痴を各々吐き始める。
やっぱ皆実技訓練は嫌だよな。当たり前だけど……あれはね。
「さぁて、攻尓。一時限目は移動だし行くか」
「あ、うん行こっか」
─────
朝のHRから数時間後
「今日一番の難所、実技訓練が来たぁ……」
「まー、気を落としててもしょうがないし行くしか」
僕は「うん、分かってるけどさ…」と返しクリフと訓練時の服装に着替えると訓練専用施設に向かう。その間もクリフと噂の話をして訓練の憂鬱を紛らわすのだった。
訓練施設に着くとそこには既に大半のクラスメイトが揃っていて、恩恵の準備練習や集まって話をしている人達がいた。
「オレ達も準備運動くらいはしとくか」
「そだね、ベターに周りをランニングでもしようか」
僕達はそう決めると少し準備運動をするとランニングを開始した。そして授業が始じまるまで噂の話に没頭して始まった頃には足がガクガクしていた。何故か僕だけ、おかしいクリフはなんで平気なんだ?
「いやははは……走り過ぎた。もうダメ足が」
「いや、がんばれよ。もう始まるぞ」
「うし、お前ら揃ったな。では実技訓練を始める。まずペアを作り、軽く恩恵練習を行った後そのペアで順に模擬戦を行う。では始め!」
「僕達はそのままでいいよね」
「ああ、さて先に能力練習始めようか」
「そだね」
僕達は最初からペアは決まってるようなものなのですぐに各々の恩恵の確認を行う。
僕の能力は超反射神経だからやること殆ど無いんだよな、それに僕は超反射神経を持ってたとしても体が追い付かないから意味ないし。
それに比べてクリフは精密精度ってサポート向きだと一目瞭然だから羨ましい。
「やっぱりオレの精密精度って戦い向きじゃないし、できても戦い方絞られるしどうしよ。でもそう考えると攻尓の超反射神経っていいよな時間切れまで避ければいい訳だし」
「そう考えられるのは今だけだよ。長い目で見ると僕のほうがなんにも出来ないよ」
「そんな悲観するなって反射神経とか地味にみえて普通に凄いって」
凄い恩恵でも僕の体がその反射神経に追い付かせようとすると身体壊れるし、精々追い付けるのは脳と指くらいだ。
この恩恵が使えるのはゲームをする時だけだな。
「では、模擬戦やりたい3つのペアから前に出ろ!」
「よっしゃ!俺らいこーぜ!」「私達もやるー」「早く終わらせて隅で休んどこー」
みんな嫌とか言ってなかったっけ?まーいいや、僕達は終盤にこっそりとやろうかな。
「僕達は最後でいいよね?というか最後じゃないと動けない」
「まぁそうだろうな、その足じゃ……」
それから何組かが模擬戦を終え、ついに僕達の順場まで回ってきた。
クリフと色々考えた結果、クリフがボールを正確に投げてそれを僕が避ける事になった。もちろん僕にも避けられる程度の場所とスピードでだ。
「じゃあ投げるぞ。そらっ!」
「わっ!?意外と速い!場所は良いけどもうちょっと遅く!」
「そのままのスピードで投げろ!それ以上遅くしたら訓練の意味が無いっ。守島がギリギリ避けられる程度じゃないとダメだ」
う、初球が速すぎてこれ以上遅くできない!?クリフが墓穴掘ったーー!!うう、これであと10分はキツいよ!
「じゃ、じゃあ次。ほれっ!」
僕はクリフの投げる瞬間を見てボールが手から離れる瞬間を捉えるとボールの軌道を大まかに予測して避けようと動きだそうとする。がやっぱり身体が追い付かず、またもやギリギリで避けてしまう。
「むぅ、やっぱり身体が……」
─────
うぷっ、もう何球目だろ9球目から数えてないけどかなり避けてるよね。
そろそろ終わらないかな、はっ!やばい集中力が!………あ…。
僕は遂に32球目で、集中切れにより初動が遅れ避け切れず左肩に当たってしまう。
「ふむ、それまで。終わっていいぞ」
「あ、ありがとうございました」
「ぜぇーぜぇ。ありがとう…ごさいました」
僕達の訓練時間はたったの5分間だったらしい、僕の中ではかなり長い間避けてた気がするけど、多分体力がもうちょっとあったらもっと長かっただろうなぁ。
「全員終わったな、では実技訓練は終了する。解散!」
「うおー疲れたー」「やっと終わったー」「終われば早いもんだなぁ」
実技訓練が終わる途端僕はダッと座り込む、そして周りはガヤガヤとし始め友達と各々の会話がはじまりそのまま教室へ戻っていく。
やっぱり序盤にやってた人はある程度疲れは抜けてるみたいだ。
羨ましい。
「さて、終わったけど教室戻れる?……てのは無理そうだな」
「見ての通り、無理です。はい」
「守島少しいいか」
僕とクリフが話をしていると、教官が訝しげな表情で話しかけてきた。
なんだろ、僕なにかやらかしちゃったかな?やっぱスピード下げるの頼んだのダメだったかな。
「お前、恩恵を使うときどうしてる?」
「へ?……どうといいましても、感覚?ですかね。僕もよくわかってません」
「先生どうかしたんですか?攻尓がなにかおかしかったですか?」
「いや、分からないならいいんだ気にするな。早く戻れよ、ではな」
「あ、はい。ありがとうございました。」
教官はそう言い残すと、去っていった。なんだったんだろ、なにか変だったかな。
「なんだろうな。ま、気にしなくていいって言ってたし忘れよう。気になるけど」
「そうだね」
「つか、そろそろ戻らないとHR間に合わないぞ」
「わ、ホントだ。戻ろうか」
僕はクリフに手を引いてもらい立ち上がると尽きぬ噂の話をして教室に戻るのだった。
「あー早く帰ってFF1.5やりたいな」
「おい、今日は例の場所行くんだろ。帰ったらすぐだからな」
「え!そうなの?肝試し的に暗くなってからじゃ……」
「おいおい、今何月だとおもってんだ。もう10月だぞ、肝試しって時期じゃないだろ」
その日、この遊びが僕や周りの運命が急に動きだすとはこの時は思ってもいなかった。
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