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一章
四話
しおりを挟む僕とアテラが話し始めてから半刻後にクリフは目を覚ました。
クリフが目覚めてからはアテラやシエルさん、そして今の状況などを説明しながら外へ出て階段前までやってきていた。
「あーじゃあ、この子供は神様な訳?」
「そういうこと」
「どー見てもただの子供にしか見えないけどな」
クリフはこれでもかとアテラを凝視して、何やら考えているようだ。
「あ、あのいくら神でもそんなマジマジ見られたら困ります」
「ああ、ごめんごめん。それより攻尓お前、相手子供なんだから泣かせるなよ?」
クリフは振り返って僕にそんなことを言う。
「ん?なんのこと?」
「いや、まだ知らないならそれでいい」
何の事か全くわからないけどいいならいいや、と思考を切る。
そして、クリフは再びアテラに向き直ると耳元に顔を近づける。内緒話のようだ。
「ところでアテラ、君の加護をクリフにも授けられないの?」
「はい、実はわたくしの加護は攻尓さんで最後のようです。わたくしたち神の力が弱まっている話はしましたよね、実はここ『高天原』はわたくしの力で維持しているのです」
アテラは今まで言い出せなかった真実を事も軽げに話を始めた。
「わたくしが神になる前にわたくしの恩師にここの管理を任されました。なにやらわたくしは心力が強いらしく、それを昇華すれば神力になり高天原を維持することができるとのことで」
「なんだそれ、その恩師ってまさか君を利用しているだけじゃないよね」
「ふふ、ありがとうございます。ですがわたくしの両親はわたくしが産まれてすぐに亡くなってしまって親戚もいなかったので渡りに舟でした、もちろん後悔はありません。そしてその力の半分程を維持に使っていてその残りを攻尓の加護に使ってしまったのです」
「そうだったんだ。ありがとう。そしてごめんね思い出させちゃって」
アテラは話している最中に表情を嬉しそうだったりと悲しそうだったりとコロコロ変えながら、人間の僕らにも分かるように話を進めていく。
「いえ。恩師によってわたくしは神に昇華され、それからここを任されています。年も取らず老けもしないのでわたくし的にはうれしいですが」
「…すまん、正直神とか信じられないけどアテラちゃんの事は信じるよ」
「信じてなかったんだ。アテラは自分で選んでここに来たんだね」
「はい、ここに来てあなた方にも会えました。人間の信仰心は薄くなっていてもまだ神を陰ながら信仰している方もいます。だからわたくし達にあって知ってもらえるだけありがたいのです」
と、アテラは語るが少し寂しそうにも見えた。
「本当にありがとうね。神様にタメ口もどうかと思うけど君とは時代が違えばいい友達なれたとおもうな」
「お、それは彼女を口説いてるのか?」
「なっ、違うよ本当にそう思っただけ!」
「!………そうですか。わたくしもそう思います。わたくしと攻尓さんは加護で繋がっていますので何かあったらまた逢えるかもしれないですね」
そう言ったアテラは清々しくやはり幼さを感じさせる可憐な笑顔だった。
「じゃあ、僕達は帰るよ。また逢おうアテラ」
そう言って僕は手を差し出す。握手だ。
アテラは一拍反応が遅れて両手をだして握手をした。
「また会いましょう。わたくしの攻尓さん」
「え、わたくしのってどうゆう」
「わたくしの加護を受けたんです。もうわたくしの子供のようなものですね」
「は、はは。まぁいっか」
アテラは握手を離すとその温もりを宝物のように胸に抱いていた。
「よっしゃ、早く帰って夕飯食って寝よう!」
「うん、帰ろうか。じゃあまた逢おう!」
「はい!」
僕とクリフは階段を降り少し進んだところで振り返って手を降る。
「まさかこんな不思議体験することになるとは思わなかったけど、今思ったらここの噂って高天原の人たちの笑い声だったんじゃないか」
「ま、多分そうだろうなぁ。ってもこのこと話しても誰も信じないだろうな」
そんなことを話しながら僕はふと振り返るとそこは明らかにさっきまで居た階段ではなくなっていた。
「帰ってきたんだ。なんか長くいた気がするなら」
「どうする?浦島状態だったら」
「怖い事言わないでよ」
そんな二人は階段から抜けており住宅街を歩いていた。電柱に二人の行方不明の張り紙に気付かずに……なんてことはなかった。
─────
「いやぁー、ついに来ちゃったね。再びの実技訓練が!」
「ああ、なんかやる気だな。そんな加護ってのが良かったのか?」
「今までの僕と比較できないよ圧倒的さ」
僕達はあの後、三島堂の前まで行きそこで別れ自宅へ帰っていた。
そうして、そのまま2日が経ち今週二回目の実技訓練の日になり、僕はアテラの加護により自分の反射神経に付いていける様になった実力をお披露目することになる。
「ふふ、楽しみだよ」
「では、エルールと守島のペア」
「はい!行こう」
「よし、手加減無しな」
クリフはそう言うが当てるならシエルさん以上の速さで投げないと僕は当てられない。
そして僕らは教官の見る前方の訓練スペースに10mほど距離をとる。
「では、始め!」
「よっしゃ!行くぞ!」
「いつでも!」
クリフは訓練時に自由に使える道具である野球玉ほどのボールを振りかぶり投げる。
僕はその動きを見て大まかなコースを予測して動き始める。加護を授かる前ならばこの時点では動けていなかったが今ならもっと早く動けることもできそうだ。
そして、予測したコース通り来たボールを難無く避けると僕自身再び避けれるという実感を味わい笑顔が浮かんでいた。
「ホントに避けた。前投げた時より本気なんだこど」
「おお!守島!筋トレでもしたか?」
「え、ええまぁ。そんなところです」
教官が驚きのあまり訓練中にも関わらず質問してきたがそれほどのことなのだろうと終わらせる。
「なら、サポート向きなのに身体能力だけは高い俺の本気の球を!くらえ!」
クリフがさりげなくネガティブな自慢をしながら本気の球を投げてくる。その球はシエルさんには程遠いいが約150kmはあろうかという速度で向かってきていた、だが僕は先ほどと同じようにコースを予測するとボールが届く前にはコースから外れていた。
「はは、僕自身驚きがハンパないよ」
「くっそ、速度はこれで限界だな………なら」
クリフは攻尓が避けられる様になったらと前々から考えていたある作戦を実行する。
その作戦はただただ単純に変化球をなるべくフォームも分かりづらくして投球するといったものだ。
「次行くぞ!…ぉおぅらぁ!」
もはやヤケになったクリフは本気の球で変化球の急激に降下する球を攻尓の胸辺り、しゃがんで避けるであろう位置に投げた。
「読めた!ふふふ………!」
僕はクリフのフォームを見て少しは違和感を感じるが、何しろほとんど一瞬の出来事で細部までは見てられず見逃してしまう。そして胸辺りに来ると予測すると最も楽に最速で避けられるルートを導き出したと同時に動き出していた。
だが、それはクリフの罠であったと気付いたのはすぐのことだった。間延びした時間の中で、ボールが上から下へ縦回転していたの捉えるとそれは起きた。僕の膝が曲がり腰を落としている最中、前を飛んで来るボールは徐々に急降下していた。
「……!………くぅ」
降下してきたボールは僕の胸から上に当たると更に予想を出すとそれをどうするか、僕は考える暇もなく『当たる!』と直感で感じていた。
だが、僕の身体は僕の意思関係なく動いていた。まずしゃがもうとしていた身体は正座をするように膝をつきこの真っ直ぐしか飛ばないボールの進行方向から身体を捻り避けていた。
「はぁ、はぁ……あれ痛くない。てか当たってない?」
「今のは完全に当たったと思ったんだが」
「何か身体が勝手に避けたみたい。って言っても反射神経ってのは勝手に動くから反射なんだけどさ、だから意識しないほうが確実に避けられるのかも」
そういえばシエルさんの時も意識…と言うかあれは認識速度超えてたね。だから避けれたのか、けど少しカスっていた事を考えると僕の反射神経ではあの速度がギリギリという事かな。
「何だそれ無理ゲーじゃねぇかよ」
「いや、僕にも体力や限界はあるからいづれは当たるよ」
「そうだけど。ちっくしょー、なら当たるまで投げ続けてやる」
クリフは今までの実技訓練では攻尓が避けられる程度にしか投げてこなかったが、もし攻尓が成長して避けられる様になっても変化球があるから優位は変わらないと少なくとも思っていた。が、アテラの加護を受けてこうも変わると流石のクリフも自信を失ってしまっていた。
「すごいね。クリフ!まさか、いきなり当たりそうになるとは思はなかったよ!それにさっきボール急降下してきたけどあんなの隠してたんだ!驚いたよ!」
「うわ、本気の顔だ。その辺は勝てないなー。よし次だ!絶対この時間の内に当ててやる!」
それから僕らの訓練時間は終わりを迎えいつも通り解散していく。ただ違ったことはクラスメイトの話題が僕だったということだろう。
─────
私は浦風 小晴、担任のウェンティ・村雲先生のクラスの生徒、私は元名家の出で恩恵を授かっていたからこの『聖エリリアント学院』に入った。
そこで過ごしているうちにクラスメイト達の性格や好き嫌い、恩恵の優劣を認識し始め私の中で順位が生まれていった。ただ大抵の人は己内に順位は存在しているであろうから普通だとは思う。
ただ、ある日その順位を大いに覆すであろう人物が出てきた。守島 攻尓、彼はいつもクリフルト君と仲良く話しているだけで身体は男なのに筋肉のきの字も無いような身体をしているよう見受けている。
「どうして、急に避けられるようになったのかしら」
私の隣の席の親友──メリッサ・アルティングが「どうしたの?」と聞いてきていた。
「ううん、なんでもないわ」
そう返すとメリッサは「そっか」と言い教壇でウェンティ先生のHRでの旦那さんの惚気話をしていた。メリッサはその話を楽しそうに聞いてる。
深く考える事でもないわね。それにしてもメリッサの笑顔は可憐ね。
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