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恐る恐る電話に出る。
かといって声を発する気にもなれない
ので無言でいると、数秒後に「お、出た」
と聞き慣れた声が耳に響く。
「とりあえず生きてるね。良かった」
「うん」
「…泣いてる?」
「うん」
安堵なのか思い詰めた気持ちが爆発した
のか分からないけれど、どんどん涙が
溢れてきていた。鼻水をすする音で
バレてしまったらしい。
「それで、どうだったの」
「振られたよ」
自分で改めて口にすると心臓が痛い。
数時間前の何も知らずに有頂天な
自分が恨めしく思えてきた。
「なんて言ってたの」
「気になる人がいるからごめんって」
「は?それおかしくね」
「私も予想してないよこんなの」
「あいつ俺に佐々岡のこと好きだって
この前まで言ってたぞ」
「もう訳わかんないよ」
私のことを好きだと言ってたのは、
周りの人も何人かは知っている。
だから、まさか振られるだなんて思って
もみなかった。その分ダメージも大きい。
「それでなんで答えたの」
「応援してるって」
ほんとは1ミリも応援なんかしていなかった。
振られた理由も分からず、これは夢なのかと
まで思っていた私が、振り絞って出した一言。
最後まで、いい人という印象を崩さないための。
「えらいな」
「…?」
「よく耐えたな、それで取り乱さずに
応援してるって言えるなんて」
「…だって、好きな人にそう
言われちゃったら応援するしかないでしょ」
思ってもない言葉が飛びだす。
本当は好きな人とはいえ、自分と
結ばれないくらいなら不幸になれと
思ってしまう。そんな私の本意に、こいつ
は気付いていないだろうか。そう思った。
「良い奴だな」
そう言われても、全然喜べなかった。
私を買い被りすぎている。
そう言ってやりたかったけれど、
今はこれ以上自分を卑下すれば自我が
崩壊しかねないと思った。
「もう私どうしたらいいの」
「大丈夫?」
「死にたい」
「だめ」
「死なないと気が済まない」
「残された俺はどうすんの」
残された俺、という言い方に思わず
言葉が詰まる。まるで残された家族
のような言い方。あるいは恋人か。
残される俺の気持ちを考えろ、という
意味のこもったその言葉は、少しだけ
私の心を慰めた。私が死んだら心を
痛めてくれる人はいるんだ、
そう思えると少し気が楽になる。
「俺が今から佐々岡のとこ行くから」
「片道2時間はかかるだろ」
「かかっても行くよ」
「私もう寝てるから」
「えっ」
間抜けな声に思わずふふっと笑いがこぼれる。
私を慰めようと、必死になっている様子が
感じ取れた。その甲斐もあり、私は徐々に
普段通りのテンションを回復していった。
そんなくだらない会話を続けているうちに
2時間は経過して、やがてお互いに眠さが
垣間見える頃になっていた。
「今部屋真っ暗?」
「まっくら」
「ちゃんと布団かぶってる?」
「かぶってるよ」
「…もう寝る?」
「…うん」
段々と沈黙の秒数が増えていく。
電話が終わって、1人になればまた
苦しい時間が戻ってくるだろう。
名残惜しさも感じるものの、長電話で
疲れてきていたので頃合いを見て電話を
切ろうとしていた。
「佐々岡」
「なに」
「また明日」
「…うん、また明日」
「おやすみ」
「おやすみ」
急に辺りが無音に感じられた。
スマホを耳から離すと画面には
通話終了の表示があった。
よく見れば3時間半近く話していたようだ。
暗闇の中で光る画面を見つめる。
段々と眠気が強くなってきて、
スマホを枕の横に置いて静かに目を閉じた。
かといって声を発する気にもなれない
ので無言でいると、数秒後に「お、出た」
と聞き慣れた声が耳に響く。
「とりあえず生きてるね。良かった」
「うん」
「…泣いてる?」
「うん」
安堵なのか思い詰めた気持ちが爆発した
のか分からないけれど、どんどん涙が
溢れてきていた。鼻水をすする音で
バレてしまったらしい。
「それで、どうだったの」
「振られたよ」
自分で改めて口にすると心臓が痛い。
数時間前の何も知らずに有頂天な
自分が恨めしく思えてきた。
「なんて言ってたの」
「気になる人がいるからごめんって」
「は?それおかしくね」
「私も予想してないよこんなの」
「あいつ俺に佐々岡のこと好きだって
この前まで言ってたぞ」
「もう訳わかんないよ」
私のことを好きだと言ってたのは、
周りの人も何人かは知っている。
だから、まさか振られるだなんて思って
もみなかった。その分ダメージも大きい。
「それでなんで答えたの」
「応援してるって」
ほんとは1ミリも応援なんかしていなかった。
振られた理由も分からず、これは夢なのかと
まで思っていた私が、振り絞って出した一言。
最後まで、いい人という印象を崩さないための。
「えらいな」
「…?」
「よく耐えたな、それで取り乱さずに
応援してるって言えるなんて」
「…だって、好きな人にそう
言われちゃったら応援するしかないでしょ」
思ってもない言葉が飛びだす。
本当は好きな人とはいえ、自分と
結ばれないくらいなら不幸になれと
思ってしまう。そんな私の本意に、こいつ
は気付いていないだろうか。そう思った。
「良い奴だな」
そう言われても、全然喜べなかった。
私を買い被りすぎている。
そう言ってやりたかったけれど、
今はこれ以上自分を卑下すれば自我が
崩壊しかねないと思った。
「もう私どうしたらいいの」
「大丈夫?」
「死にたい」
「だめ」
「死なないと気が済まない」
「残された俺はどうすんの」
残された俺、という言い方に思わず
言葉が詰まる。まるで残された家族
のような言い方。あるいは恋人か。
残される俺の気持ちを考えろ、という
意味のこもったその言葉は、少しだけ
私の心を慰めた。私が死んだら心を
痛めてくれる人はいるんだ、
そう思えると少し気が楽になる。
「俺が今から佐々岡のとこ行くから」
「片道2時間はかかるだろ」
「かかっても行くよ」
「私もう寝てるから」
「えっ」
間抜けな声に思わずふふっと笑いがこぼれる。
私を慰めようと、必死になっている様子が
感じ取れた。その甲斐もあり、私は徐々に
普段通りのテンションを回復していった。
そんなくだらない会話を続けているうちに
2時間は経過して、やがてお互いに眠さが
垣間見える頃になっていた。
「今部屋真っ暗?」
「まっくら」
「ちゃんと布団かぶってる?」
「かぶってるよ」
「…もう寝る?」
「…うん」
段々と沈黙の秒数が増えていく。
電話が終わって、1人になればまた
苦しい時間が戻ってくるだろう。
名残惜しさも感じるものの、長電話で
疲れてきていたので頃合いを見て電話を
切ろうとしていた。
「佐々岡」
「なに」
「また明日」
「…うん、また明日」
「おやすみ」
「おやすみ」
急に辺りが無音に感じられた。
スマホを耳から離すと画面には
通話終了の表示があった。
よく見れば3時間半近く話していたようだ。
暗闇の中で光る画面を見つめる。
段々と眠気が強くなってきて、
スマホを枕の横に置いて静かに目を閉じた。
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