異世界陰陽録

蟠龍

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第2章 戦いの幕開け

運命の出会い…?

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役所の出口には人だかりが出来ていた。

どうやら俺の勇姿を見に来た奴らという訳では無いらしい。人々の視線の先には上空に浮かぶ赤いヒトガタがいた。

体つきはほっそりとしていて、尖った耳からエルフと分かる。
神々しい雰囲気を纏いながら、長い髪を優雅に揺らし弓を構えてこちらに向けて鋭く矢を放


つうぅぅぅぅぅ?!

間一髪の所で転がり矢を避ける。
危ない危ない…見とれていて死ぬところだった…

急いで矢が届かなさそうな所まで移動する。
どうやら戦っている人達は主に剣などの武器が多く、上空のヒトガタに攻撃が届かないようだ。向こうの武器は弓だから完全にあちらに有利な状況に持ち込まれている。


あれどうやって飛んでいるんだか…

「おいおい、勇者様じゃねえか。そんなとこで寝っ転がってるとあぶねえぞ。」

酒場にいた奴だろうか。1人の戦士が声を掛けてきた。

「だから勇者じゃないです…ってあなたは戦わないんですか?」

「俺は剣士だからなぁ。今は弓とか術師に任せるしかねぇんだよ。もっとこうガツーンといって…追っ払っちまいたいんだけどなぁー」

「あれってどうやって浮いてるんですか?」

「そりゃお前、風魔法だろ!あいつはこの里一の魔法弓士きゅうしだったしこんなの朝飯前だったよ。」

魔法弓士…まあ魔法を使う弓使いって事だろうな。
赤いヒトガタ-魔物になっても魔法も使える弓の腕もそのままとか反則だろ!

「ここは時間掛かりそうだから俺は他のところに行くが、勇者様も早く逃げろよ!」


なんやかんや忠告をくれて普通にいい奴だった彼は立ち去った。
…どうやら彼女と余り戦いたくないらしい。知り合いっぽかったし。

多勢に無勢と言うか、地上の弓士と術師の猛攻で彼女の攻撃も弱くなってきた。

今なら出口を抜けられそうだ。

「うん?」
ふと俺の視界に赤いものが映る。
と思ったらまた人の足に隠れて見えなくなった。

なんだか気になり、体を起こし近寄ると徐々にキリキリという謎の音が聞こえてきた。辺りを見回すと


眩いばかりの黄金色の髪
新緑のような瞳
つきたての餅のように柔らかそうな肌
を持つ

10人中10人に美少女と言わしめるであろう

美少女がいた。


「これは…もしやっ」

俺の今までの苦労が報われる時が!


彼女は弓をつがえ、魔物に狙いを定めていた。
俺は邪魔をしてはいけないと少し離れて放ち終わるのを待っていたのだが。

何故か放たない。


そしてキリキリという音はどんどん大きくなってくる。


なんだ…?何かあったのか?

「ちょっと君、大丈夫?」
警官の職質みたいになってしまったが仕方あるまい。


「なっ」
近づいてよく見ると彼女の顔は真っ青だった。目を見開いて魔物を見つめている。
キリキリという音は彼女の弓が引き絞られる音であり、弓の弦を引いている指には弦が食い込み血が出ていた。

明らかにヤバイ。

「おい!君血が出てるって…一体どうしたんだよ。」

俺がさっき見た赤いものは垂れた血だったのだろう。
どうにかして彼女止めなければと失礼して彼女の肩を揺さぶろうとした時

「ン」

何かを言っている

「…サン」






「オトウサン」




「え?」

オトウサンってお父さんだよな…ってまさかとは思うが…

彼女は震えていて今にも倒れそうだった。
俺は混乱する頭のまま彼女に手を伸ばし

また視界に赤いものが映る。そういえば彼女は怪我していたっけ。
足のホルダーから癒符いふを出そうとして、気が付く。



地面から《赤い霧》が湧き出していた。



彼女の足が霧になっていた・・・・・・・・・・・・


ヤバイ。マジヤバイ。ここに居たらヤバイ。

1ミリも理解できない状況の中


「逃げるぞ!!!」



俺は彼女の身体を抱え、がむしゃらに走り出していた。
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