異世界陰陽録

蟠龍

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第2章 戦いの幕開け

俺のガラスのハートは砕け散りました

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「はあっ…はっ…」

息を切らしながら女の子をお姫様抱っこして走る男。

一歩間違えれば誘拐犯とかそういう不審者に間違えられるであろう、この状況は

「や…やめてくださいっ!」

女の子のビンタで終わった。


「のぅわ!」

変な声をあげて転がっていく誘拐犯もどき…もとい俺。
 

「ななななななんですか!!突然!そうか人さらい!人さらいですね!?あなた見ない顔ですし、僕のこと攫うさらうつもりだったんですねこの犯罪者!!変態!」

「まっ…まっで…違…う」

目に涙を溜めながら弓を引く少女に必死に訴えるが、乱れた息はなかなか収まらない。
女の子1人ぐらいでへばるとか可笑しいな…結構鍛えてたんだが。

チラッと女の子の方を見ると口をへの字にしながらぷるぷる震えていた。
…そして弓の先は完全に俺の方に向いている。あれが放たれたら絶対にヤバイ。


絶対に相手を刺激してはならない。
ならば俺がやるべき事は

「すみませんでした!」



異世界に来て二度目の土下座である。
(初土下座は『理想と現実』にて☆)

恥は捨てた。



…反応がないな?よく分からんが謝ったし話ぐらいは聞いてもらえるはず。って
な、なんかまだぷるぷるしてるし、良く見たら顔が赤

シュパッ



音よりワンテンポ遅れて鋭い痛みが来た。



「えっ?」

「はっ?」

「えっ?」

「はっ!」

「えっと」

「はああああ!

ごっ」

「ごっ?」


「ごめんなさいいいいいいい!!!ごめんなさい!わざとじゃないんです!決してわざとじゃないんです!
いいい今のは動揺してしまって!びっくりして!怪我!怪我させるつもりじゃなかったんですでも血!血が出てりゅっ」


舌を噛んだみたいです。
…俺より痛そう。


「えっと。俺の話聞いてくれる?」

女の子は口を押さえながらコクコクと頷いた。

「その!今のが不慮の事故って言うのは分かった。頬掠ったかすっただけだし…そんな痛くないしね?

それで俺が君を連れてきたのは。君が真っ青な顔で弓を引いてて心配になったのと、俺の見間違いかも知れないんだが…


君の足がになってたから。」




その言葉を聞いた瞬間、彼女の顔から血の気が無くなっていくのが分かった。


「それを見た時、ここに居たら駄目だ。逃げろ。
本当そんな感じで体が動いて、気が付いたら君を抱えてここまで走っていたという…」

嘘は言ってないが、俺自身信じられない。


彼女と目が合う。
顔の色が一気に青から赤に変わった。

もしかして体調悪いんじゃ…

「あ、ありがとうございます!!
貴方は僕の命の恩人です!なのに僕はとんだご無礼を…」


「…いや!よかった。誤解が解けたみたいで」


「なのでそのけっ結婚の件も!今すぐにとはいかないのですが結婚を前提としたお付き合いから!お願いします!!

僕は男なので胸はありませんが、それ以外だったら女の子にも負けない!…と思います。

どうかアルストフ=クラリーチェを宜しくお願い致します!
アルって呼んでください!」



「けっ…」


結婚

それ以外



頭の中でそれらのワードがぐるぐるぐるぐーーると回り始め


何かが砕け散る音(多分俺のハート)を聞きながら

俺の意識は闇に落ちていった。



Good-bye.
俺の恋。
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