無色透明な人生から冒険者になります〜色が全ての世界で無色透明なボクも最強になりたい〜

アヴィ丸

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1巻

10話 黄の色

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 トゥーとアイスを食べたあとは完全に懐かれ都市の散策がてら一緒に歩く。
 歩く度に片っ端の食べ物を買い散らかす。
どこにそんなに入るんだろう。ひたすら食べて指を舐め、また次の獲物にロックオンする。

「そんなに食べて大丈夫なの?」
「トゥーはお小遣い貰ってたけど、今はお財布あるから大丈夫!」

 ニコニコと振り返る少女の二本の手には持ちきれない四本のイカ焼きがある。
 これまた香ばしいタレの香りを放ち、村育ちのボクには珍しい乾燥してない海産物にヨダレを飲み込む。

「なんだ、食べたいのか? ネスにもやるぞ」

 ん。と串を一本ほおばって、右手に余った一本を差し出してくる。
 得意げに差し出されたものに遠慮する気も起きず。トゥーと一緒に脇道のベンチに座りほお張る。

 プリンとした身に、あぶられた表面の弾力が凄まじい。タレは濃いめの味付けで口の中で淡白な味と交わり程よい味になる。
結論。イカ焼きとても美味しい。

 はふはふ言いながら頬張ってると

「ネスは食べるの遅いなー」

 横にいたはずの少女は次は船型のお椀によそられたタコヤキというものを買ってきた。
 もう既に口に放り込まれているらしく、口には用事がピコピコしている。

 丸い生地の中にタコの切り身が入ってるらしく、このタコもまた乾物ではないらしい。
 トゥーが手元の二皿をたいらげ残る一皿を眺めたあと、ボクとの間に置きゆっくり食べ始める。

「たまに都市に来るけど、一緒に遊べる人がいるとたのしーなー!」

 素足をパタパタとさせながら満面の笑みを浮かべながらボクを見て同じタイミングでひとつずつゆっくりほお張る。
 ボクに合わせてゆっくり食べているのだと思うと可愛らしい。

「トゥーは好きに食べていいんだよ?」
「ほんとか! ネスの分も買ってくるからな!」

 残りの自分の数個分を口に放り込みもぐもぐしながら走り出す。
 次は何を買ってくるのだろうすぐに帰ってくるだろうトゥーのことを考えると不思議と笑みがこぼれる。
 妹がいたらこんな感じだろうか、親がいないから妹なんているはずもなく、若い人のいない村ではお年寄りだけだった。
 トゥーが残してくれておいたタコヤキを一つ口に運ぶ。

「遅いな…」

 いや決して普通なら遅くないのだがさっきまでの電光石火の動きで買っては食べるトゥーを思うと、ボクが二個食べる間に買ってきたものが無くなるくらいしていてもおかしくは無い。
 なんだか嫌な予感がしてゴミを片付けベンチを立つ。

 ただ迷子になるだけならいいのだが、さっきの冒険者のこともある。
 またトラブルに巻き込まれてなければいいが。

 進む予定だった方向に早足で向かう。
 すると予想通り、先程のスキンヘッドの冒険者がトゥーに絡んでいた。

「てめぇクソガキ! 俺らの金もってきやがったな?」
「取られたの取り返しただけだもん! アイス代とネスの分!」
「あんなくそ高いアイスがあるわけねぇだろ! 何堂々と人の金で買い食いしてやがる!」

 トゥーの手には男の財布と袋に入った焼きトウモロコシが五本、そりゃ怒りたくもなるよ。
 あちゃーと手を顔にやりながらため息をつく。

「んじゃアイス分はもう食べたし返すよ」

 ポイッと放られた革袋からはカッパーの渇いたカラカラとした音が鳴る。

「てんめぇ…いくら食いやがった!」

 ボクが見た量はボクのところに帰るまでの道のりで余ったものだったらしく、男の財布は予想以上に減っている。

「んーとね…ごめんね、分かんないや」

 上を向きながら考える素振りをしながらも「にへへ」と恥ずかしそうに笑う。

「やっぱぶっ殺す…」

 拳を振り下ろす。少女に向けていいような攻撃ではない。
 ボクはトゥーを守ろうと抱きかかえるように間に割って入ろうとした。
 が、腕の中にトゥーはおらず空を切るはずだった拳はボクに当たる。

「「「!?」」」

 男とボクとトゥーがそれぞれ驚いた顔をする。
 ボクはトゥーを庇い守る相手が居なくただ殴られ、少女を叩き潰そうとした男は関係ない男を殴り、ボクが守る予定のトゥーは男の頭の上で足を上げている。

一閃

 男は地面に垂直に体が潰れるかのように折りたたまれる。
 トゥーが頭頂部に恐ろしい速度のかかと落としをしていた。

「んっごぁ!?」

 石畳に踏ん張った足先がめり込むように、男は深いスクワットの体勢で沈み込む。
 意識は完全に飛んだようで埋まった足で固定された体は遠巻きに群衆に眺められても一言も発さない。

「おいおい生きてんのかよ…」
「これってギルドの救急班呼べばいいのかしら」
「ほっとけほっとけ! 自業自得だぁ。それより嬢ちゃんうちのコロッケ食ってけよスカッとしたぜぇ」

 コロッケをふたつ紙にはさみ手渡してくる。

「いいの!?」

 目を輝かせながらサクサクッと二口で頬張りコロッケが無くなった手元に視線を落とす。

「美味しくてもう無くなっちゃった…」
「いい食べっぷりじゃねぇか! もっと持ってくか?」

 紙袋にガサガサと詰め込んでく気前のいいオヤジさん。
 そんなに詰めてしまってお店は大丈夫なのだろうか…
 美味しそうにほお張るのが嬉しかったのだろう。まだ昼時なのにショーケースからごっそりとコロッケが減る。

「ありがとおじさん!」

 またサクサクと美味しそうに二口で頬張るのを見て余ったコロッケは周りに買われていった。
 おそらく回収できる数を渡したのだろう。トゥーの食いっぷりを使って全部売り切るだなんて商魂たくましい。
 そんなことを思ってるとトゥーが紙袋を持って近づいてくる。

「助けよーとしてくれてたんでしょ? はいこれ、ありがと」

 紙に挟みボクにコロッケをひとつ手渡してくる。
 助けられてはないが、お礼なのだろう。
 またありがたく受け取り並んで一緒に食べる。
 トゥーはボクにまたペースを合わせて少女らしい口の大きさで食べている。

「誰かと一緒だと美味しーね!」
「普段誰か一緒に食べる人はいないの?」
「んー、エレトロと一緒に食べるけど味わって食べないからなー。森じゃのんびり食事してらんないんだって」

 トゥーはエレトロと呼ばれる保護者と一緒に森で過ごしているらしい。
 野性味の強い容姿は森で過ごしているなら仕方もないだろう。

「そのエレトロさん? は一緒に来てないの? トゥーみたいな女の子ひとりじゃ危ないよ?」
「エレトロは虎だから入れないのー。でもトゥーは三原色? とか呼ばれて強いから大丈夫だよー? さっきも見てたでしょ」

 一気に情報が流れ込んできて追いつかない。
 エレトロさんは虎で森でトゥーと生活…
 トゥーは三原色の黄色…

「トゥー…『雷獣』、トゥルエノ?」
「なんで名前知ってんだ!? やっぱりトゥーは人気者だったか…」

 本名を呼ばれたことにびっくりした様子で目をまん丸にしてこっちを向く。それでもコロッケは止められない。

「あ、でも『雷獣』も黄色の力もエレトロのものだよ。ただトゥーは一緒にいるだけ」
「でもトゥーはあんなに強いじゃないか」

 かかと落としされた冒険者の姿を思い出す。
今頃治療されているのだろうけど、全身無事だろうか…。

「トゥーの黄色はねチクデン?の力らしくて都市に長時間いると電気吸っちゃうからエレトロといるんだって。
さっき使ったのもエレトロから何かあったら使いなさいって貰った電気だよ。」

 三原色の黄色は虎を従えた『雷獣』トゥルエノではなく、トゥルエノを世話する『雷獣』エレトロを指しているらしい。

「みんなエレトロがばらまいた雷見て背中にいたトゥーを三原色って思ったらしいよ? 遠いしピカピカしてたからトゥー後からだってみんな勘違いしてるんだって」

 エレトロとトゥーが三原色として認知された時は、エレトロが雷を落としていて、その背にいたトゥーの姿が印象的だったのだろ。
 だからトゥーだけが都市に来て買い食いしていたのだろう。

「さっきのでもらった電気使っちゃったから、エレトロに怒られるしそろそろ帰る!」
「そっか。トゥーは強いけど気をつけて帰るんだよ」
「走って帰るから大丈夫!」

 トゥーはそう言い残すと髪を少しだけ逆立て、残りのコロッケを抱えて目に止まらない速度で壁を登ったらしい。
 登ったであろう壁にはパリパリと雷の高エネルギーの残滓が見える。

「また会えるかな…」

 明るい花が咲いたような笑顔の少女を思い返しながら、空が赤くなってきたのでバーミリオン家へと足を向ける。

 トゥーほどでは無いが、楽しかった一日に自然と早足で帰った。
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