無色透明な人生から冒険者になります〜色が全ての世界で無色透明なボクも最強になりたい〜

アヴィ丸

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1巻

11話 貰った色

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「どうだ?キツいとこや動きづらい所はあるか?」
「採寸もしっかりしてもらったので大丈夫です。」

 トゥーと出会ってから一週間が過ぎた。
オーダーメイドの装備は小柄で軽量なボクはレザー装備なので、フルプレートなどより断然早く仕上がった。

 ラヴァさんよりは心臓、首、関節部や健などにプレートが多く付いている。回復しかできないので即死を防ぐため当然だろう。

 赤のためにオーダーメイドはしても装備の内容は初級冒険者のボクに相応しいシンプルなレザー装備だ。

 ベルトや留め具などに赤の意匠が施されており、綺麗な赤はバーミリオン家の証のようで嬉しかった。

「ほら、ネスの武器だ。」
「ぶ、武器もいいんですか!?」


 武器もゼインさんが早めに注文していてくれたらしく、刃の中心にカードリッチが付いた両刃の短剣をプレゼントしてくれたものを腰に差す。

 探索用にはなかったカードリッチが色を使えるようになったと実感させる。

 稽古している中で小太刀のような核に届く武器も覚えてほしいらしいが、武器を使い慣れてないボクにはリーチよりも使いやすさを重視してくれたらしい。
 切る動きは難しかったので、拳を振り抜くように使えることや、突きも動きやすいのはとてもありがたかった。

「他の仲間の武器を使ってとどめを刺すことだってある。全武器の稽古も行っていくからな」

 仕事の合間に稽古までつけるらしい。

(休みなんてものはないんだろうな…)

 とほほと肩をおとす。

「それでは今回の遠征先を発表する。今回はネスの稽古も兼ねているため、私とお嬢、ネスだけで森の警備だ。本来二人で行くつもりだったがお嬢が着いて行くときかなくてな」
「キミを巻き込んだからね…キミはワタシが護るよ」

 ボクは一応仮でも護衛なんだけど…

 喉元まで出た言葉は圧倒的な戦力差から、口からは発せられない。

「森で最近山火事が多発していてな。火の案件ならとギルド直々の依頼だ」
「山火事…ですか?」
「森の奥に住む村人達からは、夜に動く炎を見たのだとか。昼は目撃情報のあった場所の探索、夜は範囲を広げて炎を探す。あくまで討伐は浅葱に頼むらしいから今回は探索までだな」
「炎を探すのはワタシがやる。同じ炎なら燃えれば感じられる…はず」

 ラヴァさんが着いていくためにフンフンと必死にアピールしてくる。

 いつも冷静なラヴァさんがやるととにかく可愛い。

 普段落ち着いている分、たまにある感情がわかる仕草が可愛らしくてたまらない。
 ゼインさんも諦めたように今日何度目かのため息をつく。

「まぁ…そういうことだ。炎の案件ならお嬢か浅葱家なのだが、あいにく浅葱は高ランクダンジョン踏破に出てしまっていてな」

 そこで探索までで選ばれたのがバーミリオン家だったと。

「それでは、準備が出来次第出発する。森での戦闘は基本的にネスに任せる。これもいい訓練になるだろう」
「はい! えっ?」

 ほんとうに森の戦闘は全て丸投げだった。

 ダンジョンからはぐれたコボルドは見慣れていたので難なく倒し

 水辺の有毒スライムは切ってもプルプルされたので核を突き

 空から降ってくるアローバードは直撃の瞬間に相手の速度を使って真っ二つに

 ゴブリンの集落だけはホブゴブリンをゼインさんが足止めしてくれて、棍棒や槍、折れた剣を持ったゴブリンを片付ける。
 終わったらゼインさんはホブゴブリンをボクになすり付けさっさとラヴァさんの護衛に戻る。
 肉厚でほかのゴブリンとは違う体格差に短剣では致命傷にならないので喉元に突き立てた。

 ゼインさんは森の生態系を把握しているかのように朝からボクにモンスターをぶつけてくる。

 受けた傷は自分で癒し、ダンジョン外の森のランク0のモンスター達は何とかしとめられた。

 ゼインさん程の圧倒的無理感がなく、工夫しながらならボクでもなんとかやれた。

 色で身体能力の向上だけは出来るようにならなかったが、回復だけは上手くなったような気がする。

 森のモンスターに殺されるような気がしなくなってきた頃には夕暮れだった。

「そろそろキャンプの準備を始めよう。ワタシは設営するから、ネスは周囲に巣がないか見回ってきてくれ。以前まではなかったが新しいものがあるかもしれない」
「ワタシは…」
「お嬢はもうすぐ夜なので近づいてくる周りの熱に集中していてください」

 体良くラヴァさんに何もさせまいと上手くなだめる。
 ラヴァさんは大人しく倒木に座りながら暇つぶしに炎でお手玉をしている。

 その間にもゼインさんのおかげでテキパキとテントができ、キャンプ場になってきた。

 ボクは山育ちの健脚を生かし小走りで周囲を探索する。

「身体強化の練習もしてみようかな…」

 夜も深けモンスターが少なくなり、戦闘に集中しなくてよくなったので、未だに苦手な強化の練習をしようと思った。

 色の使い方は最近手に入れた力なだけあって赤子も同然だ。

 無理に使えば筋肉は燃え、余計な熱で肉は固くなり、酸素を使い切り呼吸が苦しくなる。

 失敗しては何度もラヴァさんのお世話になった。何回目か忘れた頃にはゼインさんが止めてくれた。

「まだ力を手に入れてそんなに時間が経っていない。本来生まれてから7年は暴発を防ぐ期間に使うゆだ。そして初等教育がはじまり色の何たるかを覚える。
君にはその期間がどちらもない、暴発する可能性もあるし、力の使い方も分かってないんだ。焦らずゆっくりやろう」

 何度も自身のからだを焼いたボクに優しく語ってくれた。無理をさせてすまないとそんな顔をしていた。

 無色から三原色の赤をいただけたのに何を謝ることがあるのだろ。

 感謝こそするが謝られる必要性はない。

 ボクは数日前の会話を思い出しながら、最低限の出力で体に熱を込める。慣れた自己回復も同時に発動させ肉が焼けるのを防ぐ。

 ラヴァさんやゼインさん、あの赤の剣士だって赤使いはみんなこうして身体能力強化する。

「ぐっ…あつい…」

 熱が上手く逃がせない。体の中が熱され酸素が減っていき血が暴れる。

 燃えるからだを自己回復で無理やり押さえ込み、暴発させないように熱を少しでも逃がしていく。

 何度も失敗したものがそんなすぐに上手くいくはずもない。焼ける瞬間回復させるのは地獄の作業だが、短期間で使い方を覚えるためにはそれしかない。

 体が冷めてきたのを感じたボクはまた体に熱を込める。今度は上手く行きそうな気がする。
 体の中の熱が燃え滾らず、剥き出しの炎からランプのようなイメージになる。

(コントロール出来てる…?)

 なにか不思議な感覚だった。あんなに難しかった強化があっさりと出来てしまうなんて。数分前の地獄の熱はどこへ行ったのだろう。

 木陰から少年を覗くものが一人

 ラヴァだ。熱の探知をしている中、少年が強化の熱を上げたため見に来たのだ。

「がんばれ…」

 ラヴァは少年が燃えないように少年の熱をほんの少しだけアシストしていた。炎を扱えない少年が燃えないように少しだけ囲いを作って扱いやすくさせる。

 ネスが感じたランプのような感覚はラヴァのおかげだった。

「おやめ下さい…お嬢」

 ラヴァが熱を操作するために少年に向けていた手をゼインが下ろさせる。

「私も彼の熱は感じました。お嬢が手伝ってしまっては意味が無い。彼は勤勉だ、いずれ自分で使い方を見つけるでしょう」
「でも…苦しそう」
「苦しんででもなにかなしとげたいことがあるのでしょう。無色の彼にしか分からない何かが」

 ラヴァが熱の操作を止める。

 途端少年が苦しそうに息を吐き出す。熱せられた体は乾いた息しか吐き出せず、少年を焼く。

「癒すだけもダメかな…」

 ゼインは何も言わず後ろを向く。
 ボクは熱に犯され、酸素が抜けてフラフラした。

 また以前のような瀕死の時のように優しい温かさに包まれる感じがした。
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