無色透明な人生から冒険者になります〜色が全ての世界で無色透明なボクも最強になりたい〜

アヴィ丸

文字の大きさ
13 / 25
1巻

13話 心の色

しおりを挟む
 決意を新たにし、ほぼ何もまとわないラヴァさんの瞳を凝視したボク。
 やましい気持ちなんて持てる空気ではなく、実際少しも持っていなかった。

 が、ラヴァさんがあまりにも見つめられて我に返ったのがわかった瞬間にボクも察して顔を真っ赤にしまた背を向ける。

「ごめん…こんなの見せて…」
「いえ、綺麗でした?」

 暴れた思考はまともな返答もできない。
 ラヴァさんがボクに傷を見せたことを謝っているのに、ボクはラヴァさん自身に感想を述べる。

 さらに川辺の空気はなんとも言えない熱を帯びる。

 二人の顔の熱がそのまま赤色の力のように周囲を暑くしている気さえする。
 少年は透明な白髪頭には目立つ真っ赤な顔を。
 ラヴァは白い肌からは想像できないほど恥ずかしさで血がめぐり赤くなる。

「そうだ、薪! …拾えたので戻りますね。ラヴァさんも水浴びしすぎる前に帰ってきてくださいね」
「キミも…暗いから、戻る道気をつけてね」

 お互い空気に耐えきれず離れる選択をする。
 ラヴァさんは変な汗をかいたらしく水浴びに戻る。
 ボクは傍に置いていた薪の枝を抱え元来た道を戻る。

 なんだか早足なのは決意を新たにしたからだろう。ここから一瞬でも早く離れたい訳では無い。
 熱い顔に冷たい夜風が気持ちよく感じた。

 キャンプ地に戻るとゼインさんが小さな焚き火の前で座っていた。

「戻ったか…」

 ゼインさんの近くに薪を置く。
 ゼインさんは置かれた枝を焚き火に投げ込み、長めのもので形を整える。

「見たか?」

 何をと言わないのは、ゼインさんも分かっているからだろう。
 ラヴァさんがボクに力を見せるためにあえて護らないように堪えたゼインさんはどんな気持ちだったのだろう。

「お嬢が…ネスに力を見せると言った時、私は反対したんだ。できる限り自身を炎にする力は使わないようにと…私がずっと護衛をしていた」

 ゼインさんは燃える焚き火を眺めながら、炎に思いを馳せて心の内を語る。

「私が護る間は、お嬢は自身を燃やす必要はない。少しでも一人の女性としての人生を歩んで欲しいと、体に負荷をかけないようにと私は強くなった」

 ゼインさんの前で炎が揺れる。

「力を持つものの定めと喜ぶお父上とは反対に、私はあそこまでの力を使う必要は無いと思っていた。
しかし、お嬢は優しい。人を助けるためなら自身を燃やしてでも命を助ける」

 パチンと少し水を含んだ枝が弾ける。ぱちぱちと鳴る焚き火とゼインさんの静かな語り声だけが耳に届く。

「お嬢は炎だ。体にでた焦げは時間が経てば元通りになる。傷だってつかない。女性として辛い思いはしないだろう…
だが、そんな命を燃やし尽くさんと、刹那に灯す炎は…私には、優しくも怖く見えてしまう」

 ゼインさんは胸の内を語るうちにだんだんと熱がこもり、思い詰めていたのか貯めた感情を吐き出す声は少し泣いているかのようだ。

「ネスに護衛を頼んだ理由も分かっただろう。キミにそれを分かって欲しくて、お嬢の提案を飲んだ。
キミが少しでもお嬢の力の対価を理解してくれたのなら、良かった。ありがとう」

 視線を焚き火からこちらに向け、優しい顔で語りかける。
 今まで見てきた完璧なゼインさんとの差にボクまで泣きそうになる。

「…がんばりますっ!」

 鼻をすすりながら、つられて涙目になったボクはこの夜二回目の決意表明をした。

「ただいま…」
「おかえりなさいお嬢、お身体は大丈夫ですか」

 水浴びを終えたラヴァさんがどこか嬉しそうに帰ってくる。浴びた水は炎の体にはもう水気を感じさせず綺麗にかわいている。

 力を無駄にボクのために見せたというのに、ボクの決意でこの人の笑顔は採算が合うのだろうか。
 そんなことをきれいな顔を眺め思った。

「あんまりジロジロ見られると…困る」
「…す、すすすみません!」

 ゼインさんとの会話で生まれた空気は、顔を赤くさせ体を抱き込むラヴァさんによって壊される。

 思い出し、ボクは顔を真っ赤にして服を着ているのに背中を向ける。

「おい、ネス。患部を眺めるのまでは許したが…腹を見ただけの反応ではないな」

 ゼインさんのオーラが優しかったものからだんだんと大きくなる。

 ボクはこのゼインさんを知っている。

「さぁ構えろ…お嬢に抱いた気持ちが消えるまで鍛え抜いてやる」

 その場で立ち上がり拳を構えるゼインさん。

「さ、さっきまであんなにいい雰囲気じゃなかったですかー!」
「いい雰囲気だと!? なおさら鍛え抜かねばならないな!」
「ラヴァさんとじゃないですよ!」

 繰り出されるゼインさんの拳をボクは避ける。避け無かったらどうなるかなんてのは、避けたさきにある物達が証明してくれている。

 地面は凹み、後ろの身動きが取れないトレントなんかは根元から引っこ抜ける。

(ボクを攻撃する中で初めて本気なんじゃ…)

 ゼインさんの巨体から繰り出される隕石のような拳をギリギリを避け続け休憩のためのキャンプも休まる時間がなかった。

 ラヴァさんは焚き火の前のトレントだった木に座り、こちらを眺めてコロコロと笑っている。
 ラヴァさんもボクに隠していた対価を晒し、受け入れられたことでどこかスッキリとした顔だ。

(よかった…)

 ラヴァさんが笑う顔を視界にとらえた瞬間に景色が流れ、意識は刈り取られる。

「「あっ…」」

 ゼインさんとラヴァさんの声が聞こえた。
 ギリギリ避けれる攻撃をボクがラヴァさんを意識してしまったため食らう。

 何度目かの優しい温かさに包まれる。

 今度はラヴァさんを知れたからなのか、いつもより人の体温を感じられる。

「だ、ダメですよお嬢!」

 ゼインさんも騒いでいる声が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。

 優しい温かさと柔らかさを最後にボクの意識は飛んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

2週目の人生ですが、生きていた世界にファンタジーがあるとは思ってなかった

竹桜
ファンタジー
 1人で生きていた男はある事故に巻き込まれて、死んでしまった。  何故か、男は生きていた世界に転生したのだ。  2週目の人生を始めたが、あまり何も変わらなかった。  ある出会いと共に男はファンタジーに巻き込まれていく。     1周目と2週目で生きていた世界で。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...