21 / 25
1巻
21話 少年の色
しおりを挟む
サラマンダーは圧倒的だった。
モンスターのランクが上がると、途端に壁のように強さに開きが出る。下位から中位で思考が追加されるが、中位から上位はもっとシンプルだ。
強さ
ただそのひとつだけが飛び抜けた時、モンスターは上位に仲間入りする。
上位モンスターはドラゴンが多くを占めており、目の前のサラマンダーも赤の上位種としてギルドのモンスター図鑑にも掲載されている。
そんな相手に赤の最上位がいるとはいえ、それは人の尺度だ。自然界のモンスターの尺度とは測り方が違う。器が違えば入る力の大きさも変わる。人の限界とモンスターの限界とではその時点で大きく差が開く。
少女の炎はジワジワと押し負け、その体に火傷を負っていく。一般人なら溶けてしまうだろう熱も赤の最上位だからこそ、この程度で済む。
しかし、少年は熱風で肌は焼かれるが炎での火傷は一度も負わなかった。
短剣で弾く度に、向かってくる炎は消滅する。炎を消すイメージは持てても、風を消すイメージが持てないため熱風までは消しきれない。
生身で受けるには熱風も致命的だが、少女と戦う少年は弱みを見せる気はなかった。
既にボロボロの体に少しダメージが入ったくらいもう変わらない。
炎が消せるのだから果敢に攻めれる。
ラヴァが炎を相殺しながら詰め、ネスが炎を消しながら詰める。高速な二人の動きは、綺麗な深紅と空気に溶け込むような透明の奇跡を混ざり合いながら描く。
「はぁ!」
「ふっ!」
炎をかいくぐり詰めた二人は結晶を狙えるようにするため削る。
胸に結晶があるため、普通に戦っていては結晶を壊せない。
ゼインのように剛力で隙を作れるのは稀なケースで、基本的には体の片側を削り斜めに倒すのがセオリーだ。
体を倒れこませ、結晶まで壊せる人間は本の数人だからセオリーなんて図鑑に書いてあっても机上の空論のようなものだが。
赤の長剣と透明な短剣が何度も右半身に入る。
炎そのものにも関わらず熱でダメージを入れられ、短剣ではその部分を削り取られる。
「ギャアァァァァオオオオオァァァァァァ!!!」
「効いてます!」
「もう一息…!」
ボク達はサラマンダーの咆哮をチャンスだと確信して前に出る。体表の炎が弱まる。回復をしようとしているのだろう。体の傷に炎がチラつく。
「させない…」
ラヴァさんが治りかけの傷に長剣を振り抜く。体表が治りきってない傷にはさらに剣が深くはいり、傷を広げる。
「はぁあ!」
ボクの色にサラマンダーの外皮の硬さは関係ない。そこにあるものを削り取るため新しい傷を増やしていく。
それでも上位種、弱点を簡単には露出しない。傷を治せないとみるや、体を無理やり炎で多い動かす。覆われた箇所は炎の鎧となって、右半身への追撃は難しくなる。
「あれじゃ、ワタシの炎じゃ切れない…」
「ボクが消します。」
「ネスの色はまだ不確定要素が多いから、結晶を壊すことも考えると…あの炎には使えないよ。」
短剣に少しづつ足しながら戦っていたが、体を覆って防御していなくても使い慣れてない色が切れるのは早い。
今のネスは色の使い方を知ったばかりの子供と同じ量しか使えないだろう。
「ネスが来てくれたおかげでだいぶ回復できた。今なら火力をあげれば強引にも隙を作れる。」
「でも、体が…!」
「ワタシはラヴァ・バーミリオンだよ?」
先陣を切ってみんなを護るのがワタシだよと優しく微笑む。
自分の傷よりも人を優先させる彼女らしい。
ボクはそんな彼女を見て誇らしく笑顔になってしまう。
「…ボクの体少しだけ治して貰えませんか。」
「赤も消えてボロボロだもんね…」
お互いボロボロなのに回復を頼む。こんなラヴァさんに回復を頼むのは気が引けるがこの後のために必要な事だった。
サラマンダーが鎧をまとい、残りの炎で攻撃よりも回復を優先してる間に、ボクの体も癒してもらう。ラヴァさんの炎がまた体の奥に灯されるような気がした。
「ありがとうございます、これで…戦える。」
「…?」
ボクが優しく微笑むとラヴァさんは不思議そうに首を傾げる。
彼女の腕に短剣の背を添わせる。
ラヴァがまとう炎の鎧が消える。
「ネス…!なにを!」
「もう炎を相殺するには数回分無いですよね…いくら赤の体でもまずいです。だからラヴァさんを護るためにはこれしかないです。」
止めたってボクより前に立っちゃいますからと笑って語りかける。
「ネス、待って!…ッ!」
少女はあまりに無謀な戦いに挑もうとする少年を止めようとしたが炎を消され、何とか動かしていた体がガクッと落ちる。
「サラマンダーが来ます。ラヴァさんは少しでも離れていてください。」
「ギャアァァァァオオオオオァァァ!!!」
回復を終えたサラマンダーの体表には傷は見当たらない。傷への追い打ちを避けるため、体力を消耗してでも治したようだ。
視界の端でサラマンダーが起き上がるのを確認して、ボクはラヴァさんの方を優しく肩を押す。
フラフラのラヴァは、激しい戦闘で焼け野原となった場所から木々が生い茂る森へと入り込む。
力が枯渇し、光を遮る森はラヴァには酷く暗く感じた。
「…貴方だけは護ります。少しでも離れてください。」
サラマンダーから視界を切ってでもラヴァが向かおうとしてこないことを確認する。
動けないなら、この焼けて開けた場所にいるよりは森の木に守られる方がマシだろう。
「今度は逃げられないな…」
コボルドから逃げ、ミノタウロスから逃げ回り、ラヴァに助けて貰った少年は現状を確認してふっと笑ってしまう。
「まさかボクがサラマンダーと一人で戦うなんて誰も想像つかないだろうなぁ…。」
村の人もボクをはめた冒険者たち、誓約書を書かせたギルドの人達、ゼインさんですら想像つかないだろう。
「さぁ、人生最初の冒険をしよう。」
「ギャアァァァァオオオオオァァァ!!!」
高々と炎をあげるサラマンダーに何も持たなかった少年が対峙する。
サラマンダーからは見えない色を持つ少年は、炎に照らされながら短剣を構えるだけにしか見えなかった。
モンスターのランクが上がると、途端に壁のように強さに開きが出る。下位から中位で思考が追加されるが、中位から上位はもっとシンプルだ。
強さ
ただそのひとつだけが飛び抜けた時、モンスターは上位に仲間入りする。
上位モンスターはドラゴンが多くを占めており、目の前のサラマンダーも赤の上位種としてギルドのモンスター図鑑にも掲載されている。
そんな相手に赤の最上位がいるとはいえ、それは人の尺度だ。自然界のモンスターの尺度とは測り方が違う。器が違えば入る力の大きさも変わる。人の限界とモンスターの限界とではその時点で大きく差が開く。
少女の炎はジワジワと押し負け、その体に火傷を負っていく。一般人なら溶けてしまうだろう熱も赤の最上位だからこそ、この程度で済む。
しかし、少年は熱風で肌は焼かれるが炎での火傷は一度も負わなかった。
短剣で弾く度に、向かってくる炎は消滅する。炎を消すイメージは持てても、風を消すイメージが持てないため熱風までは消しきれない。
生身で受けるには熱風も致命的だが、少女と戦う少年は弱みを見せる気はなかった。
既にボロボロの体に少しダメージが入ったくらいもう変わらない。
炎が消せるのだから果敢に攻めれる。
ラヴァが炎を相殺しながら詰め、ネスが炎を消しながら詰める。高速な二人の動きは、綺麗な深紅と空気に溶け込むような透明の奇跡を混ざり合いながら描く。
「はぁ!」
「ふっ!」
炎をかいくぐり詰めた二人は結晶を狙えるようにするため削る。
胸に結晶があるため、普通に戦っていては結晶を壊せない。
ゼインのように剛力で隙を作れるのは稀なケースで、基本的には体の片側を削り斜めに倒すのがセオリーだ。
体を倒れこませ、結晶まで壊せる人間は本の数人だからセオリーなんて図鑑に書いてあっても机上の空論のようなものだが。
赤の長剣と透明な短剣が何度も右半身に入る。
炎そのものにも関わらず熱でダメージを入れられ、短剣ではその部分を削り取られる。
「ギャアァァァァオオオオオァァァァァァ!!!」
「効いてます!」
「もう一息…!」
ボク達はサラマンダーの咆哮をチャンスだと確信して前に出る。体表の炎が弱まる。回復をしようとしているのだろう。体の傷に炎がチラつく。
「させない…」
ラヴァさんが治りかけの傷に長剣を振り抜く。体表が治りきってない傷にはさらに剣が深くはいり、傷を広げる。
「はぁあ!」
ボクの色にサラマンダーの外皮の硬さは関係ない。そこにあるものを削り取るため新しい傷を増やしていく。
それでも上位種、弱点を簡単には露出しない。傷を治せないとみるや、体を無理やり炎で多い動かす。覆われた箇所は炎の鎧となって、右半身への追撃は難しくなる。
「あれじゃ、ワタシの炎じゃ切れない…」
「ボクが消します。」
「ネスの色はまだ不確定要素が多いから、結晶を壊すことも考えると…あの炎には使えないよ。」
短剣に少しづつ足しながら戦っていたが、体を覆って防御していなくても使い慣れてない色が切れるのは早い。
今のネスは色の使い方を知ったばかりの子供と同じ量しか使えないだろう。
「ネスが来てくれたおかげでだいぶ回復できた。今なら火力をあげれば強引にも隙を作れる。」
「でも、体が…!」
「ワタシはラヴァ・バーミリオンだよ?」
先陣を切ってみんなを護るのがワタシだよと優しく微笑む。
自分の傷よりも人を優先させる彼女らしい。
ボクはそんな彼女を見て誇らしく笑顔になってしまう。
「…ボクの体少しだけ治して貰えませんか。」
「赤も消えてボロボロだもんね…」
お互いボロボロなのに回復を頼む。こんなラヴァさんに回復を頼むのは気が引けるがこの後のために必要な事だった。
サラマンダーが鎧をまとい、残りの炎で攻撃よりも回復を優先してる間に、ボクの体も癒してもらう。ラヴァさんの炎がまた体の奥に灯されるような気がした。
「ありがとうございます、これで…戦える。」
「…?」
ボクが優しく微笑むとラヴァさんは不思議そうに首を傾げる。
彼女の腕に短剣の背を添わせる。
ラヴァがまとう炎の鎧が消える。
「ネス…!なにを!」
「もう炎を相殺するには数回分無いですよね…いくら赤の体でもまずいです。だからラヴァさんを護るためにはこれしかないです。」
止めたってボクより前に立っちゃいますからと笑って語りかける。
「ネス、待って!…ッ!」
少女はあまりに無謀な戦いに挑もうとする少年を止めようとしたが炎を消され、何とか動かしていた体がガクッと落ちる。
「サラマンダーが来ます。ラヴァさんは少しでも離れていてください。」
「ギャアァァァァオオオオオァァァ!!!」
回復を終えたサラマンダーの体表には傷は見当たらない。傷への追い打ちを避けるため、体力を消耗してでも治したようだ。
視界の端でサラマンダーが起き上がるのを確認して、ボクはラヴァさんの方を優しく肩を押す。
フラフラのラヴァは、激しい戦闘で焼け野原となった場所から木々が生い茂る森へと入り込む。
力が枯渇し、光を遮る森はラヴァには酷く暗く感じた。
「…貴方だけは護ります。少しでも離れてください。」
サラマンダーから視界を切ってでもラヴァが向かおうとしてこないことを確認する。
動けないなら、この焼けて開けた場所にいるよりは森の木に守られる方がマシだろう。
「今度は逃げられないな…」
コボルドから逃げ、ミノタウロスから逃げ回り、ラヴァに助けて貰った少年は現状を確認してふっと笑ってしまう。
「まさかボクがサラマンダーと一人で戦うなんて誰も想像つかないだろうなぁ…。」
村の人もボクをはめた冒険者たち、誓約書を書かせたギルドの人達、ゼインさんですら想像つかないだろう。
「さぁ、人生最初の冒険をしよう。」
「ギャアァァァァオオオオオァァァ!!!」
高々と炎をあげるサラマンダーに何も持たなかった少年が対峙する。
サラマンダーからは見えない色を持つ少年は、炎に照らされながら短剣を構えるだけにしか見えなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
2週目の人生ですが、生きていた世界にファンタジーがあるとは思ってなかった
竹桜
ファンタジー
1人で生きていた男はある事故に巻き込まれて、死んでしまった。
何故か、男は生きていた世界に転生したのだ。
2週目の人生を始めたが、あまり何も変わらなかった。
ある出会いと共に男はファンタジーに巻き込まれていく。
1周目と2週目で生きていた世界で。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる