無色透明な人生から冒険者になります〜色が全ての世界で無色透明なボクも最強になりたい〜

アヴィ丸

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1巻

21話 少年の色

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サラマンダーは圧倒的だった。

モンスターのランクが上がると、途端に壁のように強さに開きが出る。下位から中位で思考が追加されるが、中位から上位はもっとシンプルだ。

強さ

ただそのひとつだけが飛び抜けた時、モンスターは上位に仲間入りする。
上位モンスターはドラゴンが多くを占めており、目の前のサラマンダーも赤の上位種としてギルドのモンスター図鑑にも掲載されている。

そんな相手に赤の最上位がいるとはいえ、それは人の尺度だ。自然界のモンスターの尺度とは測り方が違う。器が違えば入る力の大きさも変わる。人の限界とモンスターの限界とではその時点で大きく差が開く。

少女の炎はジワジワと押し負け、その体に火傷を負っていく。一般人なら溶けてしまうだろう熱も赤の最上位だからこそ、この程度で済む。

しかし、少年は熱風で肌は焼かれるが炎での火傷は一度も負わなかった。
短剣で弾く度に、向かってくる炎は消滅する。炎を消すイメージは持てても、風を消すイメージが持てないため熱風までは消しきれない。
生身で受けるには熱風も致命的だが、少女と戦う少年は弱みを見せる気はなかった。

既にボロボロの体に少しダメージが入ったくらいもう変わらない。
炎が消せるのだから果敢に攻めれる。

ラヴァが炎を相殺しながら詰め、ネスが炎を消しながら詰める。高速な二人の動きは、綺麗な深紅と空気に溶け込むような透明の奇跡を混ざり合いながら描く。

「はぁ!」
「ふっ!」

炎をかいくぐり詰めた二人は結晶を狙えるようにするため削る。
胸に結晶があるため、普通に戦っていては結晶を壊せない。
ゼインのように剛力で隙を作れるのは稀なケースで、基本的には体の片側を削り斜めに倒すのがセオリーだ。

体を倒れこませ、結晶まで壊せる人間は本の数人だからセオリーなんて図鑑に書いてあっても机上の空論のようなものだが。

赤の長剣と透明な短剣が何度も右半身に入る。
炎そのものにも関わらず熱でダメージを入れられ、短剣ではその部分を削り取られる。

「ギャアァァァァオオオオオァァァァァァ!!!」
「効いてます!」
「もう一息…!」

ボク達はサラマンダーの咆哮をチャンスだと確信して前に出る。体表の炎が弱まる。回復をしようとしているのだろう。体の傷に炎がチラつく。

「させない…」

ラヴァさんが治りかけの傷に長剣を振り抜く。体表が治りきってない傷にはさらに剣が深くはいり、傷を広げる。

「はぁあ!」

ボクの色にサラマンダーの外皮の硬さは関係ない。そこにあるものを削り取るため新しい傷を増やしていく。

それでも上位種、弱点を簡単には露出しない。傷を治せないとみるや、体を無理やり炎で多い動かす。覆われた箇所は炎の鎧となって、右半身への追撃は難しくなる。

「あれじゃ、ワタシの炎じゃ切れない…」
「ボクが消します。」
「ネスの色はまだ不確定要素が多いから、結晶を壊すことも考えると…あの炎には使えないよ。」

短剣に少しづつ足しながら戦っていたが、体を覆って防御していなくても使い慣れてない色が切れるのは早い。
今のネスは色の使い方を知ったばかりの子供と同じ量しか使えないだろう。

「ネスが来てくれたおかげでだいぶ回復できた。今なら火力をあげれば強引にも隙を作れる。」
「でも、体が…!」
「ワタシはラヴァ・バーミリオンだよ?」

先陣を切ってみんなを護るのがワタシだよと優しく微笑む。
自分の傷よりも人を優先させる彼女らしい。
ボクはそんな彼女を見て誇らしく笑顔になってしまう。

「…ボクの体少しだけ治して貰えませんか。」
「赤も消えてボロボロだもんね…」

お互いボロボロなのに回復を頼む。こんなラヴァさんに回復を頼むのは気が引けるがこの後のために必要な事だった。

サラマンダーが鎧をまとい、残りの炎で攻撃よりも回復を優先してる間に、ボクの体も癒してもらう。ラヴァさんの炎がまた体の奥に灯されるような気がした。

「ありがとうございます、これで…戦える。」
「…?」

ボクが優しく微笑むとラヴァさんは不思議そうに首を傾げる。
彼女の腕に短剣の背を添わせる。
ラヴァがまとう炎の鎧が消える。

「ネス…!なにを!」
「もう炎を相殺するには数回分無いですよね…いくら赤の体でもまずいです。だからラヴァさんを護るためにはこれしかないです。」

止めたってボクより前に立っちゃいますからと笑って語りかける。

「ネス、待って!…ッ!」

少女はあまりに無謀な戦いに挑もうとする少年を止めようとしたが炎を消され、何とか動かしていた体がガクッと落ちる。

「サラマンダーが来ます。ラヴァさんは少しでも離れていてください。」
「ギャアァァァァオオオオオァァァ!!!」

回復を終えたサラマンダーの体表には傷は見当たらない。傷への追い打ちを避けるため、体力を消耗してでも治したようだ。

視界の端でサラマンダーが起き上がるのを確認して、ボクはラヴァさんの方を優しく肩を押す。
フラフラのラヴァは、激しい戦闘で焼け野原となった場所から木々が生い茂る森へと入り込む。
力が枯渇し、光を遮る森はラヴァには酷く暗く感じた。

「…貴方だけは護ります。少しでも離れてください。」

サラマンダーから視界を切ってでもラヴァが向かおうとしてこないことを確認する。
動けないなら、この焼けて開けた場所にいるよりは森の木に守られる方がマシだろう。

「今度は逃げられないな…」

コボルドから逃げ、ミノタウロスから逃げ回り、ラヴァに助けて貰った少年は現状を確認してふっと笑ってしまう。

「まさかボクがサラマンダーと一人で戦うなんて誰も想像つかないだろうなぁ…。」

村の人もボクをはめた冒険者たち、誓約書を書かせたギルドの人達、ゼインさんですら想像つかないだろう。

「さぁ、人生最初の冒険をしよう。」
「ギャアァァァァオオオオオァァァ!!!」

高々と炎をあげるサラマンダーに何も持たなかった少年が対峙する。
サラマンダーからは見えない色を持つ少年は、炎に照らされながら短剣を構えるだけにしか見えなかった。
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