迷宮のすゝめ〜現実世界に生成されるリアルダンジョンで働きます〜

アヴィ丸

文字の大きさ
6 / 13

6話 バスの向かう先

しおりを挟む
「おし、お前達トイレと持ち物は大丈夫だな。出発するぞ」
「遠足じゃないんすから源さん」
「おやつは無いからな! その代わりこの遠足は1000万の旅だ。帰るまでが遠足だからな!」

 要するに生きて帰るぞってことか。源さんは本当に誰も死なせたくないんだろうな。
 いつも現場では先陣切って突入し、献身的なサポートに殿を務めて崩壊寸前の調査パーティを生還させたこともあるらしい。
 源さんに生きろと言われれば簡単に死んでやる気も無くなる。

「こりゃ保険は当分先だな」
「遠足とか⋯素直に死ぬなって言えばいいのにな。皆もう分かってるってのに、なぁ?」

 バスで隣の席になったやつが声をかけてきた。死ぬ気は無い、同じ話をしているにもかかわらず俺はこいつの顔を認識しようとしない。
 いつ死ぬか分からない調査業で相手の素性を知ることは、切り離せないリスクを生むだけだ。大切なのはマッパー2人と支柱の源さん、その2人だけ認識して生かせばいい。
 自分が生き残るためには死が確定している奴を助けようとしてはいけない。調査、討伐ともに持ってる理念だ。

 だから俺はこの10年、パーティのマッパーと初めての先輩にあたる源さん以外の人間を黒く塗りつぶしたかのように認識していた。
 調査中に見るのは他人が何をしようとしているのか体の動きと声の情報のみ。それ以外の情報は全てシャットアウトする。

 だからこの時とった俺の行動がただの寝たフリでも間違ってないのだ。

「ふぁ~⋯着いたか」

 目を閉じている間に本当にウトウトしてしまった。周りがやけに騒がしくなって目を覚ます。

「また寝てたのか勇。お前は本当に図太いというかなんというか⋯」
「ちゃんと仕事はこなしますよ。源さんも知ってるでしょ」

 源さんは俺と違ってパーティの一人一人の顔を見て他人てやつを知ろうとする。そうすることで誰も死なせたく無くなるらしいが自殺行為だ。源さんが無事に生きているのは奇跡と言っても過言ではない。

「八木、麻布どうだ構内図は頭に入ったか? 私も勇も測量できるからガンガンマッピングしていってくれ」
「は、はい! ありがとうございます」
「分かっとるわ源さん。頼りにしてるわ」
(俺にまで仕事を振らないでくれ⋯)

 その後も源さんは主要のメンバー以外にも声をかけていくが、俺はそいつらの声を聞こうとしなかった。

「よし! 全員調子は良さそうだな。それでは1500より調査を開始する! 先頭は私、後方に勇、マッパーは私とイサミの近くに1人ずつであとのメンバーは2人横並びで左右を警戒!」
「「「はい!」」」

 源さんとマプ男が先頭きってバスを降りていく。
 ダンジョン・新宿駅調査が開始された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

2週目の人生ですが、生きていた世界にファンタジーがあるとは思ってなかった

竹桜
ファンタジー
 1人で生きていた男はある事故に巻き込まれて、死んでしまった。  何故か、男は生きていた世界に転生したのだ。  2週目の人生を始めたが、あまり何も変わらなかった。  ある出会いと共に男はファンタジーに巻き込まれていく。     1周目と2週目で生きていた世界で。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

処理中です...