13 / 13
13話 犠牲
しおりを挟む
「は? おい、嘘だろ」
「嘘やない! 逃げるで!」
待ってくれ源さんがそこにいる。まだ生きてるかもしれないじゃないか。
腕を捕まれ走り出す瞬間に驚いて見開いた視界は全てを捉えた。
真っ赤に吹き出す血飛沫。鉄板のような剣を振りきったミノタウロス。そして、胴体が離れかけている源さん。
殿を務めて他人を生かし続けてきた人間は、最後に馬鹿野郎を助けてくたばった。
涙と嘔吐感、嫌悪感、怒り憎しみ悲しみ⋯誰に向けたものなのか分からない感情まで湧き上がってくる。
「泣くんなら後にせぇ! 今はとにかく下や!」
八木が叫びながら俺を引っ張り続ける。
俺は糸の切れた操り人形のように力なくついて行く。脚に力が入らないはずなのに転ばないようにか前に前にと進んでしまう。
B1の階段ではさすがにつまづいてしまった。
「⋯えぇかげんにせぇや。お前が叫ぶから源さんは死んだんや」
「わかってる」
俺が殺した。
「なのになんやお前のその面。源さんに恩感じ取るんがお前だけやないぞ」
「わかってる」
誰もが源さんに助けられただろう。
「お前⋯お前なぁ」
「わかってる⋯俺が死ぬはずだっ⋯!!!」
突如顔面に硬いものが飛び込んでくる。地面に力の入らない体ごと叩きつけられ攻撃の方向を見る。
その攻撃はダンジョンの主ではなく、八木の拳だった。
「ダンジョンで死ぬんは日常茶飯事や。誰が死んだって手前のせい、それを恨むんはお門違いや」
「八木⋯」
「でもなぁ、生きる気もない野郎が源さんの命持ってったって高こうつくぞ、短小が」
今までマッパーだから生かすべきだと八木を認識していた。けど、今初めて俺は八木の顔を見たような錯覚に陥る。
源さんは俺に毎回仲間の大切さを伝えてきた。今まで何度も心に響かなかった話が今は染み出してくるかのようだ。
八木は怒ったような悲しいような混ざりあった顔で俺を殴っていた。古臭いヤンキーみたいな格好で人情に厚いとか化石じゃないんだから⋯。
「小さくねぇよ⋯。使ったことないクセにイキるな」
「な、童貞ちゃうわ!」
「しー⋯」
「はっ、すまん」
未だに体の中では何もかも混ぜ返したような気持ち悪さがあるが、源さんが残してくれたもののおかげで何とか立ち上がれる。
調査員として多くの死を見届けたのに源さん1人の死は受け入れたくなかった。
ただ俺の感情はもう壊れている。既に壊れた俺がこれ以上壊れるはずも無い。見失いかけた自分を無理やりつっかえ棒にして、俺の心が崩れるのを防いだ。
ダンジョンで人が死ぬのは日常茶飯事だ。もしそれが人助けの結果でもありふれた光景だ。なら生かされた調査員はどうするべきか。
パーティの死を超えてダンジョンを踏破するしかない。
「嘘やない! 逃げるで!」
待ってくれ源さんがそこにいる。まだ生きてるかもしれないじゃないか。
腕を捕まれ走り出す瞬間に驚いて見開いた視界は全てを捉えた。
真っ赤に吹き出す血飛沫。鉄板のような剣を振りきったミノタウロス。そして、胴体が離れかけている源さん。
殿を務めて他人を生かし続けてきた人間は、最後に馬鹿野郎を助けてくたばった。
涙と嘔吐感、嫌悪感、怒り憎しみ悲しみ⋯誰に向けたものなのか分からない感情まで湧き上がってくる。
「泣くんなら後にせぇ! 今はとにかく下や!」
八木が叫びながら俺を引っ張り続ける。
俺は糸の切れた操り人形のように力なくついて行く。脚に力が入らないはずなのに転ばないようにか前に前にと進んでしまう。
B1の階段ではさすがにつまづいてしまった。
「⋯えぇかげんにせぇや。お前が叫ぶから源さんは死んだんや」
「わかってる」
俺が殺した。
「なのになんやお前のその面。源さんに恩感じ取るんがお前だけやないぞ」
「わかってる」
誰もが源さんに助けられただろう。
「お前⋯お前なぁ」
「わかってる⋯俺が死ぬはずだっ⋯!!!」
突如顔面に硬いものが飛び込んでくる。地面に力の入らない体ごと叩きつけられ攻撃の方向を見る。
その攻撃はダンジョンの主ではなく、八木の拳だった。
「ダンジョンで死ぬんは日常茶飯事や。誰が死んだって手前のせい、それを恨むんはお門違いや」
「八木⋯」
「でもなぁ、生きる気もない野郎が源さんの命持ってったって高こうつくぞ、短小が」
今までマッパーだから生かすべきだと八木を認識していた。けど、今初めて俺は八木の顔を見たような錯覚に陥る。
源さんは俺に毎回仲間の大切さを伝えてきた。今まで何度も心に響かなかった話が今は染み出してくるかのようだ。
八木は怒ったような悲しいような混ざりあった顔で俺を殴っていた。古臭いヤンキーみたいな格好で人情に厚いとか化石じゃないんだから⋯。
「小さくねぇよ⋯。使ったことないクセにイキるな」
「な、童貞ちゃうわ!」
「しー⋯」
「はっ、すまん」
未だに体の中では何もかも混ぜ返したような気持ち悪さがあるが、源さんが残してくれたもののおかげで何とか立ち上がれる。
調査員として多くの死を見届けたのに源さん1人の死は受け入れたくなかった。
ただ俺の感情はもう壊れている。既に壊れた俺がこれ以上壊れるはずも無い。見失いかけた自分を無理やりつっかえ棒にして、俺の心が崩れるのを防いだ。
ダンジョンで人が死ぬのは日常茶飯事だ。もしそれが人助けの結果でもありふれた光景だ。なら生かされた調査員はどうするべきか。
パーティの死を超えてダンジョンを踏破するしかない。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
2週目の人生ですが、生きていた世界にファンタジーがあるとは思ってなかった
竹桜
ファンタジー
1人で生きていた男はある事故に巻き込まれて、死んでしまった。
何故か、男は生きていた世界に転生したのだ。
2週目の人生を始めたが、あまり何も変わらなかった。
ある出会いと共に男はファンタジーに巻き込まれていく。
1周目と2週目で生きていた世界で。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる